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【書籍化決定】転生令嬢は旅する編纂者  作者: 采火
第四部

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100/101

100.進化する転生者リスト

 退職して暇を持て余した私がやることといったらただ一つ。


「玄蒼国に行く前に、これまで集めた転生者リストを完成版にしちゃいましょう!」


 とはいっても、すでに清書をしているものも多い。ただ、今は清書したページを見つけた順に束ねているだけ。でも私が集めた転生者が今ではかなり増えた。


 確定しているだけで十一人。しかもクーヤくんからさらに追加で六人の名前が挙がっているし、確定はしていないけれど疑惑のある人物たちも他にちらほら。うまくいったら今後ページはさらに増えていく予想。


 なので、今はただ重ねているページに規則性を持たせて、今後の編集に困らないように本格的なリストを作っていきたいのです。目次……じゃないわね、索引とかもつけて、最終的にはしっかりとした本にしたい。


 そのために、転生者リストの掲載順規則を設けようと思うのですが。


「手っ取り早いのは年代順よね」


 そのためには各転生者の年代を改めて書き出さないといけない。ついでに出身地も添えておいて、と。


 年代順に並べると、こう。


 ヤマト:神樹暦400年以前 玄蒼国 日本人

 カーリー:神樹暦498年頃 ガムラン連合王国 インド人?

 ゾーエ:神樹暦851年頃 ルィバツ王国リソブリー村 日本人

 ビーチェ:神樹暦914年頃 クロワゼット共和国 推定イタリア人

 マキシ:神樹暦919年頃 クロワゼット共和国または玄蒼国? 推定ギリシャ人

 大陸戦争終結の神子:神樹暦1099年頃 アニマソラ神樹国

 ラウレンツ・オルロープ:神樹暦1071年-1144年 ヴェルグロフト王国オルロープ伯爵領モルデンブルク ヨーロッパ?

 ベルナベウ:神樹暦1165年-1236年 エルパダ王国イーギャ 日本人

 カクーマ・ラムリ子爵:神樹暦1191-1239 ハルウェスタ王国ラムリ子爵領 日本人

 エクサ:神樹暦1264年-1357年 アニマソラ神樹国  ヨーロッパ?

 フェリシア・エリツィン:神樹暦1377年- 日本人

 クーヤ:神樹暦1384年- 日本人

 ※シンタクロースの少年:不明(神樹暦1248年以前なのは確定) ユールラッズ雪原 不明


 シンタクロースの少年については詳細がわからないせいで年代が不透明。私の見つけた報告書が神樹暦1248年のものだったから、それ以前なのは確定しているけれど。カーリーはガムラン王国建国の年代、ゾーエは語った話が蒐集されていた本から年代を推定。ビーチェやマキシはヴィーナスとヘルマプロディートスの開店時期から。


 それとマキシの出身については名前が珍しく、玄蒼国出身の可能性を考えている。確信はないし、もし本当に玄蒼国出身なら、どうしてクロワゼット共和国にいたのかも分からないけれど。このあたりはいずれ、もう一度ヘルマプロディートスのオーナーからお話を聞いてみたいと思う。


「それにしても、こうして並べると面白いわね」


 なんとなく気づいていたけれど、だいたい百年周期で二人の転生者が同時期に生まれている。これは偶然なのか、必然なのか。


「でも、神子とか女神の化身と言われるわりには、大陸に一人ずつっていうわけでもないのよね」


 カクーマ氏とベルナベウ氏は同じ神樹の大陸だもの。地理的にはベルナベウ氏は神樹ゴドーヴィエ・コリツァより、神湖スロイスティエ・ ロジェーニヤのほうが近い気もせるけれど。


 同じようにラウレンツ氏とアニマソラ神樹国で擁立された神子が神樹の大陸で生まれているパターンがある。そのせいで転生者が生まれる法則に地理的要素があるのかは断定ができない。


〝ヘキジの氷室〟

〝傾国の美姫ラクヨウ〟

〝占い師シキ〟

〝レイウェイ・トレビシックのゴレン〟

〝刀工アイズミ〟

〝エノミヤの車輪〟


 この六人はクーヤくんから教えてもらった名前。これが全員玄蒼国の転生者だとしたら、いつの時代の人物かははっきりと調べたほうがいいかもしれない。もしかしたら全員、神樹暦800年以前の転生者で、その頃は玄蒼国で生まれる転生者が多かった可能性だってあるんだから。


