国宝級のキーホルダーと、全車両「お静かに」の新幹線
1. お土産物屋の「運命の選択」
京都最終日。新京極のお土産物屋で、ゆうくんは真剣に棚を見つめていた。
「……これ、獅子堂くんに似てるかな?」
ゆうくんが手に取ったのは、小さくて可愛い『金色の獅子の鈴』。
「し、獅子堂くん! これ、お揃いで買ってもいい……?」
「……っ!!」
獅子堂の胸に、昨夜の「禁断の唇の感触」がフラッシュバックする。
(お揃い……? ゆうが、俺と対のものを持ちたいと言っているのか……!?)
「ああ。……いや、お前が選んでくれたものなら、例えそれがただの石ころでも俺は一生、肌身離さず持ち歩く」
「石ころじゃないよぉ、鈴だよ?」
ゆうくんがニコニコしながら獅子堂の大きな手に鈴を乗せる。獅子堂はその鈴を、壊れ物を扱うように受け取り、そのまま学ランの左胸——心臓の真裏にある隠しポケットへ、震える手で仕舞い込んだ。
2. 阿久津と羽柴の「お土産チェック」
「おい阿久津。……頭のあの顔、見たか?」
「ああ。……完全に『昇天』してやがるな。鈴一個で、あの世まで行きそうな勢いだぞ」
阿久津と羽柴は、もはや「初恋を拗らせすぎた主」を放っておき、自分たちもゆうくんから「阿久津さんには虎、羽柴さんには狐だよ!」とお揃いのキーホルダーを貰って、こっそり目元を熱くしていた。
3. 新幹線、全車両「沈黙」の命令
帰りの新幹線。
遊び疲れたゆうくんは、座席に座るなりコックリコックリと船を漕ぎ始めた。
「……獅子堂くん……ねむい……」
「……ああ。ここにいろ」
獅子堂は、ゆうくんの頭をそっと自分の肩へ引き寄せる。
その瞬間、獅子堂が車両全体に向けて、音の出ない「凄まじい威圧感」を放った。
(……全員、聞け。今、ゆうが眠りについた。……咳払い一つでもしてみろ。……貴様らの次の中間テストの点数を、俺が物理的に消し飛ばす)
4. 息を殺すヤンキーたち
新幹線の一車両を占拠している盛トワ工業のヤンキーたちは、一斉に固まった。
隣の席でポテトチップスを開けようとしていた生徒は、袋を握りしめたままフリーズ。
音楽を聴いていた生徒は、音漏れを恐れてイヤホンの上から耳を塞ぐ。
「……(おい、阿久津さん。トイレ行きたいんすけど……)」
「……(這って行け。床の振動を最小限に抑えろ)」
阿久津もまた、忍者のような足捌きで車内をパトロールし、ゆうくんの睡眠を死守する。
5. 夢の終わりと、新たな決意
夕暮れの光が差し込む車内。
獅子堂の肩に乗ったゆうくんの重み。微かに聞こえる寝息。
獅子堂は、昨夜のキスの感覚を思い出し、また耳を真っ赤にしていた。
(卑怯な真似をしたのは、一度きりだ。……次は、お前が起きて、俺を真っ直ぐ見ている時に……)
東京駅に着く直前、ゆうくんが「……ふわぁ、よく寝たぁ」と目を覚ました。
車内に一斉に広がる安堵の溜息。ヤンキーたちが「やっと呼吸ができる……」と胸を撫で下ろす。
「獅子堂くん、肩、痛くなかった?」
「……いいや。お前の重みは、俺が生きている証だ。……むしろ、一生このままでも良かった」
ゆうくんは「もう、獅子堂くんは大げさだなぁ」と笑うが、獅子堂の学ランの内側では、ゆうくんから貰った鈴が、彼の激しい鼓動に合わせてチリ……と、密やかに、そして誰よりも幸せそうに鳴っていた。




