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白兎と始めるアポカリプス世界冒険譚(闘神と仙術スキルを携えて)  作者: クラント


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閑話 白兎のヒロインチェック1


 スラムの街並みを白兎が駆ける。

 物影から物影へと身を隠しながら。

 

 長い耳をピコピコ。

 丸い尻尾をフリフリ。

 短い脚をピョコピョコ、

 小さなお目々をキョロキョロと動かし、

 マスターの為の情報収集に勤しむ。



 辺りの人通りはチラホラいる程度。

 機械種の姿はあまり見られない。

 

 マスターの話だとスラムの外、街の中心部には機械種がかなりいるそうだから、治安と裕福さの違いだろうと思う。


 スラムの住人は機械種を従属し続けることができるほど裕福ではないのだ。

 また、機械種は装甲の一欠けらまで価値があるとすれば、周りから狙われて当然。


 しかも、『白鐘』のせいで機械種は人間を傷つけられない。

 機械種ラビットである白兎が1機で街中を歩けば、良からぬ企みを持つ者が襲ってくるのは間違いない。


 だからこそ、こうして身を隠しながら進む。

 幸い、辺りには瓦礫やゴミが散乱しており、身を隠す場所には困らない。




 さて、どこから探そうか?


 マスターから最優先で、と命令を受けたのは『ヒロイン探し』。


 けれど、何の目途も無しに荒廃したスラムを回って、

 マスター好みのヒロインが見つかるとは思えない。

 では、街の方を探そうかと思うも、今のマスターの身分はスラムの一少年。

 ある程度身分を持った町娘がマスターと関係を構築したいと思うだろうか?という疑問もある。

 

 

 やっぱり、他のスラムチームの方を探った方が良いかな?

 もしかしたら、貧しくても優しい心を忘れない薄幸の美少女がいるかもしれない。



 白兎は耳をフルフル動かし、

 マスターから教えてもらった『他のスラムチーム』の拠点を探し始めた。






 フルフル

『ここが【チームブルーワ】の拠点かな?』



 スラムで聞き耳を立てること1時間強。

 聞こえてきた会話から【チームブルーワ】のメンバーであると分かった少年の跡をこっそり追跡。


 そうして見つけた6階建て古びた雑居ビル。

 ビルの周りには少年達が思い思いに屯っており、

 時折、下品な笑い声や罵声が飛び交う。


 スラムだから当たり前だが、その中でもより混沌とした雰囲気を感じる。



 白兎が追跡してきた少年は、入り口の前に立つ見張りらしき者に軽く挨拶してからビルの中に入っていく。


 その少年の気安さから、そのビルが自身のホームである確率は高い。

 しかし、このビル全てが『チームブルーワ』のモノなのかは不明。

 このビルの中に『チームブルーワ』の拠点があるかどうかも、確かめてみないと分からない。



 パタパタ

『どうしようかな~、このビルに侵入するとなると、壁を攀じ登るしかないけど……』



 物影に隠れながら、雑居ビルを見上げる白兎。


 見張りがいる以上、入り口からは入れない。

 となると、どうにかして壁を登る必要があるのだが……




「イーリャ! 貴方、私のブルーワを寝取ったわね!」


 フリフリ?!

