主(あるじ)不在の聖域と、騎士たちの秘密会議
1. 違和感だらけの「静けさ」
「……お醤油、切らしてたの忘れてた! すぐ下の商店街で買ってくるね!」
ゆうがバタバタと部屋を飛び出して数分。
残された巨漢三人は、狭い部屋で身を寄せ合うようにして沈黙していた。
獅子堂は、部屋の隅に置かれた、ゆうの学校鞄と丁寧に畳まれたパジャマをじっと見つめている。
「……なあ羽柴。お前、気づいてるか?」
阿久津が、いつになく低い声で切り出した。
「……ああ。……この部屋には、ゆう君以外の『誰か』の気配が、欠片も存在しないね」
2. 家族の影がない部屋
三人は無意識に部屋を見渡す。
普通、十代の一人暮らしなら、親からの仕送り段ボールがあったり、家族写真の一枚くらい飾ってあってもおかしくない。だが、ここにはそれがない。
「……親の過保護で一人暮らしを制限されるどころか、……放り出されている、という感じだな」
獅子堂の拳が、膝の上でミシリと鳴った。
「もし俺が親なら、ゆうを外に出すことすら躊躇う。……24時間、銀の籠に入れて守り抜く。……だというのに、なぜあいつは、こんな心細いアパートで、たった一人で笑っている……?」
3. 質素な部屋の「理由」
ゆうくんが買い物に出た後、獅子堂は部屋の片隅にある、古びた、けれど丁寧に手入れされた小さな貯金箱と、家計簿を見つけた。
そこには、1円単位で細かく記された生活費の記録。
「……阿久津。……この生活感は、ただの『節約』じゃないな」
「……ああ。……生活用品はどれも一番安いものっす。でも、大事に使われてる……」
羽柴が、事前に調べていた「ゆうの身辺調査」の最終報告を口にする。声は怒りで微かに震えていた。
「……ゆう君、両親は彼が物心つく前に亡くなっていました。……その後、親戚中をたらい回しにされ、『金食い虫』と罵られながら育ったそうです」




