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空に輝く五芒星  作者: 猫村 子麦
第一章:私はまだ、何も知らない
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にこめ

ある日の昼下がり。


「イリスっ、イリスっ」

「……?」

「今日は何を描こう?」


 私は幼稚園の頃からの友達に声をかけた。緩く編んだ三つ編みを顔の横に垂らしている綺麗な子だ。


「んー、個人的に描く前に、課題の方を仕上げた方がいいと思う」

「…あ」

「忘れてたとは言わないでしょうね」

「言います」


 そうだった。美術の課題で空の絵を描く物が出ていたのだった。私は男の子みたいに短い髪をぐしゃぐしゃにして唸る。


 何もかんがえてなかった!どうしよう!?


「イリスはもう終わったの?」

「いや、まだだけど」

「あっ、なら一緒に描こ!」


 私の申し出に親友はフッと笑ってうなずいた。


 ここは部室。ほしぞら中学校の美術部の部室だ。私もイリスも絵を描くのが大好きで、この部に入った。私たちはそれなりに楽しい学校生活を送っている。

 でも、ひとつ懸念事項がある。


「ちょっとー、ルウうるさい」

「あ、ごめんなさい、セレス先輩」


 なんと私は、先輩に嫌われてしまったようなのである。

 私たちは中学一年生だ。そして、セレス先輩は三年生。部に入ったばかりの頃はよく絵を褒めてくれる先輩で、よく話したりしていたのに、ある時から急に冷たくなったのだ。理由は、わからない。


「イリスもさ、ルウに話しかけられても無視すりゃいいんだよ」


 イリスは何も返さない。先輩はため息を吐いて、自分の作業に戻った。私に向けられた背に声をかけようと言う気は一切起きなかった。


 私たちは無言で、絵を描く準備をする。


 絵の具を出そうと手を伸ばして、そういえば何色を使おうか、と今更ながらに思った。今まで忘れていたのだから、どんな空を描こうかという構想さえも出来上がっていない。空なら青色だろう、ということもない。夜空だったら紺だし、夕焼け空の場合もある。イリスは何色を使うのだろうと隣を見ると、躊躇いなく青を出していた。


 じゃあ、私は…


 少し、目を閉じる。瞼の裏に空が浮かび上がる。青空。真ん中に、太陽がある。黄色くて、ひまわりみたいな。


 ……よし。ひまわりが浮かんでる空にしよう。


 構想が決まった途端、描きたい、と体じゅうがうずうずしてきて、私はすぐ、黄色の絵の具をパレットに出した。


     

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