私に足りてるけど足りないもの
引きずられるままにあずにゃん先輩に連れて行かれたのはまずは私が入るとチリになって消えてしまいそうなおしゃれな服屋だった。いや、服屋と言う言い方すらもしかすると間違っているのかもしれない。
というかピザを食べる話はどこへ行った・・・と聞くこともできないまま金魚の糞のようにくっついて行く。
「ここ見た目はこんな感じだけど色んなタイプの服が置いてるし学生でも買える値段の物も多いからお勧めだよ。私はこの辺りに遊びにきた時は何も買わなくてもチェックしよ〜みたいな感じで入るけど。しおりんは普段はどうしてる?」
向こうからすると普通の会話なのだろが残念ながら買わないという意思を持ったままこの店に入る勇気が無い。私なら買う気のない服を買わなければ閉店まで脱出困難なお店にしか見えない。
「私はウニクロとか・・・そんなのばっかですね。あんまり外に出ないので」
「あっ分かるよ。私も家の中じゃ楽だからそればっかだし今日はしおりんと遊ぶから少し頑張ったけど遊びに行く時にも使ってるから一緒じゃん」
あずにゃん先輩に言われてほっとする。こんな可愛い人でも私と同じ服を着ていたりするんだ。そう思えると少し気が楽になり周りを見渡す余裕が出てきた。確かに彼女の言う通り明らかに高そうというコーナーもあるがセールの物など季節がややずれて入れ替え商品になっている物を見るとウニクロで購入するのと対して変わらない。むしろこちらの方が安い物も意外と多い。
「ほんとですね。これなら私でも買えそうな値段です」
「でしょ?ここのお店結構お勧めなんだよね。これとかどうかな?しおりんは黒髪ストレートだから似合いそう」
彼女の見せてきた服は今まで私が購入したことが無い。というより来てみたいけど買う勇気も着る勇気も無かった福だ。
「とりあえず試着してみようか?」
流されるまま店員さんを呼びに行く彼女を止めることもできず似合いそうと手渡された服の値札をチラリと見る。なるほど。これならまだ財布へのダメージは少ないぞ。
「こっちの試着室使っていいってさ」
「言われるがままに服を着替える。鏡に映る情けない自分を見ながら渡された服を着てみた。
「どう?着れた?覗いてもいい?」
「あっはいどうぞ」
オドオドしながらカーテンをそっと開けようとする間も無く彼女に開けられてしまう。
「いいじゃん。似合うね。その服。しおりんは身長があるからそういう服が似合うの羨ましいよ。私なんか小柄だからそんな服着たらめちゃくちゃアンバランスでさ」
確かに私は女子としては背がある方だ。だが特別高くも低くも無い中途半端に色々と持て余す背の高さという悲しいサイズなので小柄な先輩や夏美ちゃんの様な女子の方が羨ましかった。
「次はこれ着てみてよ!」
いつの間にか先輩の手には色々な服が握られていた。
「とりあえずこれ全部、試そう!」
着せ替え人形の気分が少しわかった気がした。




