遺された銀貨と、獅子の猛誓
1. 「放り出された」高校入学
「高校に受かった瞬間、親戚たちは『これでお役御免だ』と、保険金の一部を渡して彼をこの古いアパートに放り投げた。……今、彼が使っているのは、亡くなったご両親が彼のためにと、信頼できる機関に預けていた最後の守り刀です」
「…………」
獅子堂の周囲の空気が、ミシミシと音を立てて歪んだ。
「……厄介払い、だと? ……この宝物を、そんな言葉で……」
獅子堂の脳裏に、いつも「すみません」「ごめんなさい」と謝ってばかりいる、自己肯定感の低いゆうくんの姿が浮かぶ。
それは性格ではなく、そう言わなければ生き延びられなかった、過酷な幼少期の傷跡だったのだ。
2. 三人の「血の誓い」
「……決めたぞ」
獅子堂が、低く、地を這うような声で言った。
「阿久津、羽柴。……今すぐ、ゆうを苦しめた親戚共を特定しろ。……社会的に、二度と浮上できないところまで叩き落とす」
「言われなくても、もう動いてますよ」
羽柴が冷徹に微笑む。
「阿久津さんは物理担当。僕は法務と経済担当。……主、あなたは?」
「俺は……。ゆうの『家族』を、今ここで上書きする」
獅子堂は、ゆうの机に置かれた、両親のものと思われる唯一の小さな写真をそっと撫でた。
「お義父上、お義母上。……ご安心ください。……お二人が遺したこの命、これからは俺が、この世の誰よりも贅沢に、誰よりも甘く、……俺の命を懸けて愛し抜きます」
3. 雨の中、震える肩を抱いて
「ただいま! ……わぁ、まだ雨ひどいね」
濡れた肩をすぼめて戻ってきたゆうくん。
彼は、三人が自分の過去を知ったことなど露知らず、「雨、止まないね。……みんな、狭いけど、ゆっくりしていって?」と、健気に微笑む。
獅子堂は、たまらずゆうくんを後ろから壊れ物を抱くように、力強く抱きしめた。
「……わわっ!? ど、どうしたの獅子堂くん……っ?」
「……ゆう。……もう、1円たりとも、自分のために使うな。……お前の人生に必要なものは、すべて俺が用意する。……お前はただ、笑って、俺に愛されていればいいんだ」
「……? 獅子堂くん、難しいこと言わないでぇ……」
ゆうくんは困ったように笑うが、獅子堂の腕は決して離れない。
阿久津は背を向けて涙を拭い、羽柴は「……さあ、ゆう君。まずは髪を乾かそうか」と、聖母のような(?)手つきでタオルを広げた。




