雨音の夜、解ける心と騎士たちの献身
1. 髪を乾かす、魔法の時間
「……ゆう。こっちへ来い。……髪が濡れたままだと、また風邪を引く」
獅子堂は、ゆうを自分の股の間に座らせ、ふかふかのタオルで包み込んだ。
「あ、ありがとう、獅子堂くん。……でも、自分でできるよ?」
「ダメだ。……お前は今日、もう十分頑張った。……これからは、指一本動かすな」
ドライヤーの温かい風と、獅子堂の大きな指先が、ゆうの頭皮を優しくマッサージするように解していく。
「……あ、……気持ちいい……」
今まで、お風呂上がりも「節約しなきゃ」と手早く済ませてきたゆうにとって、誰かに髪を委ねる時間は、あまりにも甘美で、心がふわふわと浮き上がるような感覚だった。
2. 「頑張らなくていい」という許可
「……ゆう様。これ、ホットミルクっす。……ハチミツ、たっぷり入れといたから」
阿久津が、不器用ながらも一生懸命に温めたカップを差し出す。
「……羽柴、膝掛けを持ってこい。……あと、そこのクッションをもっと柔らかいものに替えろ」
獅子堂の指示に、羽柴が「もうやってますよ」と苦笑しながら、ゆうの肩を温かいブランケットで包み込んだ。
「……みんな、どうしてそんなに優しくしてくれるの……?」
ゆうの瞳に、ポロリと涙がこぼれ落ちる。
「僕、なんにもできないし、みんなに迷惑ばっかり……」
その言葉を遮るように、獅子堂が後ろからギュッと、けれど壊さないように優しくゆうを抱きしめた。
「……迷惑など、一度も思ったことはない。……お前が生きている、ただそれだけで、俺たちには報酬以上の価値があるんだ」
3. 雑魚寝のぬくもり
夜が更け、布団を敷く時間。
ゆうの家には布団が一つしかないため、獅子堂が「……俺の胸が、お前のベッドだ」と断言し、結局、ゆうを真ん中に、川の字を越えた「防壁」のような形で眠ることに。
獅子堂の右腕がゆうの枕になり、左側には阿久津が「……怖くないからな」と大きな手を添え、羽柴が優しくトントンと胸を叩いて寝かしつける。
「……あたたかい……」
一人で寝る時は、いつも寒くて、物音がするたびにビクビクしていたゆう。
でも今は、三人の力強い鼓動と、少し暑苦しいほどの体温が、彼を深い安心へと誘っていく。
4. 眠りの中の、本当の笑顔
「……んぅ……。ししどうくん……あくつさん……はしばさん……」
眠りについたゆうが、幸せそうに三人の名前を呟き、獅子堂の胸に頬を寄せた。
その寝顔を見て、三人は闇の中で静かに顔を見合わせる。
「……なぁ獅子堂さん。……俺、こいつのためなら、本気でなんだってできる気がするっす」
「ふふ、阿久津さん。僕も同感ですよ。……この寝顔を守るためなら、悪魔にでもなれる」
「……ああ。……もう、誰にもこの笑顔は曇らせん。……例え、神が相手でもな」
獅子堂は、ゆうの額に、今度は「卑怯なキス」ではなく、誓いを込めた愛の口付けを、そっと、音もなく落とした。
雨音はいつしか静まり、部屋の中には、世界で一番幸せな四人の寝息だけが響いていた。




