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白兎と始めるアポカリプス世界冒険譚(闘神と仙術スキルを携えて)  作者: クラント


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34/55

35話 依頼



 シャワーを浴びてさっぱりすると少しばかり気持ちも安らいでくる。


 ふう………

 異世界に来て5日目。

 なんと濃い5日間だったか。


 前の世界では何となく月日が過ぎていったが、この世界に来てから1日の刺激が多すぎる。

 何せ分からないことが多すぎるし、危険なことも一杯ある。

 ようするに慣れていないんだろう。この世界と自分の力に。



 自分が目指しているものへたどり着くためには、どのようにしたら良いのかがよく分かっていないから、余計に不安が増してしまう。




 目指すものは『豪華で安定した生活+メイド+ハーレム』。




 そこにたどり着くためには金が要る。

 金を稼ぐためには狩人が近道だ。

 しかし、狩人になる為にはどうしたら良いのか?


 すでに狩人レベルの実力は手に入れている。

 ただ、知識は全く足りていない。


 知識を学ぶためにはどうしたら良いのか?


 師匠に学ぶ? その師匠はどうやって探すんだ?

 そもそも師匠が見つかってもソイツが信用できるとは限らないだろう。

 それに、いまさら弟子生活に耐えられるのか、俺?


 体育会系は俺の最も嫌うものの一つだ。

 それが何年も続くなら耐えられるわけがない。



 さて、どうするかな?


 

今後のことについて頭を巡らせる。

だが、俺一人で考えられることなんて限界がある。


 ネット小説であれば、主人公にアドバイザー的な存在が一緒にいてくれて、助言や道しるべを示してくれたりすることが多かった。


 今の俺で言うなら白兎がソレに当たる。


 残念ながらこの世界の知識は持ち合わせていないようだが、信頼できる相談相手としては十分。

 何より俺のことを一番に考えてくれる忠誠心がありがたい。

 少しばかりおちゃらけた所はあるけれど、要所要所でフォローしてくれる等、サポート力が高く、俺の足りない部分を補ってくれている。

 

 

 やっぱり白兎にその辺を相談してみるか……



 俺はこのままこのチームにいた方がいいのか?

 それともここを飛び出して、狩人の仕事を実践で覚えていくべきか?



 少しばかり、正解を見つけるのが怖い、と思うこともある。

見つけてしまって行動せざるを得なくなるのが嫌なのだ。


 何せ、前の世界での俺の座右の銘が「保留」と「現状維持」だったからなあ。





 そうやってシャワーを浴びながら思考の海を漂っていると、

帰ってきたらしいトールと子供達がシャワー室に入ってくる。


 んー。男の子だけか。

 まあ、女の子がわざわざ一緒には入らないか。


 なんか、子供達がいつもより大人しいな。

 もっと騒ぎながら入ってきてもおかしくはないんだが。



「あ、ヒロ。やっぱりここにいたんだ。今日は戻りが早いんだね」


「トール。おかえり。まあ、いつも早く帰ろうとはしているんだが」


「良かった。今日は心配しないで夕食を食べることができそうだよ」


「気を付けるよ。これ以上心配を増やして、トールが老け込んでもしまわないように」


「それよりサラヤにしかめっ面をさせないようにしてよ。」



 俺と軽口をたたき合いながら、トールは子供達にきちんと体を洗うよう指導している。



 あ、そうだ。ザイードって子を探さないと。



 多分あの子かな?

 シャワーで頭を洗っている。

 デップ達より少し上くらいだけど、子供に混じって仕事をしているのか。


 確か、カロリーメ○トをなかなか受け取ってもらえなかった子だな。

 ちょっと反抗心が強そうだ。直接話しかけるより、誰かの仲介を頼んだ方がいいかもしれない。



「ねえ、トール。ザイードって子はあの子かな? 機械種について詳しいって聞いているけど、間違いない?ちょっと機械種について教えてほしいことがあるんだ」


「ザイードかい。あの子で間違いないよ。手先が器用で整備の知識を持っているから、機械関係を任せているんだ。貴重な技能持ちだね。だから手を怪我させないように『砂さらい』や『草むしり』をメインに仕事をしてもらってる」



 ふうん………

 あの子がデップ達のように狩りに出ない理由はそれか。

 確かに手に職は大事だな。



「ザイードに話を聞くんだったら、僕からお願いした方がいいかもね。ちょっと人見知りの気があるから」


「おお、そうか。頼むよ」


「でも、その前にちょっと僕の話を聞いてほしいんだけど。いいかな、ヒロ」


「え、別に構わないけど……」



 んー。何だろう? 

