番長の特別往診
1. 2年生の暴君と、1年生の天使
盛トワ工業の頂点、2年A組の獅子堂 凱。
彼は本来、1年生の校舎に用などないはずだった。だが、ゆうくんが入学して以来、獅子堂は休み時間のたびに1年校舎へ降臨する。
「……阿久津。ゆうは今、何をしている」
「頭、さっきから5分おきに聞いてますって。今は数学の授業っすよ」
「そうか。……数学の教師に伝えろ。『ゆうが眠そうなら、俺の膝を枕に貸し出す準備がある』とな」
「無茶苦茶だよ!!」
2. ゆうくん、季節外れの風邪
そんなある日、ゆうくんが知恵熱と疲れで学校を休んでしまった。
それを聞いた獅子堂の教室は、氷点下の凍てつく空気に包まれる。
「……ゆうが、病だと? ……なぜ俺に真っ先に報告しなかった。……全生徒、授業を中止しろ。ゆうの快癒を祈祷する時間だ」
「落ち着け獅子堂さん! 学校ごと宗教団体にするのはやめてください!」
羽柴が必死に止め、なんとか「獅子堂、阿久津、羽柴の三人でのお見舞い」という形に落ち着かせた。
3. 獅子堂邸での「過保護な隔離」
ゆうくんの家に行こうとした獅子堂だったが、「一人暮らしの狭い部屋では、ゆうが可哀想だ」と独断し、気づけばゆうくんを獅子堂の自宅へ運び込んでいた。
「……んぅ……ししどう、くん……?」
ベッドで目を覚ましたゆうの視界に入ったのは、おでこに冷えピタを貼るために、ものすごい形相で集中している獅子堂の顔だった。
「……動くな、ゆう。今、0.1ミリの狂いもなく冷却シートを貼る儀式の最中だ」
「あはは……。ありがとう。……でも、獅子堂くん、授業はいいの?」
「お前が病の時に、ペンなど握れるか。……俺が今握るのは、お前の手だけでいい」
4. 三人の「至れり尽くせり」
「ゆう様、特製のお粥っす! 俺がすり鉢で1時間かけて米を砕いたっす!」
阿久津がドロドロのお粥を運び、
「僕は冷たいゼリーと、加湿器を持ってきましたよ。……獅子堂さん、そこ、どいてください。邪魔です」
羽柴が獅子堂を押し退けて、ゆうの体温を測る。
「……あぅ、みんな、ごめんなさい……。僕のせいで、学校休ませちゃって……」
ゆうが申し訳なさに涙を浮かべると、三人は同時に叫んだ。
「「「謝らないで(ください)!!!」」」
「お前が風邪を引いたのは、この街の空気が汚れているせいだ。……明日、街中の空気を洗浄させる」
「頭、それは無理っす! ゆう君、これ食べて早く元気になってくれよ……。お前がいない学校なんて、ただのゴミ捨て場なんだからさ」
5. 眠れる子猫の守り手たち
結局、ゆうくんが再び眠りにつくまで、獅子堂は一歩も側を離れなかった。
2年生という、ゆうくんより少しだけ大人な余裕を見せたいはずなのに、寝顔を見ているだけで「……可愛い……結婚したい……」と独り言を漏らす獅子堂。
その背後で、阿久津と羽柴が「……結局、学年が違ってもやることは変わんねーな」「むしろ、権力が増してる分、タチが悪いね」と、呆れながらも優しい目で見守るのだった。




