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白兎と始めるアポカリプス世界冒険譚(闘神と仙術スキルを携えて)  作者: クラント


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9話 遭遇


 フルフルッ!

『マスター! こっちこっち!』


「はいはい」



 白兎が耳をフルフルと動かし、俺を誘導。

 白兎に導かれるまま、俺は2つ目の今日の寝床へと辿り着く。



 ピコピコ

『この辺なんかがいいんじゃない。一晩くらいなら十分だと思うよ』


「なるほど………、外からは死角になっていて見えにくいか。まあ、贅沢は言っていられないし」



 耳をピコピコさせて意見を述べる白兎。

 俺は身を屈めて建物の隙間を覗き込みながら感想を述べる。





 虫に追われて街に戻ってきた俺と白兎。

 しかし、まだ夜明けには程遠い時間帯………というより、まだ完全に真夜中。


 そんな真夜中に轟いた爆音。

 俺が虫の壁に特攻した際に鳴り響いた原因不明の現象。


 しばらくすると『何事か?』と周りに人が集まり始めたので、俺と白兎は逃げるようにその場を立ち去った。

 

 そして、人気の無い方向へと足を進ませ、

 どこかに休める場所は無いかと、夜の街を彷徨い、

 見つけたのが、この建物と建物の隙間空間。



 辺りを見渡せば、今まで見てきた街と異なり、雑多で見窄らしい風景が広がる。

 人気も少なく、どことなくスラムっぽい雰囲気。


 そんな中で目に付いた、崩れかけた建造物が並んだ一画。

 少しばかり瓦礫を動かせば、外からの視線を遮ることができそうな位置関係。


 間取りは畳2枚分くらい。

 横になって一晩だけ寝る分には十分な広さであろう。




「じゃあ、ここで寝ることにするよ。白兎、見張りをお願い」


 パタパタッ!

『はーい! お任せ!』



 白兎は耳をパタパタ、元気に返事。

 虫達に襲われ、機体は傷だらけだけど行動に支障はなさそうだ。

 入り口近くで身を隠しながら健気に見張り役を務めてくれる様子。




 …………どうやら、白兎の言葉が聞こえるようになったのは、俺の気のせいではなかった模様。



 だが、白兎は言葉を話していない。

 可愛らしい口から声が出ているわけではなく、

 耳を揺らすと、言葉が俺の耳に届くという仕様。


 これが機械種ラビットの能力なのかどうかは不明。

 なぜいきなりそんなことができるようになったのかも。



「まあ、いいか。困ることじゃないし………」



 むしろメリットだらけだろう。

 会話できる方がありがたいに決まっている。



 しかし、この場所に来るまでに歩きながら色々と話を聞いてみたが、自分が『機械種ラビット』であることと、俺の『従属機械種』であること以外の知識は無いらしい。


 この世界の常識について尋ねても『僕、ウサギだからよく分からない』とのこと。

 残念ながら白兎は、異世界転移の初期に現れて色々教えてくれる『チュートリアルキャラ』や『ナビゲーターキャラ』ではないようだ。


だからといって、白兎が俺にとっての大事な仲間であることに変わりはないけれど。



「ふああ~………、だんだん眠くなってきたな」



 安全地帯に辿り着いたことで気が抜けてきたのであろう。

 欠伸が一つ漏れ出し、徐々に眠気が湧いてくる



「寝るか」



 疑問は尽きないが、これ以上考えても仕方がない。


 パーカーを丸めて枕にしてゴロンと横になる。


 やはり気疲れしていたのだろう。

 目を瞑り、体の力を抜いた途端、睡魔が俺を襲い、

 自然に意識は夢の中へと…… 








パタパタッ!

『おはよう! マスター』


「………ああ、おはよう」



 目が覚めると朝。

 真っ先に視界に入ったのは、パタパタと元気に揺れる白兎の耳。



「特に問題はなかったか?」


 フルフルッ!

