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白兎と始めるアポカリプス世界冒険譚(闘神と仙術スキルを携えて)  作者: クラント


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11話 チーム


 

 2階の食堂のようなところで少し早い夕食が始まった。 


 食事中は主にジュードのラビット狩りの武勇伝一色だった。


 そこまで自慢げに話している訳ではないが、ラビットを発見してから、頭を破壊するまでを淡々と話しているだけで、周りの皆が盛り上がっていた。



 発見後、見つからないように周囲の地形を把握、誘い込む為の殺し間を見つけ、襲いかかるタイミングを見計らい待機。


 ラビットが後ろを向いた瞬間に銃を一発。これが運よく片耳を吹き飛ばす。

 一瞬、混乱したラビットが硬直している間に銃撃を叩き込む。しかし、これはほとんど外れてしまう。


 体勢を整えたラビットがこちらに襲いかかってくると、すぐに後ろを向いて逃走。

 逃走しながら窪地に枝を敷き詰めた殺し間に誘導し、ラビットが入り込んだところへさらに銃撃。


 銃弾が頭に命中すると、痙攣しはじめ、動きを止めた。

 最後は鉄パイプで頭部へ一撃。とどめを刺して終了。



「ここで重要なのは、最後の鉄パイプの一撃だよ。やっぱり鉄パイプは頼りになるね」



 ジュードはやたら『鉄パイプ』を強調して熱弁。

 皆に『鉄パイプ』の有用性を語ってくる。



 なんのこっちゃ。

 

 イケメンのジュードに『鉄パイプ』という単語は似合わないぞ。

 でも、やたら鉄パイプの部分に力が入っていたな。

 なんか拘りでもあるのか? 変な奴……



 俺が不躾な視線を向けていることにも気づかない様子で、ジュードは皆へと話を続けている。



「結構マテリアルを消費しちゃったけど、ラビットの冠が手に入ったのは大きいかな」



 そういってジュードが皆にみせたのは、小指の爪くらいの小さな透き通る石が3つ付いた輪ゴムくらいの金属の輪だった。



 むむっ!

 あれは店舗でマテリアルと交換していた装飾品に似ているな。



「運良く冠が壊れなかったから、結構な額で交換できそうだ」


「そうね。明日、モウラさんのところにいって交換してくるわ」



 サラヤは当たり前のようにジュードの隣に座ってニコニコと嬉しそうだ。


 ちなみに俺は最初に皆の前で自己紹介だけさせられて後は隅っこで放置。

 別に寂しくなんてないんだからね!


 ちびちびと水だけを口にしながら、周りを見渡してみる。


 ………いや、さっきシリアルブロックを食べたばかりだから食事は断ったのだ。


 22名といったが、ここにいるのは19名。

 その中で戦闘ができそうなのは、ジュード、さっきのガキ3名、ひょろひょろした老け顔の男(本当に17歳以下か?)、中学生くらいの反抗的な目をしたガキくらいか。

 あとはサラヤと同年代の女の子が2名。残りが小学生以下の子供たちだ。

 


 うーん。アウェー感バリバリだ。

 話をしやすそうなサラヤとジュードは結構離れたところに座っているし。


 ………いや、俺が二人がイチャイチャしている所の近くにいたくなくて、ワザと離れた所に座ったんだが。


 ならばおそらく自分と同じく非モテであろう、且つ、難易度が低そうな隣に座っている老け顔君に話しかけてみようか考えていると、いつの間にか食事時間が終了してしまった。


 食事中、結局、誰とも会話できず。

 元々、ダラダラとした世間話は苦手なのだ。


 特に初対面となれば猶更。

 俺は、世の中をノリと勢いで渡っていける陽キャラとは正反対の存在。

 この結果は当然の帰結とも言える。


 そんな俺の様子を気遣ってか、サラヤが席を立ってこちらに近づき、



「トール、ヒロにこの拠点について説明しておいてもらってもいいかな?」


「わかったよ。サラヤ」



 俺の隣の老け顔君に、俺の面倒を見るようにとお願い。

 老け顔君……トールはサラヤのお願いを快諾。


 俺の方へと振り向き、穏やかな表情で話しかけてきた。



「ヒロ……だっけ? こっちに来てくれないか?」


「えっと………、よろしくお願いします、トールさん」


「あははは、トールでいいよ。多分、年もあんまり変わらないだろうし……」



 ええ? そうなの?

 今の俺の外見年齢より、5歳以上は年上に見えるけど……

 やっぱり老け顔なんだなあ。



「じゃあ、よろしく……、トール」



 トールがそう言ってくれたので、ため口で話す。



「任せといて。さあ、この建物の中を案内しよう」



 食堂から1階に降りながらトールに簡単な説明を受ける。



「1階が男子フロア、2階が食堂や浴室等の共有スペース、3階が女子フロアなんだ」



 1階の一室に案内される。


 学校の教室より少し広めな感じ。

 壁側に幾つかのロッカーが置いてあり、床には毛布が散らばっている。

 部屋自体に飾り付けも無く、男所帯に在りがちな殺風景な間取りに見える。



「ここがみんなの寝床。毛布は適当に落ちているやつを使ってくれ、あと浴室は交代制だから、男子が使えるのは夕方から夕食後1時間以内までだね」



 んん??