『え? 何? 【ブルーワ】?』



 考え込む白兎の耳に姦しい女の子達の声が届き、

 その中に『ブルーワ』という名前が含まれていたことに気づいて驚く。


 声がした方向を振り向くと、雑居ビルを前に2人の少女が言い争いをしていた。




「寝取ったって………、人聞きが悪いわ、アリーシャ。別にブルーワは貴方のモノじゃないでしょう?」


「!!! 何を言っているのよ! 私はブルーワの女よ!」


「あらそう? でも、ブルーワは最近、貴方のこと、飽きてきたみたいよ」


「な、な、何を………」




 一人はイーリャという名の15、6歳ほどの黒髪の少女。

 髪は片側だけをおさげにしたサイドテール。

 ぱっちりとした大きな瞳に、どこか小悪魔めいた愛らしい顔立ち。

 背丈は低く、一見すると年齢よりも幼く見える。

 しかし、その華奢な印象とは裏腹に、

 薄着の隙間から覗く肢体は驚くほど女性らしい。


 くびれた腰。

 豊かな胸元。

 すらりと伸びた脚。


 飾り気のない服装でありながら、その抜群のスタイルは隠しようがない。

 可憐な少女らしさと成熟した色香を併せ持つ美少女。




 もう一人はアリーシャと呼ばれていた17、8歳ほどの茶髪の少女。

 活動的な印象を受けるショートヘアに、170cm近い長身。

 程よく鍛えられた身体は無駄な肉がなく、アスリートのように引き締まっている。

 切れ長の瞳と整った顔立ちには凛とした気迫があり、

 ただ立っているだけでも周囲を威圧する雰囲気を放つ。

 しなやかな筋肉を纏ったその姿は、

 獲物を狙う大型の肉食獣を思わせる。

 美しさと強さを兼ね備えた、まさに女戦士と言った印象を受ける。




 共に魅力的な少女達だが、

 言い争っている内容は実に低俗。

 明らかに男の取り合いである様子。



 周りの少年たちは遠巻きに見つめるのみ。

 囃し立てもせず、どこか彼女達に遠慮しているような雰囲気。

 どうやら少年達の中でもあの少女2人は特別な立場にあるのだろう。


 しかし、人目があることには変わらない。


 だが、イーリャは周りを気にすることなく、

 女性ならではの刺々しい言葉をアリーシャにぶつける。



「貴方みたいな筋肉がついた男女、最初からブルーワの好みじゃなかったのよ」


「違う! ブルーワは私のこと……、可愛いって……」


「アハハハハ、そんなお世辞に決まっているじゃない。狩りについて行ける女が貴方だけだから、我慢しているだけよ!」


「嘘をつくな!」


「抱くにはゴツゴツし過ぎて気持ち良くないって……、ブルーワは言っていたわ」


「このっ!」



 イーリャの言葉に、アリーシャが激高。

 掴みかかろうとするが、イーリャは意外な程、

 素早い体捌きを見せて後方へと下がり、

 ズボンにぶら下げた小袋に手を突っ込み、

 ナニカを取り出そうとしたところで、



「2人ともやめて!」



 両者の間に割って入った女性が1人。

 

 

「同じチームの仲間でしょう? 何で喧嘩しているの!」



 割って入った女性はイーリャ、アリーシャよりも幾分年上。

 二十歳前くらいだろうか?

 赤みが強いオレンジブロンドの髪を後ろに束ねただけの髪形。

 少し垂れ目で優しそうな顔立ちだが、今は喧嘩の仲裁の為か緊張で固く強張っている。

 擦り切れが目立つ簡素なワンピースにエプロン姿。

 おそらく家事の途中で駆けつけてきたのであろう。

 

 決して気が強そうには見えないが、

 それでも一歩も引かない態度で2人の間に立ち、

 両者に向かって矛を収めるよう説得。



「イーリャ! 貴方は挑発し過ぎよ! ブルーワに気に入られたのは分かるけど、そこまでアリーシャを扱き下ろす必要は無いでしょう!」


「……………私は本当のことを言っただけよ」


「それをわざわざ本人の前で言うのは、デリカシーに欠けるのではないかしら?」


「アリーシャが突っかかってきたからでしょ」


「それでも言い方があるわよね? 貴方の発言そのまま、ブルーワに聞かれたら、彼はどう思う? 寝物語で漏らした愚痴を、当の本人に告げ口する貴方へどのような印象を持つと思う?」


「……………」


「アリーシャもよ! 男を取られて腹が立つのは分かるけど、取った相手を詰めてもしょうがないでしょ! しかも暴力を振るおうなんて………、女なら女の武器で戦いなさい!」