『大丈夫! 何人か通行人が通ったけど、全然気づかれなかったよ』



 俺の忠実な僕は一晩中徹夜で見張りをしてくれた模様。

 機械なのだから眠らないのだろうが、それでも少なからず負担をかけたであろうことは事実。



「ご苦労さん、白兎」



 俺は白兎の頭を撫でながら慰労の言葉をかける。



 パタパタ

『このぐらい朝飯前だよ』


「ハハハハ、そうか、朝飯前かあ~………」



 白兎の飯……、というか、燃料は何なのだろうね?

 まさか人間と同じような食事をするわけではないだろうが……


 そういや、俺、もう2日も食べていないぞ。

 それどころか、水すらも飲んでいないような………


 手で喉やお腹の辺りを擦ってみるも、空腹感とか喉が渇いたような感覚は少ない。

 

 流石に2日間も飲まず食わずでいるなら飢餓状態・水分不足になっているはずだが、そんな様子は感じられない。


 

「本当に人間じゃなくなったみたい……、というより『仙術』スキルにより『仙人』になってしまったからなのか………」



 仙人は飲まず食わずで何年も過ごすことができるそうだから、今の状態に説明がつく。



「でも、ずっと何も食べないのは精神的に良くないな」



 意識すればお腹が空いているような気もしてくるし、

 美味しいものを食べたい気持ちが無くなったわけじゃない。



「早く文明的な生活を取り戻さないと………、チィッ! なんだよ! スキル選択の時に『異世界に行っても今の生活環境(衣・食・住と娯楽を含む)を維持したい』ってお願いしたはずだろ! どうなってんだよ!」



 思わず不満が漏れるも、ソレをぶつける相手が不明。

 そもそもその記憶自体が本当にあったことなのかも確信が無い。



「…………とにかく、街での情報収集を続けないと」


 フルフル!

『はーい! 僕も頑張るよ!』


「おお、そうか………、それは頼もしい」



 たった1人で見知らぬ街を歩き回るより、

 白兎が一緒の方が心強いに決まっている。

 

 昨日、街を見回った範囲では、白兎のような小柄なロボット……機械種を連れた人間を何人も見た。

 ペット感覚で連れまわしているような感じ。

 であれば俺が白兎を連れて街中を歩いても問題は無いと思うのだが……



「でも、今のお前は傷だらけだからなあ」



 白兎の機体は虫達にやられて白色ボディのあちこちに傷が入っている状態。

 装甲表面が削られているだけだが、見栄えが悪いのは間違いない。


 この状態で街を歩けば、変な目で見られるかもしれない。

 それにこんな状態の白兎を人目に晒すのは申し訳ないような気が……

 


「あれ? ………昨日よりも傷が薄くなっていないか?」



 昨日よりも白兎に付いた傷が薄くなっているような気がする。

 見間違えと言われたら『そうか』と納得する程度だけれども。


 しかし、白兎は俺の指摘に耳をピコピコ揺らして返答。



 ピコピコ

『少し休んだからちょっとだけ直ったみたい』


「へえ? 自動修理機能付き? それは便利だな」


 フルフル

『表面を引っ搔いたような小傷くらいなら時間が経てば直るけど、折れたり亀裂が入ったりすると部品を取り換えない限り直らないからね』


「なるほど……、そこまで都合良くはいかないか……」


 パタパタ

『これくらいの傷なら、大人しくしていたら4、5日で直ると思うよ』


「ふ~ん……」



 白兎を見据えながら、じっとこの後の予定を考える。


 白兎が一緒だと心強いが、明らかに損傷状態の機械種を連れて歩けば、何事かと思われそう。

 逆に白兎が損傷していることで、良い獲物だと狙われる可能性だってある。


 昨日は俺の為に頑張ってくれたのだから、

 今度は俺が頑張る番ではなかろうか?


 街の中で情報収集するだけなのだ。

 ウサギの白兎を連れていても護衛以上の意味がなく、

 結局、俺が前に立って話しかけないといけないのに変わりはない。



 覚悟は決まった。

 後は指示を出すだけ。



「よし、白兎。お前はここで休んでおけ」


 フルッ?

