閑話 白兎のヒロインチェック2
白兎が次に向かったのは『青銅の盾』。
こちらもスラムで聞いた声を頼りに、『青銅の盾』に所属しているっぽい人の跡をつけて辿り着く。
パタパタ
『ここが【青銅の盾】かあ~』
縦に長かったチームブルーワの拠点ビルとは違い、
横に長く2階建てである模様。
1階の天井が高く作られていて入り口が広く、
まるで自動車整備工場か金属加工工場のような造り。
玄関に表札があって『青銅の盾』と書かれてあり、
ここが『青銅の盾』のホームであるのは間違いない。
『チームブルーワ』は不良のたまり場みたいな雰囲気だったが、
こちらは見たまんまの工場、若しくは作業場。
中で働いている人達は皆、十代の少年ばかり。
金属を金槌で叩いたり、工具で削ったりしている。
フルフル
『【青銅の盾】って、スラムチームじゃなかったっけ?』
見た所、工学部の学生の集まりにしか見えない。
その仕事ぶりは真面目で熱心。
肩パットに釘バットでヒャッハーとまではいかないにしても、
スラムチームという表現には、あまりにかけ離れた若者達ではないだろうか?
フリフリ
『あの中には女の子はいないなあ~………あ、1人入ってきた』
少年達が集う作業場らしき場所へ、
コップがたくさん載ったお盆を手に、女の子が1人登場。
「皆さん、そろそろ休憩ですよ~」
どこか媚びるような甘く優しい声。
作業をしていた少年達が一斉に振り向く。
すると、急に視線が集まった女の子は、一瞬、吃驚したような表情を浮かべる。
しかし、すぐに笑顔になって優しく微笑み、もう一度声掛け。
「飲み物、持ってきました。私が頑張って入れたお茶です。美味しいですよ!」
「リーアちゃん、ありがとう!」
「俺も俺も!」
「俺の方が先だぞ!」
「もう! 皆さん、慌てないでください。順番に配りますから……」
我先にと集まっていく少年たちに、少女は慣れた様子で応対。
動物園で餌をやるベテラン飼育員とでもいった所。
どうやら少女は少年達に大人気であるらしい。
確かに可愛い子ではある。
年の頃は16,7歳くらい。
焦茶色の髪を後ろでお団子にした髪型。
目が大きくて丸顔。
どことなく愛嬌があり、特に笑顔がとてもチャーミング。
背は低くて150cm少々。
小柄な割に胸は豊かでグラマラスな体系。
花模様の刺繍の入ったエプロンドレスが良く似合い、
家庭的な女の子のイメージを演出。
しかし、どこか少年達に媚びているような雰囲気が見られる。
笑顔の奥に微かに見え隠れする打算、
目には計算高い狡知の光が含まれているように思う。
だが、容姿は合格点。
スタイルにも申し分は無く、
ヒロイン候補としては及第点であろう。
パタパタ
『リーアって名前だね。一応、候補に入れておこう』
白兎は作業場内を覗き込みながら、
自身の晶脳内のリストに新たなヒロイン候補の名前を刻む。
ピコピコ
『他に女の子はいないかな~………』
物影に隠れながら角度を変えて中を覗いてみる。
しかし、リーア以外の女の子の姿は見当たらない。
そこで視点を変え、作業場を少し離れて遠目で眺めていると、
作業場に隣接するように立つ建屋を発見。
ピコピコ!
