さんこめ
「……よし」
描き始めて三日。提出期限が明日に迫った日に、絵が描き上がった。
「やっと終わった?おつかれさま」
「ありがと、イリス」
私は達成感に満ち溢れていた。
キャンバスの真ん中にひまわり。その周りには、澄んだ青空が広がっている。空の青がうまくひまわりを引き立てていて、ひまわりのイメージを強くしていた。
我ながらいい出来だ。
「さ、ルウ、帰ろ」
あたりを見回すと、一人を残して部員がもう既に帰った後だった。
「うん」
私は帰りの支度を始める。
すると、残りの一人の部員であるセレス先輩が近づいてきたのだ。
セレス先輩は意地悪く笑っている。そして彼女の利き手である左手を、催促するように差し出した。
「描き終わったって?見せてみなさい」
我がほしぞら中学美術部に相応しいかどうかチェックしてあげる。
セレス先輩が言う。
「ルウ、別に見せなくたっていいよ」
「はぁ?何を言うの?先輩たるこの私がアドバイスをくれてやろうっていうのよ?いいからはやくみせなさい」
イリスはセレス先輩をひどく警戒しているような声を出した。
私は、そんなイリスに違和感を覚えつつ、セレス先輩の方に絵を向けた。イリスの警戒の意味がわからなかったし、セレス先輩の願いを却下する理由が思いつかなかったからだ。
「はい、まあ、いいですけど」
「ルウ…」
イリスがそんな声を出す理由が分からない。しかし態々尋ねる気にもなれず、私はセレス先輩の反応を待った。
「……なぁに?この、絵」
それは、私が全く予想だにしていない反応だった。
「空の絵を描くんじゃなかったの?これじゃひまわりの絵じゃない。それに、ひまわりの絵を描いたにしても、どうして茎がないのよ」
「そ、それ、は……ひまわりが、空に、う、浮かん、でて……」
しどろもどろに言う。
「はぁ?あんたには空にひまわりが見えんの?どうかしてる。目が悪いんじゃない?いや、悪いのは頭ね!バカなの?空からひまわりが生えるわけないじゃない。こんな絵じゃ、空だってわかんないわ!フンッ、描き直しなさい」
そこまで言うと満足したのか、先輩は部室から出て行った。




