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白兎と始めるアポカリプス世界冒険譚(闘神と仙術スキルを携えて)  作者: クラント


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35/55

35話 説明



 サラヤとの話が終わると約束通り、

 トールがザイードとの仲介をしてくれた。


 1階の物置のような部屋でトール立会いの元、

 ザイードと向かい合うこととなった。



 部屋の大きさは7、8畳くらい。

 棚が所狭しと幾つも並べられている。

 まるで自動車工場の部品庫のようにも見える。

 



 おおっ!

 でかい亀の甲羅みたいなものが置いてある。

 あれは盾なのだろうか?


 あっちにはドリルっぽい部品が転がっている。

 そして、向こうにはSFっぽい装置なんかも……

 これは一度この部屋を色々探索してみたい………


 いやっ! 

 これから機械種についてザイードに教えてもらうんだろ!

 童心に帰ってどうする!



 軽く頭を振って、好奇心をふるい落とし、

 心を落ち着けてから、ザイードへと視線を移す。




 椅子の代わりの木箱に座って、お互いが向き合う形だ。

 トールはやや離れた位置に座り、俺達の様子を見守っている。



 ここは俺から自己紹介をするのが無難だな。



「えっと。ヒロです。時間を取ってくれてありがとう。ザイード君だね。サラヤから機械種に詳しいって聞いたんだ。色々機械種について教えてほしい」



 目の前に座るザイードはちょっと座り気味の目で俺を見つめている。


 色の薄いやや灰色に見える黒髪、背はデップ達と変わらない。

 あんまり日に焼けておらず、色白で不健康そうな感じ。

 なんとなく陰キャラのオタクのイメージ。

 コミュニケーションが得意なタイプではないだろう。


 しかし、俺が初手で挨拶をすると、

 意外にも好意的な反応が返ってきた。



「僕に美味しい物をくれた人ですよね?」


「あ……、ああ、そうだよ」


「あの時はありがとうございます。あまりの美味しさにびっくりして、きちんとお礼も言えませんでしたから」



 どうやら前にカロリーメイ〇を振る舞った件を覚えてくれている様子。

 やっぱりあそこで大盤振る舞いしておいて正解だった。

 以前はギッって睨まれたけど、今は少し視線も柔らか目だ。



「僕に分かることでしたら、答えますけど。でも、ヒロさんって中量級の機械種ハイエナも狩ったんですよね。そんな人に僕が教えられるようなことがあるのかなあ」


「いや、あれは拾っただけ………運が良かったんだよ。それに俺は全くっていい程機械種について知らないんだ。さっきの中量級っていうのも今日、ボスから教えてもらって初めて知ったくらいだよ」



 俺の発言にちょっと訝し気な雰囲気で顔を顰めるザイード。

 そんなに目を寄せると余計に鋭さが増してしまうぞ。

 とにかく質問をしよう。



「まず、教えてほしいんだけど、機械種って一体何? なんで人を襲うの?」


「えっ………」



 俺の質問にザイードが面食らったような顔。

 細めの目が真ん丸に開いて、口をポカンと開けた表情。



 ああ………、これは絶対、何言ってんだコイツって思ってるな。



 この世界では常識かもしれないが、

 俺が知らないんだからしょうがないだろ!


 しかし、ここまで驚かれるということは、

 やはり機械種についてのことは子供でも

 知っているような常識なのであろう。


 さて、ここからどうやってザイードから情報を引き出すか……




「ヒロ、ちょっと待って」



 俺の後ろに座っていたトールが声をかけてくる。



「ひょっとして、ヒロって、『赤の帝国』とか、『白色文明』とか知らないのかい?」


「お恥ずかしながら、全く聞き覚えがない……」



 振り返ってトールへと正直に打ち明ける。

 ここで変に見栄を張っても仕方がない。

 

 だって、知らないことは知らないのだから……


 多分、前の世界で『江戸時代ってなに?』『織田信長って誰?』とかをいい大人が質問してきたようなものなのだろうな~



「うーん。ザイード、その質問だったら僕が説明するよ。いいかい、ヒロ?」


「もちろん。じゃあ、よろしく」


「まあ、とりあえず、簡単に歴史を説明すると、まず、300年程前まで『白色文明』と言われる非常に人類が栄えた時代があったんだ。人間が多くの機械種を従えて、正に地上の楽園だったとも言われている。でも、ある日を境にそれが崩壊した」