『え? 僕、お留守番?』


「ああ………、白兎は傷を直すことを優先してくれ。その間に俺が街を回って調べてくる」


 ピコピコ

『1人で大丈夫?』


「まあ、一応、俺は『闘神』だぞ。そんじょそこらのチンピラには負けない……はず」



 多分、不良やヤンキー程度なら勝てる。

 身体能力は最強武将なのだ。

 俺が喧嘩なんて殆どしたことが無い素人でも、スペックごり押しで打ち勝てる。

 しかし、銃を向けられたらヤバいから、立ち回りは気を付けなくてはならないが。



 パタパタ?

「でも、相手が機械種なら?」


「うっ!………… で、でも! 昨日見た限りでは、そこまで治安は悪くなさそうだから……、だ、大丈夫だろ」



 半日以上、歩き回ったが、危ない目に会うことはなかった。

 元の現代日本並みというわけではないだろうが、そこら中で喧嘩や強盗、暴動が起きている様子もない。



「というわけで、白兎。ここで休んでおけ」


 フリフリ……

『心配だなあ………』



 耳をフリフリ、不安そうに呟く白兎。

 少しばかり耳を振る動きが鈍く見える。



 だが、いくら止められても今更方針を変えるつもりはない。

 白兎にはきちんと傷を直してもらって、これから活躍してもらわなければ困るのだから。








「じゃあ、行ってくる」


 パタパタ?

『ハンカチは持った? チリ紙は? オヤツは300円以内だからね』


「お前は俺のお母んか? それに遠足じゃないぞ……、それよりも、白兎。見つからないよう隠れていろよ」


 フルフル

『はーい! マスターが戻るまで地面の中に潜っておくよ!』



 そう言うと白兎は地面に爪を立て、ダダダダッっと凄い勢いで穴を掘り始めた。

 そしてスッポリと機体が隠れる程の大穴を掘り抜き、その中に飛び込むと、



 フリフリ!

『行ってらっしゃい!』



 耳だけを地面からピョコンと生やしてフリフリ。

 そんな送り出しを最後に、そのまま地面の中へと消えていった。




「…………さあ、行くとするか」




 白兎が消えた穴をしばらく見つめた後、

 何とも言えない表情で俺は一晩過ごした場を後にした。








「やっぱり、まずはギルドを探さないとなあ~」



 スラムっぽい雰囲気のエリアから街の中心部っぽい方向へと向かって足を進めながら、俺は街の散策の優先事項を口にした。




 異世界ファンタジーの定番、『冒険者ギルド』。

 冒険者を束ねる巨大組織。

 ギルドカード、ステータスを確認する水晶玉、いぶし銀のギルドマスター、

 『A』や『SS』といったギルドランク、そして美人の受付嬢。


 ファンタジー世界ではないので、そのままの形ではないだろうが、機械種なんて危険な存在を狩るために、狩人達を統合するような組織があるのではないだろうか。


 そこで登録できれば身分証が手に入ったり、初心者向けの研修を受けることができたりなんかあるかもしれない。


 もちろん、テンプレ(最近は少なくなってきたが)のギルドで新人いびりに絡まれるという展開にも期待してもいいかもしれない。

 そこで実力を見せつけて、「コイツ、スゲー!」ってなるやつ。


 『闘神』である今の俺の力なら、そんじょそこらの無頼漢に負けはしない……


 ……いや、相手は銃を持っているかもしれない。

 流石に銃相手は厳しいな。


 いかに呂布でも音速近い弾を躱せるだろうか?


 相手が銃を構えているところを想像して構えてみる。

 銃口の向きである程度相手の狙いが分かると聞いたことがある。


 斜めに構えて正面の面積を少なくしてみてはどうか。


 それとも、いっそいきなり飛び蹴りでもかましてみるか。


 その上で神速のジャブで顔面を狙う……



 まだ朝が早いこともあって辺りの人気は皆無。

 なので、俺も遠慮なく、歩きながらシャドーボクシングを続けた。


 ジャブ、ジャブ、ストレート、キック、回し蹴り。

 相手が倒れても残心を忘れず、構えを解かない。


 想像の中の新人いびりを倒して、起き上がらないことを確認してからほっと一息つく。



「ふう………、こんなモンか………、他愛もない」



 想像上のことだけだが、なぜかやり切った感が滲みだす。

 それだけで今日一日上手くやれそうな気がしてくるから不思議。








 探してみたけどギルドらしき建物はありませんでした。


 町の中央にそれに近い建物はあったものの、全くの立ち入り禁止で、機械種:ソルジャーだか、ナイトだか分からないが、ゴツイロボットが何体も警備しており、とても人が出入りするものではなかった。


