さんじゅうななこめ
「あれ?ここに手紙入ってなかったっけ?」
「き、気のせいだよっ?私なんも知らないよ!」
「わー、ド下手。……まあ、いつものだろうしいいんだけどね」
急に辛辣。何が下手なのか。
言ってくれないのは、言わないのは、この子の虫の息みたいになった優しさの名残だと分かっていた。だから私はイリスに尋ねない。私は私の行動への理由づけを済ませ、ほっと一息ついた。そこでふと思う。
いつから私は、理由に沿わなければ行動できなくなったのだろう。
理由がなければ、行動できなくなってしまったのだろう。
いつまで私は、理由を探し続けるんだろう。
昔は、感覚や直感による行動が多かったように思う。 今は?
自分を正しくしたくて仕方がない!
正しいと思わないと動けない。動きたくない。ひとつひとつ慎重にしなくちゃ、戻れないところまで行ってしまいそうで。怖くて怖くて怖くて仕方がない。
でも、
でも。
理由をつければ、それは全て正しくなるのだろうか?
「ルウは昔からそういうのド下手だよねぇ。それがルウで、そんなルウの親友が私なんだけど」
「……なんかごめん?」
思考停止。笑え。
咄嗟の命令に、表情筋は戸惑った。それが目の前の美しい人に伝わらなければいい。右手の癖も心も瞳も髪の一本もその所作の全てが、私の目に強烈な衝撃を与えるこの人に、私を見せないで。
私だけが、日々の中でどうしようもなく落ちてゆく。深いなんてモノじゃないね、底なし沼がかわいく思えるくらい残酷な所へ堕ちてゆく。感情の歪みはもう大前提になっちゃった。いつかこの歪みが正常に思えた時に私は狂うのかな。あるいは、もう。
それなのに目の前の美しい人はずっと目の前にいるから不思議だ。不思議だ。不思議ね。
「相手が何のことについて言ったのかわからない言葉に不必要に謝らない方がいい。悪い人だったら足元を見られるよ?」
「イリスは悪い人じゃないじゃん」
「そうだといいね」
「どういう意味?」
ぴっと体が硬直する。瞬時の緊張は杞憂だった。
「人を信用しすぎてはいけない、私たちは小動物ってこと」
「いや、親友を信じられなくなったらそりゃあそれで問題だよ」
「確かにぃ」
急に柔らかくなった声を、すごく久しぶりに聴いたような気がした。
そこで私は気がついた。イリスが上履きを履いている。それは当然のことのように思えたが、それは違うということに気がついたのだ。私は私を褒めてやりたくなった。
イリスがどっかに行ったとき、足音はしなかった。つまり、靴を履いていなかったということだ。なのに今履いているのだから、そこに一つの仮説が立てられる。
私ははっとして、イリスの向かった場所を見た。
ゴミ箱しかなかった。
久しぶりです猫村ですこんにちは!
五芒星かくのやっぱ楽しいです。でも書き始めるまでが意外と長いんですよ。なんかぐだぐだしちゃうんですよ。なので、友達に『今日更新する!』と言って自分の退路を無くしてから書いています。誰かの参考になればいいな。(参考にしちゃダメだとは思うけれど)
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
次話も宜しくです。