「分かったよ……、ポーラさん」



 割って入った女性に窘められ、2人して気まずそうに下を向いて黙り込む。

 イーリャもアリーシャもこれ以上争うつもりはない様子。


 やがて、互いに一瞥を加えた後、

 アリーシャは毅然とした態度を保ちながらビルの中へと入り、

 イーリャは拗ねたような顔を見せ、その場を逃げ出すように離れていった。


 そして、残った女性……ポーラは、そんな2人を見送った後、

 大きなため息を一つつきながら独白。



「何で、仲良くできないのかしら……、こんなスラムだからこそ、皆が協力し合わないといけないのに……」



 誰に聞かせるでもない呟き。

 当然、返事は無く、スラムの荒んだ風が掻き消していくだけ。


 ポーラの束ねた髪を風が小さく揺らす。

 哀愁を漂わせながら小さく溜息をつく彼女の耳に、



「ケラケラケラ! なんだ~、もうおわっちゃった~?」



 甲高く軽薄な声が届いた。



「つまんな~いの~、アリーシャとイーリャの殴り合いが見られると思ったのに~」



 声の主はイーリャよりも2,3歳年下の少女。

 先ほどまでの女同士の争いを面白がるように登場。


 ポッテン、ポッテンと、ステップを踏みながら、

 交互に足を交差させるおかしな歩き方で。

 傍から見ればまるで酔っ払いのよう。


 また、おかしいのは歩き方だけではなく、


 青く染めた髪を何本も捻じっておさげにし、

 その先端にネジや釘を括りつけた奇妙な髪型。

 まだ幼さが残る顔に、ベタベタとおしろいを塗りたくった厚化粧。

 唇には血のようにヌラヌラした口紅を施し、

 大口を開けて笑う度にチラリと見える歯はすべて眩く輝く金色。


 少女と言うにはあまりに異形。

 サイケデリックな魅力がないとは言えない。

 見る者が見れば、美しさを感じる者もいるだろう。

 しかし、大多数の人間は目を背けたくなる異相と言える。


 だが、そんな奇抜な少女の姿も、

 見慣れているポーラからすれば、

 何の遠慮もする必要が無い相手。




「ナスカ! 貴方………、なんてこと言うの!」


「ケラケラケラッ! なによ~、良い子ちゃんのポーラさ~ん?」



 明らかに両者の争いを期待するような物言いに

 ポーラはキッと眉毛を吊り上げ、声の主……ナスカをしかりつける。


 しかし、ナスカは動じず、ケラケラと笑いながら反論。



「このチームはブルーワが絶対! ブルーワに気に入られるために女同士が競い合うのは当たり前でしょ~。アンタだって、ブルーワに抱かれるときは良い声で鳴くじゃな~い? 権力者へ自分を魅力的に見せようとするのは女の本能! そして、他の女を陥れ、蹴落とし、自分だけを見てもらおうとするのもね!」



 ドギツイ持論を悪びれもせずに宣うナスカ。

 ある意味、それはこのチームの一端を表していると言っても良い。

 

 チームブルーワは、リーダーであるブルーワの独裁政権。

 かつて権力を争うライバルもいたが、全員、いつの間にか姿を消していた。


 恵まれた体格に、天性の格闘センス。

 計算高く、目端が利き、悪辣なまでに他人を利用する術に長けた謀者でもある。

 何より、敵の力量を見抜く洞察力に秀でており、勝てない敵には決して歯向かわず、勝てる土台を作り上げてから挑む慎重さを備える。



 彼が前身であるスラムチームを乗っ取り、『チームブルーワ』を設立したのは2年前。

 1年近くナンバー2の座に甘んじ、当時のリーダーの補佐役に徹していたが、全幅の信頼を得たタイミングで隙を見て闇討ち。

 以降、チームブルーワのトップとして権勢を振るってきた。


 後ろ盾である征海連合の覚えも目出度く、いずれスラムを出て一旗揚げるのは確実だと思われている。


 それだけにブルーワの寵愛を得たいと思う女性は多い。

 イーリャ、アリーシャもそんな少女達の1人なのだ。


 そして、ポーラもブルーワの温情に縋る以外に道は無く、

 このナスカもブルーワの腹心として忠誠を誓っている。



「ナスカ………、貴方………、もしかして、イーリャのことをアリーシャに……」



 先ほどのナスカの発言。

 イーリャがブルーワと寝たという情報をナスカがアリーシャに告げ口したのではないかとポーラは推測。


 対して、ナスカは直接的には答えずニヤリと笑う。

 