 多分先ほどのサラヤ達の件かな。

 情報が早いなあ。



「じゃあ、シャワーが終わったら1階へ降りよう。そこで話すよ」


「りょーかい」



 トールはチーム内の調整役もやってそうだし。

 メンバーの仲を取り持つのも仕事のうちなのか。







 シャワー室から出て、トールと1階に降りる。

 いつもの男子部屋を通り過ぎ、奥の方の薄暗いフロアまで連れてこられる。


 ここまで来るのは初めてだけど、こっちの方は大分壁や床が傷んでいるな。


 壁や床のあちこちにひび割れができており、天井の灯りもほとんどが壊れていて点灯していない。


 一番奥の行き止まりにある大きめの扉を開けて、中に入ると、そこは車が10台くらい止められそうな駐車場のようなスペースが広がっていた。


 ただし、床には大きいひび割れや陥没した穴が開いており、明らかに平面になっておらず、ここだけが廃墟にあった建物のような雰囲気だった。



「ここは何なの? ビルの駐車場だったように見えるけど」


「その通り、駐車場だったところだよ。5年位前までね」


「5年前まで? 何かあったのか?」


「僕が入るちょっと前だけど、他のチームからの襲撃があったらしいよ。それまでは車が1台止めてあったそうだけど、その際に壊されてしまったんだって」


「襲撃かあ。やっぱりあるのか? 他のチームから攻撃されることって」


「チームに戦力があれば襲われる可能性が低くなる。逆に戦力が低下すれば襲われることだってありうる」


「戦力……」


「チームトルネラの戦力は、ボスを除くと、今までジュードとディックがメインだったんだ。それが2ヶ月前にディックが大怪我をして戦力外になってしまった。僕らはできるだけそのことを隠してきたんだけど……、流石に2ヶ月もディックが姿を見せなければ、そのことを不審に思うチームも出てきてしまう」



 ディックさんか。確かにあのガタイだったら威圧効果抜群だったろうな。



「この拠点にはボスがいるから、ここを狙われる可能性は低いと思う。何せ5年前に襲撃された時はボスが大暴れしたそうだからね。でも、ここから外に出てしまうとボスの威光も届かなくなる。ここにヒロを呼んだのも、その件を話し合いたかったんだ」



 なんだ。サラヤのことじゃなかったのか。

 俺にその戦力になってほしいとかそういうことかな。



「ヒロ。できれば明日の砂さらいに着いてきてほしいんだ。正直僕一人では子供達を守るのに何の役にも立たない。ヒロは強いのだろう? その力を貸してほしいんだ」



 トールは珍しく真剣な目で俺を見つめている。

 コイツには世話になったから、多少のお願いを聞くのは吝かではないが……



「明日だけでいいのか? 一日くらいならいいけど、俺も獲物を狩ってくる必要はあるし」


「明日だけでいいよ。チームにジュード、ディック以外の戦力があるってことが分かれば危険はなくなるはずだから」


「一つ質問。その言い方だと、明日、俺が戦力を見せつけるような事件が起こることが確定しているように聞こえるけど、なぜ?」


「実は……」



 トールが少し言いにくそうに口ごもる。

 珍しいな。いつもズバズバと言う癖に。



「『砂さらい』の場は日でチームの割り当てが決まっていて、今日と明日がチームトルネラの割り当てられている日なんだけど……、今日、『黒爪』の連中が押しかけてきて、明日は自分たちが使うから、明日は来るなって言ってきたんだ」



 おいおい。

 それってヤクザのシノギの奪い合いじゃないか?


 しかし、『黒爪』かあ。

 いかにもアウトローっぽい名前。

 暴走族みたいだな。



「『砂さらい』はスラムの中では危険がほとんどない割の良い仕事なんだ。それを他のチームに取られてしまったら大変なことになってしまう。チームトルネラの戦力が下がったと見られて、周りのチームが一斉に襲いかかってくるかもしれない」



 普段顔色が良いとは言えないトールだが、

 今日はいつにもまして青ざめており、事態の深刻さを物語っている。


 聞けば、割と大事っぽい話。

 何気にチーム存亡の危機じゃないだろうか?



