盛トワ疑似家族の朝 〜天使、二度寝の誘惑に負ける〜
1. 幸せすぎる目覚め
カーテンの隙間から、柔らかな朝の光が差し込む。
ゆうが目を覚ますと、視界いっぱいに広がったのは、自分を抱きしめたまま眠る獅子堂の、彫刻のような寝顔だった。
「……ん、……ふぁ。……あ、獅子堂くん……?」
ゆうが小さく動くと、獅子堂の長い睫毛が震え、漆黒の瞳が開いた。
「……おはよう、ゆう。……気分はどうだ? どこか痛むところはないか? 喉は乾いていないか?」
起きて0.1秒でフルスロットルの過保護(お父さん)。
「う、うん、大丈夫だよ! 獅子堂くん、おはよう……!」
2. 「お兄ちゃん」と「お姉ちゃん」の朝食合戦
「おらぁ! 獅子堂さん、いつまで抱きついてんだ! ゆう君が苦しそうだろうが!」
キッチン(という名の狭い流し台)から、エプロン姿の阿久津が怒鳴り込んできた。
「ほら、ゆう君! 特製の『お兄ちゃん特製・山盛りスクランブルエッグ』でできたぞ。食え!」
「阿久津さん、朝から脂っこいものはダメですよ。……ゆう君、こっちにおいで。お姉さ……お兄さん特製の、スムージーとリゾットだよ」
羽柴が涼しい顔で、栄養バランス完璧な朝食をテーブルに並べる。
阿久津が「元気が出る肉」担当のお兄ちゃんなら、羽柴は「健康と美容」を司るお姉ちゃん的ポジション。二人の板挟みになり、ゆうくんは目を白黒させている。
3. 「お父さん」の重圧
「……阿久津、羽柴。ゆうを急かすな。……ゆう、まずは俺が顔を拭いてやろう。……よし、じっとしていろ」
獅子堂がお湯で絞ったタオルを手に、ゆうの顔を丁寧に、慈しむように拭く。その手つきは、もはや国宝の煤払い。
「……あはは。なんだか、お父さんと、お兄ちゃんと、お姉ちゃんがいっぱいいるみたい……!」
ゆうがくすくす笑うと、三人の動きがピタッと止まった。
「……俺が、……父か(※内心:夫が良かったが、家族として認められたのは進歩だ)」
「お、お兄ちゃんか……。……悪くねぇな。……おい、おかわりあるからな!」
「お姉……。……まぁ、ゆう君に頼られるポジションなら何でもいいですよ」
4. 幸せな「行ってきます」の前
朝食を終え、学校へ行く準備。
ゆうが自分で靴下を履こうとすると、三人が一斉に跪いた。
「ゆう! 靴下は俺が履かせる。……右足を出せ」
「おら、カバンは俺が持つ! ゆう君は手ぶらでいいんだよ!」
「忘れ物はないかな? ハンカチ、ティッシュ、……そして僕たちの愛。よし、完璧だね」
「……みんな、やりすぎだよぅ……っ!」
顔を真っ赤にするゆうを中央に、四人は狭いアパートのドアを開けた。
外は昨夜の雨が嘘のように晴れ渡り、ゆうの心も、かつてないほど晴れやかに澄み渡っていた。
「……よし。……盛トワの全生徒に告ぐ。……今日から、ゆうに指一本触れることは、俺たち一家への宣戦布告と見なす」
獅子堂の「お父さん」としての宣戦布告(?)と共に、幸せすぎる登校が始まった。