 それは幼い少女にしてはあまりに邪悪な笑み。

 悪魔が陥れた人間を前に嘲笑うがごとく。



「ケラケラケラケラッ! さあね~! どこにでも出歯亀がいて、どこにでも噂好きの街雀がいるんだよ~ ケラケラケラケラッ!」



 現れた時と同様、ナスカは甲高い声で笑いながら、その場を去る。

 相変わらず酔っぱらったような足取りで。



 ポッテン、ポッテン、ポッテン……



 お道化たように、

 お遊戯のように、

 見えないナニカと踊っているかのように。


 周りにいるチームブルーワのメンバー達も、

 このナスカには、怯えるような目を見せる。


 黙って道を開け、決して関わり合いになりたくないような……

 そんな雰囲気が感じられる。


 周りの皆が恐れを見せる中、

 チームブルーワの謀略を担う『金喰カラス』のナスカは、

 意気揚々とスラムの街並みへと消えていった。




「…………」



 ポーラはナスカが去った方向と、

 イーリャが駆け出して行った方向、

 そして、アリーシャが入っていったビルの入り口を順番に見つめ、



「なんでこうなっちゃったのかな……、昔みたいに皆が仲良くなれないのかな……」



 今にも泣きだしそうな不安に満ちた表情。

 常人の感性からすると、至極当然であろう。


 だが、彼女には成す術が無く、

 ただ、流れるままに身を任せるしか手段がない。



 このチームブルーワを大きく変えようとするなら、

 それ以上の力を以ってでしか変えられないのだ。




 やがて、ポーラは寂しそうに小さく肩を落とし、

 自身の居場所であるビルの中へと戻っていった。






 フルフル


 瓦礫の陰から様子を窺っていた白兎が耳を揺らす。


フリフリ

『どうやらここが【チームブルーワ】の拠点で間違いないようだね』



 彼女たちの口から『ブルーワ』の名前が何度も飛び出してきたのだから間違いあるまい。



 ピコピコ

『出てきた女の子達………、イーリャ、アリーシャ、ポーラ、だったね。その3人はヒロイン候補リストに入れておこう。あと、あのナスカって子はどうしようかな~……』



 しばし悩んでいた白兎だが、

 まあ、一応、女の子なのだから入れておくかと適当に判断。


 後でまとめてマスターへと提出するべく晶脳内にてリスト化を行う。


 特徴やアピールポイント、ステータスなんかも割り振って……



 そうした作業を行いながらも、

 白兎は素早く近くの物陰へと飛び移り、

 次の場所へと移動を開始。


 ヒロイン探しの旅は、まだ始まったばかり。

 今日中にあと3つくらいのチームは調べておきたい所。



 そして、白兎が物陰から物影へと移っていく最中、



 パタ?

『あれ? あの子………』



 この場から離れたはずの少女……、イーリャを発見。


 建物の影に隠れるように立ち尽くし、

 ナニカを握り締めて祈っているかのようなポーズ。



 白兎は見つからないよう、静かにその場を通り過ぎようとした時、




「ナインテイル様……、見守っていてください。必ずイーリャは幸せになってみせます……」




 そんな呟きが白兎の耳に飛び込んできた。





<白兎のヒロインチェック・チームブルーワ>



①イーリャ

美貌   A

スタイル A

性格   D

特技   ?

厄ネタ  A?

白兎の一言「魔性の女だねえ。マスターが手玉に取られそう。あと、おそらく厄ネタ持ち」



②アリーシャ

美貌   B+

スタイル C

性格   C

特技   戦闘

厄ネタ  E

白兎の一言「男勝り系かな。強がっているけど多分チョロい」



③ポーラ

美貌   B

スタイル B

性格   A

特技   家事

厄ネタ  D

白兎の一言「優しい人みたい。マスターのこと、甘やかしそう」



④ナスカ

美貌   C

スタイル D

性格   E

特技   謀略?

厄ネタ  B

白兎の一言「正真正銘変人なのか、それとも変人を装っているだけなのか……」



次の更新は6月6日(土)になります。

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― 新着の感想 ―
これまで出会ってきたヒロのヒロイン候補の厄ネタ度も知りたくたってきた 露ちゃんとか
ブルーワは前回は壊滅して酷い目にあってたよな キャラの情報出たならあまり酷いことになってほしくはないけど イーリャにまさかの深掘り、でも納得するわ
>貧しくても優しい心を忘れない薄幸の美少女 テネルでいいじゃん?
感想一覧
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