 1時間以内って時計があるのか?



「ああ、時計はないよ。そんな高価なもの。だからだいたい1時間って感じ。女子がその辺りを管理しているから。浴室の前に女子利用中の看板が置かれたら絶対に近づかないように」



 覗きたいやつがいるからか。

 気持ちはわからないでもないが。



「サラヤはその辺がすごく厳しくて、追い出された奴もいるから本当に注意してね」



 おお、怖い怖い。

 ちょっと怖いところも見てみたい気もするが。


 その他、トールにこの拠点に住むにあたって細かいルールについて教えてもらう。

 結構、質問を繰り返したが、トールは面倒臭がらずに丁寧に教えてくれる。



 なかなかイイやつだな。

 老け顔だが、今見ると理知的な大学生のようにも見えなくもない。

 

 あ! 最後に1個だけ質問。



「サラヤはジュードと付き合ってるの?」



 これは俺的には聞いておかなくてはならないこと。

 下手にサラヤにアプローチをかけて、このチームの中心人物であるらしいジュードの不興を買うのは避けたい所。


 俺のストレートな質問に、トールはしばし面食らって黙り込む。

 そして、ふうっ…と一息ついて、



「まあ、ジュードは強くてカッコよくて、サラヤは美人で優しくて頼りになるから」



 と曖昧な表現で留めた。

 その顔からは少しばかり寂しそうな表情が見受けられる。



「ひょっとしてトールもサラヤのことを………」



 今日の俺は突っ込んで聞きすぎているかもしれない。


 トールはゆっくりと首を左右に振り、右手を俺の前に出してくる。


 げ、親指が根元から無い!



「僕、昔からどんくさくって、みんなに迷惑ばかりかけていたんだ。せっかくサラヤがこんな僕をチームに誘ってくれたのに、初めの『虫取り』でこんなんになっちゃって。これじゃ武器も持てないから追い出されるのかと思ったけど。サラヤはこんな僕でもできそうな仕事を割り振ってくれて、こうやって過ごせているんだ」



 ヘビーな話だ。

 でも、スラムともなれば、そういった話が普通に転がっているのだろうな。


 『虫取り』の『虫』って、あの小さな虫ロボのことだよな?

 俺が無傷だったのは、たまたま運が良かったのだろうか?



「ヒロ、気を付けてね。多分明日から『虫取り』をすることになるけど、こんなふうにならないようにね。初めは黒虫、俵虫くらいにしよう。あれらなら最悪指の端を齧られるか、手に穴を開けられるくらいで済む。絶対に長虫や挟み虫とかに手を出さないように……」


「えっと………その『虫取り』って、夜に街の外に出てやるの?」



 トールの言葉を遮って質問してみる。


 夜の空を飛び回っていたあの群れを相手にするのは無謀の一言。

 あの群れにもう一度挑めとか言われたら尻尾を巻いて逃げ出すしかないぞ。



 しかし、トールは俺の質問に呆れたような顔を見せて、



「何を言っているのさ? 夜に街の外へなんか出られるはずないだろ。それに『虫取り』は虫達が大人しい朝にするんだよ。それも街の外辺ギリギリでね。外辺でも街中なら虫達は生きている人間を傷つけるのを躊躇うからね。これも、いと尊き『白鐘』の慈悲、『白の恩寵』のおかげだよ」


「へ? それは………」



 『それは何?』と聞きかけてストップ。

 トールが、数秒目を閉じて指を組み、祈祷のようなポーズを行ったのを見て。


 『慈悲』『恩寵』という響き。

 そして、トールの態度から、おそらくこの世界の宗教関連であろう。

 それがこの世界における知っていて当然の常識であるなら、下手に尋ねてしまうと怪しまれる可能性がある。


 知りたいのは山々だが、未だチームトルネラに馴染んだとも言えず、このトールの人間性も不明とくれば、今ここで質問するわけにはいくまい。

 いずれ、どこかのタイミングで聞いてみたいと思うけど。



 しかし、『傷つけるのを躊躇う』……か?

 もしかしたら、それが原因で無傷だったのかもしれない。

 

 その対象が『生きている人間』だけなのなら、白兎があれだけ傷つき、

 俺だけが無傷だったことも頷ける。


 あと、やっぱり『夜に街の外』に出るのは危ないらしい。

 森の中では出てこなかったが、この周辺では夜には虫の大群が出るようだから注意しよう。



「…………分かったよ、トール。忠告、ありがとう。気を付けるよ」


「まあ、その辺りは明日はデップ、ジップ、ナップが教えてくれると思うけど。3人のことをよく聞くようにね」



 デップ、ジップ、ナップって、あのクソガキ3人か。

 うーん……、大丈夫かなあ。



 そんな話をしていると、他の男子達が寝床に入ってくる。

 自分を含め10名ってとこか。


 寝床は広いので、十分スペースを確保できるが、個室じゃないのがちょっとつらい。

 

