腹が減っては・・・
「次はこっちね!」
次から次へと渡されモデルの気分を味わったところで試合終了の合図の様に私のお腹が鳴る。
「あっごめん!お昼を食べようって最初に言ってたこと忘れてた」
やっと思い出した彼女はまだ私に着せようと企んでいた服を元に戻し何事も無かったかの様に私に言った。
「じゃあ、言ってたピザの美味しい店に行こうっか」
すごい、これが世の中の女子なのかそれとも彼女がすごいのか。あれだけの試着室占拠をしながら何も買わずに出ていくという行動。それは店員さんも同じで「ありがとうございました」と軽く頭を下げただけで特に何かを勧める訳でもなくその一言を終えると次の作業に入っていた。
これが世の中の常識で私が今まで見ていた世界は間違っていたのだろうか。確かに私もコンビニでトイレだけを借りて何も買わずに出ることもあるがここでそれをする勇気は無い。その辺りが彼女の凄さだろう。
一人後ろで感心されていると知ってか知らずか彼女は私の手を引いていい匂いのする方へ誘う。
「着いたよ!ここなんだ。入った入った!」
お昼の時間を少し過ぎているからか客席はポツポツと空きがあるもののそれなりにこの時間でも客が入っている。彼女のお気に入りのお店とのことだが彼女がお気に入りなら彼女と似た様な人種はみんなここがお気に入りなのだろう。
「ごめんね。私から誘ったのにすっかり忘れて。よくやるんだよねー。友達にも叱られるんだ。あんたはその癖さえなければ彼氏もできるのにねって」
「いえ、言わなかった私も悪いですし。それでもモテて仕方ないでしょ?」
私からすれば彼女の見た目はとても可愛らしく、その程度の問題など逆に武器にしてしまう様な魔性さを感じさせる。私を安心させて食べる気だなきっと。
「いやー私の好みが特殊過ぎて彼氏は今までいないんだよね。そんなことより何食べる?ここのマルゲリータは絶対頼むべきだよ!ちょーお勧め!」
あっさりとはぐらかされてしまったがお世辞だろうとそこは深く聞くことをやめた。そもそも聞いたところで私になんのメリットも無いのだから。
それよりも今は空腹を満たす方が先だ。ピザは決まっているとして私はパスタも気になりページと睨めっこする。しかしピザもあるので食べ切れるだろうか・・・」
その考えをエスパーかの様に汲み取ったのか提案を持ちかけてくる。
「ピザは私が選んだからパスタはしおりんが選んで半分こしようよ。結構ここの料理、量があるから」
確かに周りのテーブルを見るとパスタもピザもやや大きめで一人サイズとは思えない。
「分かりました。じゃあこのベーコンカルボナーラにしてもいいですか?」
「いいところついてくるね」
くるりと人差し指を回しながら合格点を与えるような仕草で笑いかけてくる。
やはり彼女を見ているとモテる女性の代表にしか見えない。きっとさっきのもモテてしょうがないと言うと私が引け目や劣等感を感じるから濁したのだろう。
「じゃあこの二つ頼みますか!あっそうだ。この後美味しいアイスのお店に行くからその分のお腹は空けておいてね。別腹ならお腹いっぱいにしてもいいけど」
もう次の予定が立てられているのか・・・さっきまでどこに行く?なんて聞いていたのに。
「一つしかないので調整して食べます・・・」
手元の水をごくりと一口飲んでそう答えた。




