ごこめ
「悪いものじゃない」
イリスの柔らかな言葉が、私の胸を抉る。そこで爆発した。視界がにじむ。
「イリスがっ、言うな!幼稚園児の時、画用紙に点を描いた君が、言うなっ!イリスは真っ直ぐにものを捉える。でも私は…」
もはや、口は閉じる気配がなかった。
「私が描いた五芒星を見て、君は笑ってたんでしょ⁉︎心の中で!こんなもの、空に、ないって……思ったでしょ」
イリスの顔を見ていられなかった。酷く傷ついた顔をしていたから。視線が落ちて、手元に行き着く。
私は、何をしているのだ。仲が良かった先輩に傷つけられて、泣いて。それどころか、慰めてくれた友達を傷つけている。
あぁ、私は愚かだ。
胸に酷く冷たい思いが広がった。
「私が黒い画用紙を渡した後も、イリスは白い点を打ち続けた!……っ、綺麗だった」
私は、イリスが打つ点に見惚れた。黒い画用紙に輝く星に。
「ありがと」
と、その時。私の滲んだ視界に、イリスの手が映り込んだ。
「ルウは、私が、うらやましい?」
「……とっても」
「そうなんだ。なんか、意外だな」
えっ?肩がびくんと跳ねた。イリスの手が私の手を撫でていた。
「私もずっと。ルウが、うらやましかったから」
「ぇ」
今度は声がもれてしまった。緩慢な動作で上を向く。イリスの目元は赤かった。
「自分でいろいろ想像できて、それを描けるルウを、すごいなって思ってた。自分の中に、世界を持てるルウに、憧れた」
初耳だ。
「多分ね、五芒星を描いた時のルウの頭の中の世界の空には、五芒星が輝いてたと思うの。それを、ルウは絵にした」
イリスが私の手を握る。
「それって、とっても素敵だよ。私にはできない。ルウだけができる、素敵なこと」
「ありが、とう」
自然と口角が上がった。
「ありがとう」
これでも良いんだと思えた。私は本当に、良い友達を持ったのだ。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
次話は短編に書かれていない内容になります。章が変わります。