 そこで言葉を区切ってトールは俺の反応をみる。


 大丈夫。全く知らないことだ。

 そのまま続けてくれたまえ。


 俺に促されて、トールは話を進める。



「赤の女帝が生まれたんだ。それがどのような存在なのかは分からない。でも、彼女はあっという間に自分に従う機械種を作り出し、人類に戦いを仕掛けた。当然、人類側も機械種をもって抗戦したんだけど、人類側の機械種の大部分が赤の女帝に寝返ってしまい、戦線は崩壊。瞬く間に蹴散らされて、白色文明は終わりを迎えてしまう。残された人類は周辺に散り散りになって、今では小さな国レベルの集落が乱立しているような状態になってしまった」



 赤の女帝とやらが魔王みたいなもんか。

 多分、原因はコンピューターの反乱だとは思うけど。



「赤の女帝は大陸の中央に自分達の帝国を作り上げた。それが『赤の帝国』さ。そこには人類は一人もいない。赤の女帝の人類を抹殺せよという赤の威令「レッドオーダー」に従う機械種が何億体もひしめいていると言われている」



 レッドオーダーか。

 なるほどね。

 赤の女帝とやらからの命令で機械種は人間を襲っているのか。

 でも、なぜこの街で見た機械種は人間を襲わないのか。


 機械種の白兎だって俺に従ってくれている。

 人間を襲う機械種……レッドオーダーと、人間に従う機械種にどんな違いがあるのだろう?



「ヒロ、今、なんでこの街にいる機械種は人間に従っているのかって疑問に思っているね?」


「うえっ!?」



 俺の頭に浮かんだ疑問を見抜いたかのような発言。


 トールは俺の驚く様子を見て得意顔。

 嬉しそうに笑みを浮かべながら解説を続ける。



「それには理由があるのさ。赤の帝国から発せられるレッドオーダーは大陸に隈なく届いているけど、人類はそれに対抗する手段を作り出した。それがこの街の中央にそびえ立つ『鐘』と、レッドオーダーを打ち消す『蒼石』、そして、レッドオーダーを上書きすることのできる『感応士』だ」



 『鐘』、『蒼石』、『感応士』か。

 全部前に出てきた単語だな。

 特に『蒼石』について詳しく教えてほしい!


 興味深い話に少々俺は前のめり。


 しかし、トールの話はここで終わり。

 自分の役目は終わったとばかりにザイードへと話を振る。



「まあ、僕からはここまでかな。ここからは僕より詳しいザイードが説明しました方がいいね」


「あ、はい。えっと……『鐘』と『蒼石』、『感応士』について詳しい説明すればいいですか?」



 ここでザイードの出番らしい。

 まだ子供なのに、トールよりも詳しい話ができるということは、

 よほど専門的な勉強を行ってきたのだろう。


 俺の敬意を以って傾聴せねば!



「おお、ここからはザイード先生からのご講義ですね。よろしくお願します!」


「『先生』だなんて……、別にそこまで持ち上げなくてもいいです……、えっと、鐘はですね、正式名称は『白鐘』っていいまして、レッドオーダーの影響を受けた機械種が近づけないようにする白色文明の遺産です。強い機械種ほど、この白鐘の影響を強く受けるので、白鐘を設置した街は強い機械種が近づけなくなります。それだけじゃなくて、この『白鐘』の影響下では、ブルーオーダーの機械種も意味のない破壊活動や、相手を殺すような攻撃ができなくなるそうです」



 なんと! そのような仕組みになっていようとは……


 確かに、何の制限も無しに、あんな暴力の塊みたいな機械種がひしめき合っていたら、普通の人間は怖くて近づけないよな。

 おかしな奴が自分に従っている機械種に『この場にいる人間を皆殺しにしろ』なんて命令したら、それだけで大量虐殺の現場になってしまう。


 しかし、気になるのは、その『白鐘』の影響が『どこまで効力があるか?』ということ。


 相手を殺すような攻撃ではなく、殴る蹴る程度ならできるのか?

 殺すのは駄目で怪我をさせるぐらいなら大丈夫なのか?


 この辺りは、街中で白兎と一緒に行動するときのことを考えて、ぜひ、知っておきたい所。

 けれども、あまり根掘り葉掘り聞き過ぎて、俺が機械種を連れているのか、と疑われるのも困る。

 

 知りたいけど、聞き方が難しい。

 ザイードのことをあまり知らないだけに、

 どこまで突っ込んで聞いていいのやらが分からない。


 俺が悩んでいる間にも、ザイードの説明は続く。

 聞き逃すわけにはいかないので、今は聞く方に集中せざるを得ない。



「人が集まっている集落には必ず『白鐘』が設置されています。これがないとあっという間に機械種に侵略されてしまうので。ただし、白鐘にも弱点があって、弱い機械種には効果が薄いんです。その為、超軽量級の機械種……、まあインセクトなんですけど、割と街の近くまで出現します。あと、維持に大量の晶石が必要となります。そして、機械種が作る『巣』に周りを囲まれると白鐘の影響力が減少し、最終的には無効化されます。そうなったら街は機械種に襲いかかられて壊滅してしまうので、これらを何とかするのが、狩人の仕事なんです」