『あ! 建屋がある。寮みたいな造り……、ということは、ここは仕事場で、生活の場はあっちなんだろうね。行ってみよう!』
あそこが寮だとすれば、必ず家事をしている人が居るはず。
男が工場で働いている間、女性が家で家事をしているのは良くある話。
求めるヒロイン候補が他にもいるかもしれないと判断。
人目を避けながら、回り込んで建屋に入ろうとするが………
フルフル
『あ、駄目だ。見張りがいる。しかも機械種……』
建屋の周りは塀に囲まれ、見る限り入り口は一つしかない。
その入り口に小柄な機械種が1機、まるで門番のように立つ。
身長は120cm程。
一応の人型ではあるが、頭部は犬を模したフォルム。
小学生くらいの体格だが、全身金属で構成された機械ともなれば、そのパワーは人間を遥かに超える。
決して油断できる相手ではない。
フリフリ
『見た目から、機械種コボルドかな? ファンタジーなら雑魚キャラだけど……』
ドイツの民間伝承で伝わる妖精の一種。
悪戯好きで鉱物を司る精霊と言われる場合もある。
ゲームでは犬頭の亜人、妖魔として登場するケースが多い。
いずれも決して強キャラではなく、むしろ敵としては最弱と言っても良い立場。
しかし、白兎の方もたかがウサギでしかない。
多少不思議な力が宿っているのは自覚しているが、
相手が倍以上の体格となると勝ち目は薄い。
ピコピコ
『それに、見た感じ、色々と改造していそう。執事服を着せているぐらいなんだから、絶対に手を加えるているよね』
機械種コボルドの門番は、なぜか執事服を着こなしているのだ。
しかも安っぽいコスプレ服ではなく、
明らかに熟練の職人が仕上げたオーダーメイドであろう高級品。
犬頭に矮躯なのだが、妙に似合っているように見えるから不思議。
おそらくマスターの趣味で執事服を着せているのだろう。
だとするとそのマスターは相当な趣味人であると言える。
そんなマスターが手を加えないわけがない。
普通の機械種コボルドと侮ったら痛い目を見るに違いない。
ピコピコ
『どの道、無理やり押し入るわけにはいかないから……、裏に回ろう』
門番の視界内に入らないよう裏へと移動。
そして、塀を登って中への侵入を目指す。
パタパタッ!
『うわ! 防犯設備が一杯………』
裏に回って塀を見上げれば、そこかしこにセンサーの類が貼り付けられていた。
また、刺々しい鉄条網も張り巡らされており、まるで刑務所のような厳重さ。
センサーや鉄条網に触れたら警報が鳴る仕組みだろうか?
若しくは、電流でも流れるのか………
ピコピコ
『でも、これって人間用だね。小さい僕だったら避けながら登れるかも』
センサーとセンサーの間は20cm程。
人間なら無理だが、自分なら間を潜り抜けられそうだ、と白兎は判断。
パタッ!
『よし! 行こう!』
爪を塀に突き立て、ガジガジと昇り始める。
塀に張り付けられたセンサーを避け、
棘の突いたワイヤーを潜り、
1分もかからずに登攀に成功。
そして、塀の天辺から生え茂る木へと飛び移り、スルスルと木登り。
そして、建屋2階の窓から中の部屋を覗いてみる。
すると、部屋の中には少女が2人。
1人は年の頃15、6歳ほどの上品そうな美少女。
砂色にも似た色素の薄い金髪を肩口まで伸ばし、
前髪には少し大きめの青いカチューシャ。
愛らしい顔立ちに、品の良さが感じられる所作。
首元まで隠すスカーフに厚手のブラウス。
足首まで届く長めのスカート。
肌を見せないことを前提としたような貞淑な服装でありながら、
不思議と野暮ったさは感じさせない洗練された佇まい。
もう一人は、17、8歳程の落ち着いた雰囲気の美女。
背中まで届く艶やかな長い黒髪。
深い知性を湛えた緑色の瞳。
一度も陽光を浴びたことが無いかのような白磁の肌。
お城のパーティーから飛び出してきたままのような深い藍色のドレスを纏い、
車椅子に深く腰掛け、もう1人の少女に髪を櫛で梳かせている様子。
どちらもスラムにはあまりに場違いな女性達。
街の中心部、富裕層が集まる高級住宅街の方が遥かにお似合い。
けれど、この2人はどのような理由かは知らないが、
このスラムの一角を住処としている模様。
ある意味、これはチャンスでもある。
2人とも、一見マスター好みの清楚な女性。
ぜひ、名前を調べた上、本当にマスターに相応しいかどうかをチェックしなくては!