 そしてもう一つ面白い発見が。


「同時代の転生者は、転生前の出身地が近い可能性があるということ」


 私とクーヤくんは日本人。

 カクーマ氏とベルナベウ氏は日本人。

 ビーチェさんとマキシさんはイタリア半島とバルカン半島と推定。


 日本人率が多いのは、やっぱり私が日本人だから見つけやすいという理由もあるけれど……もし本当に百年周期で二人の転生者が生まれるとしたら、かなり高い確率で日本人が転生しているのが分かる。現状、最古の転生者がヤマトだし。


 この転生に、何か作為的なものがあるとしたら。


「神様みたいな存在が、本当にいるのかもしれないわね」


 まぁ、ゾーエ以前の年代のことがはっきりわからないし、ヤマトについても玄蒼国建国以前の人としか分かっていないし。玄蒼国建国以前になると、途端に文献が減ってしまうから。クーヤくんの教えてくれた六人の名前を調べたあとでこの仮説も変わってしまうかもしれないけれど。


「いったん、索引についてはこれで確定しましょう。新しく年代が分かったら、ページを差し替えて改訂版の索引をつければいいものね」


 ルンルン気分で索引を書いて、それの通りに転生者リストを並べ替え。奥付も忘れずに〝フェリシア・エリシン著 神樹暦一四〇一年芽生の幹三日〟羊皮紙でできた転生者リストは錐で穴を開けておいたので、紐でくくって、さらに薄い板に鞣した革を張り付けた表紙を付けたら完成。


「ふふっ、できたわ! 完成版、転生者リスト!」


 まだ途中ですが、初版はこんなものでしょう!

 るんるん気分でページをめくってみる。本という形にすると、やっぱり格別になる。


「肖像画を差し込んでよかったわ。ラウレンツ・オルロープ伯はモルデンブルクのお城に肖像画が残っていたし、カクーマ・ラムリ子爵ももしかしたら残っていたかもと思って連絡を取ってみて正解ね」


 貴族の当主は比較的肖像画が残りやすいもの。時間はかかったけれど、肖像画を入手した私はとても偉いと思う。それにノエルやヴェルナーさんたちが意気揚々とカメラを作ろうと研究しているから、私とクーヤくんの写真が残せるかもしれないし。今は感光剤になるものを探しているみたい。本当にカメラができたら、みんなで一緒に写真を撮りたいな。


 にこにこしながら転生者リストを何度もめくる。今までは製本まではしていなかったからリストと読んでいたけれど、せっかく本にしたのだからタイトルをつけてみたくなる。金の箔押しでタイトルが書かれていたらかっこいい。


「転生者辞典……転生者一覧……便覧……あ、目録!」


 ぴんと閃いた。『転生者目録』とかどうでしょう!

転生者リストより、かっこよい呼び方になった気がする!


 しめしめと思いながら、ヴェルナーさんに金箔押しのようなことができないかと依頼の手紙を書いてみる。次はいつエリツィン伯爵領に帰れるか分からないから、帰った時にできるように道具だけ用意してもらっておきましょう。


 満面の笑みで完成した転生者リストこと『転生者目録』をそっと置く。私の努力の結晶を、ヴィクトルにはあとで見せてあげましょう。


「さて、と。ついでだから、溜まった資料をちょっと整理しましょう」


 この八年、転生者の痕跡を探して蓄積するばかりの期間だった。ここでひと区切りしたので、不要な資料は処分したほうがいいと思う。いくら本棚の容量を増やしたって、限界はあるもの。


 そう思って、仕分けを始めてみた。


「ヤマトは玄蒼国に行ったら詳しく調べたいから保留。カーリーについてもちょっと気になることがあるし。ラムリ子爵は日記を読ませてもらったから、メモが少なかったのよね。関連資料も野菜図鑑が多いし……これは蔵書として残していてもよいかも」


 いる、いらない、と仕分けするつもりだったのに、積まれていくのは〝いる〟ものばかり。うーん、私はどうやら物を捨てられないタイプの人間みたい。


 時間をかけてこんもりと積み上がった〝いる〟山。

 これ、ただ散らかしてしまっただけだわ。


 気がつけば窓の外は茜色に染まっていた。埃が舞ってしまったので窓を開けると、誰かが門をくぐるのが見えて。


「あ、ヴィクトル」


 そっと彼の名前をつぶやいたら、ヴィクトルが顔を上げてこちらに気がついた。手を振られたので、手を振り返す。この距離で気づくんですね。


 ヴィクトルが屋敷の中に入るのを見てから、部屋の中を振り返る。


 ……さて、この散らかった部屋をどうしましょう。



祝・100話です!

転生者リストも形になっていくのを見ると、感慨深いものがありますね。

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― 新着の感想 ―
祝! 100話 現実世界が、猛暑でやりきれない。 采火様もご自愛ください。
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