さんじゅうさんこめ
昨日は結局何もできなかった。
あぁ、私の馬鹿!もうほんとに馬鹿!知ってたけど!
朝から気分は最悪である。机にでろーん、だ。ちなみに、今日の登校はイリスと一緒だった。下校時に私が用事を作っただけであり、不仲になったわけではないのでこれは当然である。
「る、ルウちゃん……」
「? あ、ティアちゃんだ。今日は来れたんだ、よかった!」
「うん……あの、でね、ちょっと、お話、が、あって……」
私はそこで違和感を覚えた。
「あれ?ティアちゃんって、私のこと呼び捨てで呼んでなかったっけ?」
呼び捨てから急に呼称が付くと、なんだかよそよそしい感じがしてしまう。少し寂しい。
「うっ、あ……それは……ひっ」
「それは?……どしたの?」
ティアちゃんが胸の前で手をぱたぱたと動かす。ちょこちょこと動く指先の皮は少し剥けていて、爪の隙間には赤茶の何かがこびり付いていた。私はそれがなんなのかを聞こうとしたのだが、それは叶わなかった。
「ルウ、何を話してるの?」
「イリス!なんだかね、ティアちゃんおかしいの」
「おかしい?どういうこと?」
イリスはティアちゃんに視線を向ける。その途端、ティアちゃんの肩がびょきゅるっと跳ねた。当分の間、ティアちゃんは〇〇肩にはならないだろう。ティアちゃんの肩の筋肉が元気でなによりだ。
でもなぜ今跳ねたのだろう。
「お、かしくなんてないよ!ルウちゃんってば変なこと言うなぁ!至って正常通常運転!いつも通りの日常生活!……学校生活?とにかくいつも通り!おかしくない!」
ティアちゃんは必死に言葉を連ねる。
そのとき、一時間目の授業の予鈴が鳴った。ほしぞら中学では、授業二分前に予鈴が鳴る。これを聞いた生徒は席に着席するのだ。
今日のところは時間切れ。
でもいつか、ティアちゃんにも探りを入れないといけないかもね。ティアちゃんが加害者説、ありえる。
イリスに害を為すのなら、排除対象。
でも、そうでないのならずっと友達でいたい。ティアちゃんは可愛くて揶揄い甲斐があってそして、いい子だ。
私はいい人達に囲まれているな、と思って隣を見る。
その時、ティアちゃんが小さくつぶやいたのが聞こえてしまった。
「面倒事が二つになるなんて、最悪」
面倒、事……?