枝を伝って部屋の近くへと移動。
耳をすまして、部屋の中での2人の会話を拾おうとする。
「勿体ないね。こんなに綺麗な銀髪なのに」
声が聞こえてくる。
「わざわざ黒に染めるなんて……、エメは銀髪だって似合うのに……」
髪を梳いている方の少女の声。
いや、髪を櫛で梳いているのではなく、
車椅子の女性の髪を黒に染めている様子。
確かに良く見れば、まだ僅かに残る櫛が通っていない部分は銀色。
櫛が通る度にその美しい銀髪が黒に染められていく。
「仕方がないでしょう………」
車椅子の少女が小さく肩を竦めながら発言。
「銀髪のままだったら周りが色々とうるさいですから」
「エメは超美人だから『鐘守』と誤解されちゃうもんね」
「あら、ありがとう。ジュレも可愛いですわよ……、まだ少し子供っぽいですけど」
「ふーん、だ! あと2、3年経ったら、エメよりも美人になっているんだから!」
金髪の少女が『ジュレ』。
銀髪を黒髪に染められている車椅子の女性が『エメ』という名前らしい。
ただ、かなり仲が良さそうな2人の間の会話なので、どちらも渾名の可能性はあるけれど。
あと、2人の会話で出てきた『鐘守』ってなんだろう?
『銀髪』で『超美人』だと『鐘守』と誤解される?
う~ん……、イマイチつながりがわからないや。
白兎が聞き及んだ情報を整理している間も、
2人の会話は続いていく。
「ジュレ、貴方も三色を背負い、『藍色』を目指す人間なのだから、自身の美しさを磨くよりも学識を深める方に力を入れなさい。いつまでも『緑手』一つに甘んじているつもりなの?」
「う………」
「『緑腕』を目指せ、とは言いません。こんな辺境では『緑学』……最新の晶石・晶冠プログラムを学ぶのは難しい環境ですから。だからせめて『青学』か『黄学』を学びなさい。貴方なら少し本腰を入れて勉強すれば『指』なんてすぐよ」
「エメだから、そんなことが言えるの! 私は不器用だから無理でーす! 兄さんとは違うんでーす!」
「もう! 貴方だって、十分に才能がある方なのに………」
「『トーラの再来』、『討論会百人切り』、『学首ギロチンのエメラルディア』に言われてもねえ……」
「トーラ様の再来という評価は、光栄に思いますが………、討論会で打ち負かしたのは74人ですよ。あと、なんですか、その『学首ギロチン』って?」
「エメは不正を働いていた緑学首をとっちめてクビにさせたでしょ。だから『学首ギロチン』……」
「全く………、人に変な2つ名ばっかり流行らせて……、やっぱり三色学会にはロクな人間はいませんわね」
窓越しに聞くジュレとエメの会話。
白兎の耳に届く言葉だけでも、この異世界独自だろう用語が飛び出てくる。
『緑学』『青学』『黄学』
会話の流れから、この世界の学問であるのは間違いない。
『緑学』は機械種の頭脳部分にあたる『晶石』『晶冠』のプログラム関係であろう。
だが、『青学』と『黄学』が何か、までは不明。
おそらく機械種関連の学問だと思われるのだが……
あと、『指』とか、『手』、『腕』というのは、学問の段位であろうか?
スラムでは手に入りにくいであろう学術的な話。
できればもっと情報を仕入れたいと、白兎はつい身を乗り出してしまい……
「誰です?」
ピコッ!?
車椅子のエメラルディアが不意に窓の方へ視線を向けた。
その緑色の瞳が真っ直ぐこちらを見据える。
フルフル!?
『やべっ!?』
白兎は反射的に木の枝から飛び降りた。
ズサッ!
地面へ着地。
即座に物陰へ逃げ込もうとした、その時、
ガサッ
目の前の茂みが揺れた。
現れたのは白兎よりも一回り大きな機械種ラビット。
青い光が白兎を睨む。
不埒な侵入者への敵意が滲む。
青く輝く目は、人間に従属しているブルーオーダーの証。
ここの『青銅の盾』の人間が従えている機械種であろう。
本来純白である装甲表面はメタリックな色調の『灰色』に染められ、
爪や牙も通常機よりも幾分太く長い。
明らかに人間の手を加えられたカスタム機。
どれほどまでにその戦闘力が向上しているのか………
互いに固まる。
睨み合いながら隙を伺う。
だが、白兎にとってここは敵地。
長く留まれば危険はさらに増す。
だから、ここは…………
フリッ!
『先制攻撃あるのみ!』
白兎は力強く地面を蹴り、
敵、機械種ラビット目がけてジャンプ。
パタッ!
『天兎流舞蹴術、ラビット32文キック』!
ガギィンッ!
後ろ脚を揃えてのドロップキックをお見舞い。
いきなり飛んできた白兎の蹴りを躱せず、
真面に喰らい、後方へと吹っ飛ぶ機械種ラビット。
ピコピコ!
