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空に輝く五芒星  作者: 猫村 子麦
第一章:私はまだ、何も知らない
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よんこめ

 先輩の足音が遠ざかり、聞こえなくなる。私は足元から崩れ落ちた。

……いま、わたし、だれに、なにを、いわれた?

 情報の処理が追いつかない。


「…ルウ」


 イリスが静かに声をかけてくる。


「だい、丈、夫。気に、してない。」


 声を振り絞った。すぐ立ち上がって帰らねば、と気がはやる。しかし、私の足は、私の足でないかのように動かなかった。


「だい、じょう、夫、だいじょう、ぶ。」


 私はうつむいてくり返す。

 横にイリスがしゃがんできた。


「大丈夫なら、なんで」


 


 泣いているの?


 


 静かな声だった。


「ないてっ、なんか…」

「泣いてるよ」


 責めるでもない、事実をただ言う静かな声。イリスは昔からそうだった。真っ直ぐで、違えることなく、物を見る。

 ……じゃあ、私は?


「ねぇ、イリス。想像って、受け入れられない、のかな」

床にまあるい何かが落ちた。何かが落ちたあとの床に、べちゃりと散った跡が残った。


「そんな、ことは」

「あるのかもしれないね。だって、私一人のものだもん。伝わら、ないんだよ。」


 声が震える。


「そんなことないって。私、あの絵好きだよ」

「でも…」


 セレス先輩、は、セレス先輩は。


 昔、私の絵を褒めてくれた、セレスが___


 一時期、セレス先輩を呼び捨てしていた時期があった。先輩なんて、つけなくっていいよ。名前で呼んで? そう言ってくれた。

 友達だったはずの女の子は、どうしてだか私を嫌うようになった。


 その理由は、きっと___


「先生も、空だけを描けって言ったわけじゃないし、これで提出しても大丈夫だよ、ね?」


 イリスの声が優しい。その優しさに甘えて、何でも言えそうだった。


「ねぇ、ルウ、理想だとか、夢物語とか、言われてる物、あるでしょ?あれも一種の想像だよ。でもさ、そういう理想や夢って、綺麗だよね」


 無意識にイリスを見ていた。


「ねぇ、ルウ。理想は、夢は、想像は」


 イリスの顔が、一層綻んだ。

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