「トール、このことはサラヤには伝えたのか?」


「まだだよ。ある程度こっちで解決の見込みも一緒に伝えないと、サラヤに負担をかけてしまうからね」


「あと、何人くらい来そう? その『黒爪』ってのは」


「今日は3人だった。だから明日も3人くらいじゃないかな。こういうのはグループ単位で動いているだろうし」


「どのくらいまでやるんだ。半殺しか、再起不能か、それとも……」


「いやいや、何を言ってるの! ヒロの持ってる銃で脅してもらうくらいで十分だよ。流石に3人相手に喧嘩はできないだろ。相手も銃を持ってくるかもしれないけど、こっちに銃があることが分かれば、きっと無理はしてこないはずだから! 脅すだけでいいんだよ! 脅すだけで!」



 トールは血相を変えて、何度も『脅すだけで十分』と念押し。

 過激すぎる俺の言葉に面食らった様子。

 


 なんだ。脅すだけなのか。

 まあ、銃があれば普通ビビるわな。


 ……………え。銃?



「女子供が持っても効果は薄いしね。僕もこんな手じゃなければ銃を扱えたんだけど……ヒロ? どうしたの」



 ああああああああ。銃はあるのだけど……銃じゃないんだ。

 うううううううう。まあ、脅すだけなら銃として使えなくても大丈夫か。

 ……………大丈夫だよね?



「オッケー。任せとけ。しっかり護衛役を務めてやるよ」


「ありがとう。じゃあ、夕食が終わったらサラヤの所へ報告へ行こう。ザイードへの紹介はその後でもいいかい?」


「ああ、いいよ。そんなに急ぎでもないしね」



 安請け合いしたかなあ。

 いや、トールには世話になってるし。

 これくらいは構わないか。







 夕食ではいつものシリアルブロックの他に緑色のブロックが添えられていた。

 ただし、大きさがシリアルブロックの3分の1くらいしかないが。



「今日はベジタブルブロックを食べる日よ。しっかり食べてビタミンを取ってね。今回はいつもみたいにシリアルブロックを減らしたりしてないから、お腹いっぱい食べられるわよ」



 サラヤが食堂でみんなを前に話をしている。



「これも、ヒロやジュードが獲物を狩ってきてくれたおかげよ」



 みんなの視線が俺やジュードに集まる。

 うーん。ムズ痒い。


 それも食事が始まるまでだ。みんなは食事に夢中になる。




 これがベジタブルブロックか? あると思ったよ。

 これが野菜の代わり何だろうな。一応栄養の知識は広まっているようだ。


 シリアルブロックやビーンズブロックだけでは、炭水化物とタンパク質しか取れないしな。


 皿に乗っているベジタブルブロックを摘み上げる。

 外見は緑色のちょっと生々しい長方形の物体。

 まあ、みんな食べているのだから、食べられるのだろうけど。


 周りを見ると、ベジタブルブロックはあまり美味しそうに食べられているように見えない。

 皆、シリアルブロックは美味しそうに食べているのだが。



 とりあえず一口齧ってみる。


 う、苦い! 青臭い!



 こ、これは、まるでピーマンを生で齧ったような苦さ。

 しかし、触感は瑞々しさが消えた胡瓜のようだ。

 いくらビタミンの為とはいえ、好んで食べたいとは思わないぞ。


 しかも、結構後味が口の中に残る。

 これは現代日本の子供だったら絶対食べないだろう。

 でも、流石にスラムの子供たちにお残しするような奴はいない。



 ん……、今気づいたけど、年齢によってシリアルブロックの大きさを変えているようだ。


 子供たちの皿に乗っているブロックは俺のより明らかに小さい。


 そりゃそうか。10才未満と15才以上じゃ、必要なカロリーも違う。


 こういうのは食事担当のナルがやっているのか。

 それはデップ達がナルに逆らえないのも当然か。

 食事を減らされたりしたら大変だ。



 水で口の中を洗い流しながら、そんなことを考える。



 ふう、次はシリアルブロックを食べないとな。

 俺はこのチームにいる間はずっとこのブロックを食べないといけないのか。


 現代物資で取り寄せられる昼飯ぐらいしか美味しいモノが食べられない。

 あと、そろそろカレーが食べたい。






 