 なるほどね。これが街に壁が無い理由。

 そして、ここで狩人の仕事につながるのか。



 しかし、『巣』ねえ………

 なんかダンジョンみたいなヤツなんだろうな。

 絶対に最下層にはボスがいるに違いない。



「えー。白鐘についてはこれくらいです。専門じゃないので、一般的な常識レベルの話でしたけど………、では、次は蒼石についての説明です」



 ザイードは『白鐘』についての説明を締めくくり、

 次の蒼石の説明に取り掛かる。



 あ、質問タイムは無しか。

 まあ、全部終わった後に、まとめて質問すれば良いか……



「蒼石ですけど、これは晶石によって作られる対レッドオーダーの兵器みたいなものです。効果はレッドオーダーを打ち消して機械種の素の状態に戻すことができます。これをブルーオーダーっていいます。気を付けないといけないのは人間に従っている機械種にも有効だということです。他人の所有する機械種のマスター登録を抹消してしまうこともできるので、非常に扱いが難しいものなんです。マスター登録を抹消された機械種は『マスター認証待機状態』へと移行し、誰でもマスター登録ができるようになります。こうしたことから、蒼石はレッドオーダーへの有効な武器となる反面、人間同士の機械種の【奪い】合いの原因にもなるんです」



 そう、ザイードが『蒼石』についての説明を終えた時、




『ウバウ?』



 ドクンッ!



 なぜか俺の心臓が強く跳ねた。



『ダレダ? オレカラウバオウトスルヤツハ?』



 俺の腹の底から、ナニカが頭をもたげる。

 強く、熱く、激しい怒りと憎悪に満ち溢れたナニカ。



『コイツラカ?』



 そのナニカが俺の前に座るザイードとトールの姿を捕らえた。



 すると急に彼らに対して殺意が込み上げてくる。

 

 少なくとも同じチームの仲間であるはずなのに、

 なぜか、不倶戴天の仇であるような憎しみすら湧いてくる。



 腕を一振りすれば、

 簡単に2人の首は飛ぶだろう。


 この狭い物置のような部屋はあっという間に血塗れだ。

 実にエキセントリックな模様替えとなるに違いない。



 オレカラウバオウスルヤツハ……

 ドイツモコイツモミナゴロシ………




 いや、違う!

 トールも、ザイードも、そんなことしない!



 残った俺の理性が湧き上がった衝動を否定。

 

 トールには危ない所を助けられたし、

 ザイードには色々教えてもらったばかり。


 当然、恨みなどありはしない。

 殺意を抱く理由などどこにもない!



 腹の底に蠢くナニカを無理やり抑えにかかる。

 全精神力を集中して、理不尽な怒りを鎮めようとする。


 すると、ナニカは急速に勢いを失い、

 その存在を徐々に消していく。


 まるで炎が鎮火するかのように、

 激しい怒りも、強い殺意も、俺の中から消えていった……



 残ったのは、胸にぽっかり穴が開いたような虚無感と疲労感。

 おそらく精神的なモノだと思うが、酷く疲れてしまった。



「ヒロ? どうしたんだい?」


「ヒロさん? 体調でも悪いんですか?」



 俺がナニカに耐えるように歯を食いしばるのを見て、

 トールとザイードが心配の声を上げてくる。



「ああ、ごめん。ちょっと昼間の疲れが出てきて………」 



 急に殺意が湧いてきて、それを抑えていました、なんて言えない。

 それっぽい言い訳でその場を誤魔化す。



「え? だ、大丈夫なのかい?」


「あ………、大丈夫、大丈夫。トール。明日のことは心配するな」


「そ、そうかい? でも………」


「一度引き受けた仕事を投げ出したりなんてしないさ。俺に任せておけ」



 俺の体調が悪いのか、と見てトールが焦る。


 明日、『黒爪』が『砂さらい』の場に押しかけてくるのが確定しているのだ。

 頼りにしていた俺が出てこられないかも、と思えば、焦る気持ちも良くわかる。



 務めて元気良く振る舞って見せて、トールの心配を払拭。

 力強く断言して、ようやくトールの顔色が戻った。



 しかし、ザイード先生による『機械種・その他』の講義はここでお終い。

 

 トールやザイードが今日は早く寝た方が良いと俺に進言。

 

 俺の体調にチームの行く末がかかっているのだ。

 ここで俺を夜更かしさせるわけにもいかないのであろう。




「じゃあ、ザイード、また時間が空いたら機械種についてもっと教えてくれないかな?」


「はい。またいつでも声をかけてください」



 友好的な雰囲気のまま、部屋から出て、3人で会話もなく男子部屋に戻る。


 デップ達はまだ2階の部屋から出てこられないようだ。

 ミートブロックは食べられたのかな?