『まだまだ!』
倒れた敵への追い打ち攻撃。
白兎はピョンと空高く飛び上がり、機体を空中でクルッと一回転。
フルフルッ!
『天兎流舞蹴術 ラビットムーンサルト・プレス!』
そして、そのまま全体重を乗せたフライングボディプレスを敢行。
さらに、半ば地面にめり込んだ機械種ラビットを引っ張り出し、うつ伏せにして馬乗り。
その体勢からムンズッと相手の両耳を前脚で掴み、後ろに引っ張り上げて機体を海老反りに締め上げる。
パタパタッ!
『天兎流舞蹴術 機矢滅瑠兎・苦落血!』
プロレス技の一つ、キャメルクラッチの変形。
ラクダの背中のコブに似ていることから『ラクダ固め』とも呼ばれるが、
技の形から『ウサギ固め』と言うべきか……
ボキンッ!!
そのまま敵の背骨……に相当するフレームを圧し折って白兎が完勝。
敵の青い目の光が瞬く間に消えていく。
フルフル…
『ふう……、ちょっと吃驚したけど……、やっぱり天兎流舞蹴術は最強だね』
僅か30秒足らずで敵を葬り去る秒殺。
同型機であるのにスペック・技能で圧倒的な差を見せる。
これも白兎がただの機械種ラビットではない証拠。
闘神・仙術スキルを併せ持つ者の血を受け、
その者の言葉を以って成長の方向性を得た。
そして、その機体は幻想を宿すまでに至る。
言わば金属の身体を持つ霊獣に近い存在。
だが、その機体はこの世界においては下位機種でしかなく、
未だ軽量級機械種の枠を超えられないでいる。
今はまだ機械種ラビットの範疇。
この枠を超えようと思えば、更なる奇跡に頼るしかない。
もちろん、そんな事情など白兎が知る由もない。
今はただ、マスターの役に立つべく奔走する健気な従属機械種。
得られた情報をマスターの元に届けるべく、
辺りをキョロキョロ、この場からの脱出方法を探す。
フリフリ
『さて、壁を超えよう……、早く逃げないと……』
白兎が壁を見上げ、攀じ登ろうとしていると、
パチパチパチパチ
突然、辺りに拍手の音が鳴り響いた。
まるで先ほどの白兎の健闘を称えるかのような。
白兎は驚いて音の方向へと振り向くと、
そこには、この建屋の入り口で門番をしていた機械種コボルドが1機。
地面から2m程宙に浮かびながら、白兎を青く光る目で見降ろしていた。
フォーマルな執事服を纏った犬頭の半人型。
普通に考えれば滑稽に見えるはず。
子供のお人形遊びに等しい、嘲り交じりの失笑を誘うような児戯であろうが、
その姿を間近で見れば、とてもそんな感情を抱けない。
小型な機体ながら、ビリビリと機体表面がひりつくような威圧感を放つ。
目算では120cmそこそこの身長であるはずなのに、
倍以上の体躯に勝る存在感に溢れる。
なぜか宙に浮いていることを除いても、
只者ではないのは明らか。
冷たく青い光を輝かせる瞳。
その光の中に白兎への興味が垣間見える。
そして、犬を模した口をニヤリと歪め、
低く響く美声で白兎へと声をかける。
「お見事。バルーク君ご自慢のグレーシャドウをここまで鮮やかに倒すとは、なかなかのお点前」
フリフリ?
『誰? ただのコボルドじゃないのは分かるけど?』
「ふむ? 誰と問われても、吾輩は門番であるとしか答えられぬな」
ピコピコ
『じゃあ、門番として、侵入者である僕を捕まえるの?』
「それは門番の仕事では無い。吾輩が契約者、エメラルディア様から受けた命令は『この門を守り、女以外を通すな』だ。壁を越えてきた汝は対象外。逃げる際に門を通ろうとするなら別だがね」
フルフル
『随分と融通が利かないんだね?』
「それはエメラルディア様の責任だな。我は命令通りにしか動かぬ。もちろん、汝が吾輩の契約者の命を狙うつもりなら……」
ボウッ!