 俺にとって苦痛の夕食が終わると、トールと一緒にサラヤの所へ報告に行く。


 場所はいつもの2階の応接間だ。

 トールから説明してもらい、明日俺が護衛に着くことをサラヤに了承してもらう。



「『黒爪』かあ。そろそろ仕掛けてきそうだったけど。やっぱり来ちゃったかあ」



 サラヤは頭をボリボリ掻いて困り顔。


 たまにおっさん臭くなるな。

 そんな飾らない部分も彼女の魅力なのかもしれないが。



「今回の件は、こちらの戦力を探ることがメインだと思うよ。ディックが出てきたら大人しく下がるだろうけど、ジュードが来たら、その場は退散して、後で外に出てるメンバーを襲撃するかもしれない。こちらの稼ぎ頭を護衛に回さざるを得ない状況を教えるみたいなものだからね」


「だからヒロなのね。こちらにはジュード、ディック以外の戦力がいることをアピールする為に」



はあ……っとため息をついてサラヤがソファにもたれ掛かる。



「せっかくハイエナを狩れるメンバーが増えたぞってアピールしたのに、効果なかったのかな」


「うーん。それは流石に信じられなかったんじゃないかな。それよりもずっと保管していた虎の子を出すまで状況が悪化していると取られたのかも」


「ああ、それはありえるわ。これは私の判断ミスかなあ」

 

「これも結果論だよ。遅かれ早かれ避けられないことだから、サラヤは気にすることないさ」


「ごめんね。ヒロ。私の尻拭いさせちゃって。この埋め合わせは必ずするから」


「ああ、別にいいよ。さっきトールも言っていたように避けられないことなんだろ。あ、もし、埋め合わせしてくれるんだったら今日みたいなことは止めてほしい」



 『今日のこと』というのは、事前に相談も無く、いきなり女の子2人を紹介されたこと。


 ただの自己紹介じゃない。

 明らかにお見合いのようなセッティングの形だった。



「別に俺は女の子を紹介してくれ、なんて頼んでいないからね。勝手に気を回されるのは、はっきり言って迷惑」



 ああいったことを勝手にやられるのは大嫌い。

 だから、やられたら嫌なことを正直に伝える。



 すると、サラヤの顔に陰りがさす。

 明らかに、『それは勘弁してほしい』という顔色。



 そんな顔されてもなあ。

 トールは意味が分からず俺の方を見てくるが、俺に引くつもりはないぞ。



「あ、あの、ヒロ。もう絶対しないって約束するけど……できたらテルネにだけ、もう一回会ってもらえることってできないかな。あの子、あの後、かなり落ち込んじゃって。でも、今、ヒロのナップサックの修繕を頼んでいるの。それが仕上がったら、ヒロにもう一度会えるって思ってるから……」



 え、それ、俺に何か関係があるの?

 そりゃ、ナップサックの修繕はありがたいけど。



 俺が少々納得いかなさそうな顔を見せると、

 サラヤは真正面から必死な顔で懇願。



「お願い! もう一度だけでいいの。テルネに会ってくれない?会って2,3会話をしてくれるだけでいいから。それ以上は求めないから……」



 いや、求められても困るだけだ。


 サラヤが俺に頭を下げてお願いしている。


 また、トールも『僕からもお願いする』と横から口添え。

 俺とサラヤの会話から何となく事情を把握したのであろう。

 トールならば当然の行動。

 


 うーん。どうするか………


 まあ、俺がお世話になっている2人が頼んできているのだから、

 あのテルネって子に、もう一度会って話をするぐらいはいいか……




「分かったよ、サラヤ。1回だけだからね。あと、何回も言うけど、今回のようなことは絶対にしないって約束して」


「ありがとう。ヒロ。もう、絶対あんなことしないから約束する!」 



 下げていた頭を上げて喜ぶサラヤ。

 ほっとした様子を見せるトール。



 俺にとっては面倒事が増えるだけだが、

 それで人間関係が上手く行くなら、我慢するしかない。


 そういった所は異世界でも元の世界でも変わらない。

 人間が集団の中で生きていく以上、多分、避けられないことなのであろう。

 

 


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