 毛布を下にひいて寝っ転がる。

 

 俺が寝転んだのを見て、トールが皆に声をかけてから電気を消す。


 就寝にはいつもよりも1時間くらい早いような時間であろう。


 けれども、俺の体調を鑑みて、今日は早めの就寝と相成った。

 



 真っ暗になった部屋で、俺は天井を見上げながら、

 寝入り前の思考に時間を費やす。



 もちろん真っ先に考えるのは、



 『先ほどの衝動は一体何なのか?』



 自分の意識が塗り替えられるような煮え滾る憎悪。

 世話になったはずの2人を殺してしまいかねない激しい殺意。


 元々、俺は誰かに対して激しい感情を抱くタイプではない。

 我を忘れるくらいに怒ったことなど、成人してから記憶にないくらい。


 それなのに、ここまで湧き出す感情を持て余すなんて、

 自分でもなかなか信じられない。



 しかしながら、今の俺の境遇はかつてない程異常なモノ。

 異世界転移、若返り、チートスキル、生活環境の整っていない住居、生まれて初めての命を賭けた戦闘、死の恐怖、初の殺人……


 数えればキリがないくらいの人生初のイベントの数々。

 そうした異常な経験が知らぬ間に俺の心に負担を与えて、情緒が不安定になっている可能性も否定できない。


 急性ストレスによる性格異常。


 医者にそう診断されたら、何の疑問も抱かず納得しかねない。

 そんな病名があるのかどうか知らないけれど………



 まあ、本当にストレスが原因なら、

 生活環境に慣れていけば、いずれ落ち着いていくのかもしれない。

 しばらく様子を見る以外の選択肢は無いだろう。




 一先ずの懸念事項を自分なりに片づけた後、

 次に考えるのは、やはりこの異世界での生き方について。

 


 辿り着いたのがスラムと言うこともあり、

 今の生活環境はあまりに侘しい。


 やはり、情報を集めて、知識を蓄え、金を貯めて、力をつけて、

 このスラムを脱出しなければ、俺の楽しい異世界生活はいつまで経っても訪れない。



 そして、何より、ヒロインが欲しい。



 俺だけを見てくれて、

 俺だけ好きでいてくれる、

 そんな子を彼女に出来たら最高ではないか!



 前の世界では学生時代の恋愛ってできなかった。

 社会人になっても同様。

 我ながら灰色の人生を歩んできたと言える。

 そして、そんな日々がずっと続くと思っていた。



 でも、こうして異世界転移を果たし、

 チートっぽいスキルも手に入れた。


 この世界では俺は特別なのだ。

 だからこそ、俺は特別なヒロインを手に入れたい。


 それ故に、相手は慎重に選ばないといけない。

 でも、コレっていうピッタリの子がなかなかいない。



 サラヤは良い子なのだけれどジュードと付き合ってるからなあ。

 俺は寝取られ展開が嫌いだから、彼氏がいる子には手を出したくない。


 ナルはフリーなんだろうか?

 まだ接点が少ないけど、性格は良さそうな気もするし……

 

 あのテルネって子は少し年下過ぎ。

 3,4年後ならともかく……



 って! おいおい! なぜチーム内に絞ろうとするんだ。

 世の中にはもっと美少女がいるはずだ。ここは所詮スラムだぞ。

 こんなところで妥協してどうする?



 いかんな。

 『遠くのバラより近くのたんぽぽ』というが、どうしても身近な女性に惹かれてしまう。

 気を付けないと手近なところで妥協してしまいかねない。


 やっぱり早めにチームを出た方がいいのかも。

 そろそろ、夕食でブロックを食べるのも辛くなってきたし。

 狩りに出ている昼しか美味しい物を食べられないのが痛すぎる。


 おっと、そうだ。明日は狩りじゃなくて、トール達の護衛だったな。 

 まあ、相手が人間だったらどうにでもなるだろう。

 今日の死闘に比べれば大したことはないはずだ。



 というか、今日は色々あり過ぎた。

 ウルフの集団に襲われるわ、持ち物は壊されるわ、自分の足を切断してしまうわ。


 しかし、得るものも非常に多かった。



 風吼陣、隠蔽陣

 宝貝 莫邪宝剣

 宝貝 七宝袋

 変化の術



 最初は微妙だと思った仙術スキルも、

 ようやく使い方が分かるようになって、

 十分にチート能力だということが分かった。

 もっと検証してできることを増やしていこう。



 俺の豪華生活+メイド+ハーレムの為にもがんばらねば……



 目を瞑ったまま色々と考えていくうち、

 段々と思考がぼやけてきて、

 そのまま微睡むように眠りについた。


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