白兎の足元の地面に小さな穴が開いた。
直径は数センチだが、底が見えないくらいに深い。
「容赦はしない。吾輩が負う契約者への義務故に」
ただ当たり前のことを口にするように、
堂々と自身の義務を宣言する機械種コボルト。
パタパタ
『そんなつもりはないよ。僕はただ、マスターに命じられて、可愛い女の子を探しに来ただけだから……』
「ハハハハハッ! それは面白い! 何と見る目があるマスターか! エメラルディア様は、見た目は抜群であるからな! あの鐘守と比べても遜色がない程に! ハハハハハッ! ………まあ、当たり前だな。なんといってもエメラルディア様は鐘守の………フハハハハハッ!」
白兎の正直な告白を冗談と受け取った機械種コボルト。
宙に浮かびながら腹を抱えて大笑い。
ピコピコ
『本当なんだけどなあ~』
白兎はそんな機械種コボルドをしつつ、地面に打ち込まれた跡を確認。
穴周辺が高熱でドロドロとしたガラス状。
どうやら見えないレーザーのようなモノを打ち込んできた様子。
機械種であっても一撃で貫かれるであろう威力があるのは間違いない。
白兎はジッと機械種コボルトを見つめる。
宙に在り、見下ろす様は堂に入ったもの。
自然と人を従える王様や貴族のような貫録が感じられる。
最弱妖精・妖魔で知られるコボルドではあり得ない。
勝てない………、絶対に。
白兎はジリジリと後退しながら、彼我との戦力差を計算。
勝率ゼロ。
相手が本気になれば、一瞬で潰されるのは確実。
今、白兎がこうして生きていられるのは、向こうの気まぐれ故。
だが、いつまでも気まぐれに頼っているわけにもいかず、
何とかコボルドの隙を見つけ出し、この場を逃げ出すタイミングを狙っていると、
フル?
『あ………、あれは?』
白兎の目に、その背後に薄っすら翼のようなモノが見えた。
そして、犬頭の矮躯であるその機体の裏側に、
美しくも狂わしい、地獄を司る獣面の堕天使の姿が……
そんな白兎の内心を知る由も無く、
機械種コボルドは機嫌良さそうに声を弾ませながら発言。
「さて、ラビット君。ウィットなジョークに富んだ君との会話は楽しいが、そろそろ逃げ出した方が良くないかね? 吾輩の契約者、及び、蒼の娘がこちらに向かっているようだ」
ニヤリと意味ありげな笑みを見せ、
白兎へこの場からの逃亡を促す。
白兎が目覚めつつある浄眼にて、
自身の隠された本性を見抜きつつあるとは、
夢にも思っていないであろう。
だが、これは白兎にとって幸運。
フリフリ?
『僕を逃がしてくれるってこと?』
「それは正しくないな。我は何も見てない。ただ、庭を歩いていたら見覚えのあるラビットの残骸を見つけただけだよ」
パタパタ
『分かった……』
白兎は見逃してくれた機械種コボルドへとペコリと一礼。
その後、塀へ飛び付き、ガジガジと登り始める。
そして、その数秒後には塀の向こうへとピョンと飛び去った。
辛くも死地を脱出した白兎。
あの機械種コボルドの意図は分からないが、
百に一つの幸運を拾ったようなものであろう。
この世界には謎が多い。
何が安全で何が危険なのかも不明瞭。
今のマスターと白兎は、まだ何も知らぬ赤子同然。
早くこの世界に対する知識を深め、
生きていくための基礎を構築しなければならないのだけれど……
パタパタ
『だけど、マスターは可愛い女の子の方を優先するんだよねえ……』
隠れるように街中を駆け抜ける白兎。
未だ生き抜くことに真剣味の薄いマスターのことを脳裏に描き、
少々疲れた雰囲気を醸し出しながら耳をパタパタッと震わせた。
<白兎のヒロインチェック・青銅の盾>
①ジュレ
美貌 A
スタイル B
性格 B+
特技 緑学?
厄ネタ B
白兎の一言「正統派っぽい。でも、なんか厄ネタを持っているような気がする」
②エメラルディア
美貌 A+
スタイル A
性格 C
特技 学問?
厄ネタ A
白兎の一言「気位が高そう。相当興味を引かないと相手にしてくれないだろうなあ」
③リーア
美貌 B
スタイル A
性格 C
特技 家事?
厄ネタ D
白兎の一言「少し計算高いけど、普通の女の子。無難枠かな~」