 トールは他に用があるのか、寝床を出ていくと、俺はまたぼっちとなった。


 他の子供たちは思い思いのグループで雑談中。

 すでに出来上がっている輪に入ろうとするだけの気力はもう俺にはなかった。


 一人、反抗的な目のガキが誰とも関わらずに、なにか機械のようなものをガチャガチャといじっている。

 話しかけようかとも思ったが、キッと睨まれた為、諦めた。

 


 部屋の隅っこで毛布を頭からかぶり、寝っ転がる。

 ようやくプライベートの空間が出来上がった。その中で、しばし思考に耽る。



 今日は色々なことがあり過ぎた。少し整理しよう。




●ジュードが倒した機械種ラビット。

 なぜか可愛らしい白兎とは似ても似つかぬ凶悪な姿だった。

 やはり街の外に出ると襲ってくるのだろうか?

 ジュードは銃(+鉄パイプ)で倒したようだけど、今の俺の『力』で倒せるのかどうか………

 白兎の身体能力を見るに、一撃を貰うと危ないだろう。


 しかし、皆の喝采具合から機械種ラビットを倒すと尊敬されるようだ。

 もし戦う必要があるなら、やはり銃を手に入れてからにするべきであろう。




●虫はヤバい。

 街中だと人間を襲って来ないようだが、街から離れると危ないらしい。

 また、虫の種類も色々ありそうだ。

 『虫取り』の『虫』は、俺と白兎を襲った奴らと同じなのだろうか?



●開拓村というものがある。

 避難民という言葉がある以上、開拓村が潰れて村民が離散することもあるようだ。

 そして、道中はかなり危険。

 8割の損耗率ってかなりのものだ。

 なぜ、俺が街に辿り着くまで襲われなかったのかは不明。




●シリアルブロックは食えないこともない。

 ミートブロックはちょっとマシなくらい。

 しかし、このスラムではこれがご馳走らしい。

 あと「マッドブロック」「ウィードブロック」っていう食べ物の名前が出てきた。

 マッド(泥)、ウィード(雑草)って名前を聞くだけで美味しそうに思えない。

 あと、水は豊富のようだ。飲み水はなかなか美味しかった。




●銃がある。

 そしてそれはマテリアルを消費するらしい。

 マテリアルは金銭のことだと思っていたが、銃の弾丸、若しくは発射するためのエネルギーにもなるようだ。

 まだ実物を手に入れてないので、詳細は分からないが、まず異世界生活充実の第一歩として、マテリアルの入手を目標としたい。




●ギルドはない。

 若しくは見つけられない所にしかない。

 しかし、サラヤは「モウラさん」の所へラビットを交換しに行くと言っていたから故買屋のような所はあるらしいと分かる。

 しかし、俺個人で行っても対応してくれるかどうか分からない。




●サラヤはヒロインではないらしい。

 俺にNTR属性は無いから、ジュードから奪うつもりもない。

 しかし、俺がラビットを狩りまくって、有能なのをアピールしたらサラヤはどんな反応をしてくれるのだろうか。


 もし、活躍した俺にすり寄ってきたら、俺はかなりサラヤに失望してしまうだろう。

 今の男より有能な男が現れただけで乗り換えるなんて、そんなヒロインに価値はない。

 そうはならないでほしいと切実に思う。




●『白鐘の慈悲』『白の恩寵』と言った重要そうなキーワード。

 この世界独自のワードだと思われるが、詳細は不明。

 ニュアンスから人間を守ってくれている存在……と言った所だろう。

 誰もが知っていて当たり前の常識であるなら下手に質問するのは危険。

 もし、異世界からの転移者が世間一般に知られているなら、俺の正体がバレる可能性がある。

 質問するにしても、もう少し仲良くなってからの方が良い。



 質問するならトールが一番都合が良さそうな気がする。


 サラヤやジュードはなんとなく忙しそうだし。

 それに変なことを聞いたら突っ込まれそうだ。

 トールならばそこまで追求してこないような気がする。

 今日はチームや拠点のあれこれしか聞くことができなかったが、もう少し仲良くなれば、この世界のことや機械種のこと、マテリアルのこととか聞いてみたい。



 明日は『虫狩り』だ。

 最低限の仕事はすることにしよう。

 そして、時間が空いたら、白兎の様子を見に行きたいし、スキルの確認も再度行いたい。




 しばらくしたらトールが戻ってきて、部屋の真ん中に置かれていたランプの灯りを小さくする。



「そろそろ寝る時間だよ」



 そういうトールの髪が濡れているのに気が付く。 



 あ、コイツ風呂にいっていたのか。

 しまった浴室に行くのを忘れていた。

 トールも誘ってくれたらよかったのに。


 今から行ってももう遅いだろう。

 下手したら女子と鉢合わせして、袋叩きに会うかも。

 入った当日に覗きで追い出されるなんて恥ずかしすぎる。



 もう寝るしかないか。

 やはり疲れていたのか、目を閉じて十数秒後には眠りにつくことができた。


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― 新着の感想 ―
ヒロって中盤くらいまでヒロインっていう記号として女性を見ることが多いですよね。 ここら辺にも精神的な未熟さというか傲慢さが見え隠れしてます。
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