 周りの建物より一際大きく、特に張り出している塔は6,7階立てのビルくらいの高さはありそうだ。  

 天辺には下からでもわかる大きな釣鐘がついており、時刻を知らせる時計塔のようなものではないかと思う。


 しかし、ここに来てから鐘の音は一度も聞いたことが無いが。


 仕方がないので、ギルドに所属してそうな冒険者っぽい人を探してみることにする。

 しばらくそれっぽい人を見つけ、行動を観察していると、いくつかパターンを発見する。



 ①機械種の残骸と思われるものを店舗に持ち込み、マテリアルに交換している。


 ②店舗には宝石や装飾品のようなものを持ち込むものもいる。こちらはカードで受け取っている場合が多い。


 ③食料品なんかはマテリアルそのもので交換。銃や装備品なんかはカードでやり取りしているのがほとんどだ。



 ここから導き出されるのは、機械種の残骸はマテリアルになるこということだ。

 


 しまったな。俺が叩き潰した虫の残骸を持ってくるべきだったか。

 店舗で交換している残骸はあきらかに大物が多かったように思うが、全く金にならないということもないだろう。



 来た道を戻り、廃墟に向かう。

 そろそろ物語が進んでいるという実感がほしい。この世界に来てから、まだ何も手に入れていないんだ。

 せめて、異世界での初めての取引をここで完遂してみたい。






 虫の残骸が見つからない。

 あの爆発で大分飛び散ってしまったと思うが、全く残っていないということは無いはずだ。


 しかし、どれだけ探しても見つからない。

 誰かが取っていってしまったのか、虫の残骸を回収する機械種でもいるのか。


 夜を待てば、集まってくるかもしれないが、それだと、店に持ち込むのが次の日になってしまう。

 できれば早急に金銭を手に入れたい。もう野宿はこりごりだ。

 仕方がないので、こちらから虫を探して捕まえることにしよう。




 虫を探して廃墟をうろつく。


 必要ないときはよく見かけるのに、探すとなかなか見つからない。

 よくあることだ。


 行動範囲を広めて、歩き回る。

 瓦礫を持ち上げて、虫がいないかを確認。

 地面を少し掘り返してみる。


 太陽は真上を通り過ぎ、夕方に近くなってしまっている。



 この歳になって虫取りとはなあ。


 場所が悪いのかもしれないので、探す場所を変えてみることにしよう。



 廃墟の範囲はかなり広い。

 元々大きな街であったのだろう。

 それが襲撃か何かで縮小していったのではないかと思う。


 それにしても町に城壁がないことに驚いた。

 あれだけの敵対的な存在がいる世界なのに、町の住民を守るための城壁が無いなんてどういう訳だろうか。


 また、門番の存在もなく、町への出入りは自由。

 もし、門番がいて通行税が必要だったら詰んでいただろう。


 普通に考えたら一見この町は無防備すぎる気がする。

 俺には分からない防衛装置のようなものがあるのかもしれない。



 そんなことを考えながら歩いていると突然横から声をかけられた。



「おい! おまえ! 勝手にウチの狩場に入ってくんな!」



 声をかけられた方向に目を向けるとそこには小学生高学年くらいの浮浪児が3名。


 浮浪児と決めつけたのは擦り切れた衣服と荒んだ目つき、その粗暴な態度からだ。


 ん? 小学生高学年くらいも浮浪児と呼ぶのだろうか?



「おい!!返事をしやがれ!!」



 気が付けば、3人に取り囲まれていた。



 ぬう、初バトル(①メカ熊は逃げただけ②虫は振り払って突撃しただけ)が、ガキ3人ってどうなんだ。



 ………あ、ヤバい!

 こいつら手にナイフを持ってやがる。


 しかもよく見たら、ガキ3人とも手や指が古傷だらけ。

 どんだけ荒んだ日々を過ごしてるんだ!


 さっきまで、何とかなるだろうとある程度余裕を持っていたが、3人からの強烈な敵意にやや尻込みしてしまう。

 そりゃナイフを突きつけられたら普通はビビるな。

 


 ここは大人しくするのが無難か。

 いつになったら俺はTUEEEEできるのだろうね。



「すみません! 俺、この町にきて間もなくて、ここがどこか全然わからないんです。勝手に狩場に入ったことは謝ります。すみません!」



 なんか言い訳と謝罪の言葉はスラスラ出てくる。これも元の世界で培った経験か。


 俺が頭を下げたことで、溜飲が下がったのか、3人の表情から敵意が少し減る。


 ナイフは相変わらず俺の方向に向いているが、3人とも顔を互いに合わせてどうするかを思案しているようだ。



「どうする?こいつ」

「サラヤが新人見かけたら連れて来いって言っていたしなあ」

「こいつ弱そうだぞ。役に立つのか」

「邪魔だったら追い出しちゃえ」

「人数多い方がいいってアニキも言っていたぜ」

「じゃあ連れていくか」



 結論が出たらしい。



「おい、逃げるなよ」

「俺たちのアジトに連れてってやる」

「さあ、こっちにこい!」

 


 大人しくついていくことにしよう。ようやくイベントが始まったようだ。

 いきなり浮浪児に連行されるなんて、なんとも情けない話だなあ。





「おい!」



 歩いていると3人のうちの一人にパーカーの袖を掴まれる。



「お前、良いの着てるじゃないか。俺がもらってやるよ」



 袖をグイっと引っ張られる。



「さっさと脱げよ!」



 威嚇する気なのかナイフを目の前でチラつかせるガキ。



「…………」



 前を歩いていた2人もこちらを面白そうに見ている。

 あれは俺から何かを『奪おう』としている目だ。




 【ウバウ? オレカラカ?】




 ドクンッ!!


 心臓が大きく跳ねた。


 

 


「こら!聞いているのか!」



 いきり立つガキはナイフを俺ののど元に突きつけてくる。



 その瞬間、俺の心に何者かの声が響く。



 ウバウノカ!

 コイツハオレカラウバウツモリカ!

 ウバワレルクライナラ、コワシテシマエ!!



 ナイフを突きつけている手を両手で握りしめ、ガキの目を正面から見据える。



 なぜか簡単に壊せそうな気がする。

 もう目の前のガキが人間とは思えなくなってきた。


 俺の心の中から、恐怖や戸惑いの一切が消え去り、代わりに途方も無く強大な力を持つナニカが腹の底からせり上がってくるような………

 俺が一歩足を踏み出せば、簡単に踏み潰せそうな蟻みたいに見えてくる。



「コラッ! 離せ!」



 ガキは先ほどからナイフを動かそうと力を込めているがピクリとも動かない。


 両手に包まれているガキの手はまるであちこちひび割れた卵のように壊れやすく感じる。


 少し俺が力をいれただけで粉々になってしまうだろう。




「オマエハオレカラウバウノカ?」




 最後に確認だけしておこう。


 ガキの顔が目に見えて青ざめ、手から力が抜けてナイフが地面に落ちる。


 手の力を抜くと、ガキはさっと俺から遠ざかった。



「おい!どうした?」

 


 前の2人が駆けつけてきた。


 俺は2人の方向に目を向ける。さてどうしようか? どうするかな?



 3人はこそこそと何か話し合っている。


 さあ、どのような選択肢を選ぶのだろう。それによって3人の運命は大きく変わるはずだ。

 

 俺はそれをどこか他人事のような感覚で、ただぼうっと眺めていた。






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― 新着の感想 ―
まあ白兎を連れて街に行ったらハーメルン2週目ルートみたいに青銅の盾ルートにはいっちゃいますからね……
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