にじゅうごこめ
「おはようございます」
挨拶をして教室に入る。
イリスはいつも通り無言だった。
「ルウって希少人種だよね」
「どゆこと」
唐突にイリスの口から放たれた言葉の意味がわからない。
私はごぎっと首を傾げた。
……寝違えてたのを忘れていた。めっちゃ痛い。
私がひとしきり痛みに悶えるのを見つめていたイリスは、私の蘇生とともに話し始めた。
「先生からは朝教室に入る時、挨拶しなさいとは言われたけど別にしなかったからと言ってペナルティは無いし、何より朝の時間は先生がいないことが多いから、クラスメイトのほとんどが挨拶してないよ。その中で始業式から今日に至るまで、欠かさず挨拶してるルウが希少人種だっていう話」
「あぁ。そういう」
「そう。そういう話」
私は心の中で頷いた。
首、痛い。
「ねぇ、どうしてルウは挨拶を続けてるの?」
「なんか妙に否定的だね」
私がなんとなくそう言うと、イリスはしゅんっと眉尻を下げた。
「ごめん。ただ不思議に思っただけだけだよ。でも、質問の仕方、よくなかったね。なんか、挨拶を続けることに意味はないとか、ルウの行動が端から理解できない、みたいなのを感じさせちゃったかも」
「うん。ちょっと。でもイリスは謝んなくていいよ。私も、ただ答えを言うまでの時間が欲しくてなんとなく言ったことだから。私、イリスが先入観で視界を狭めたりはしない人だってこと、知ってるから」
私がそう言うだけでイリスは花開くように微笑んでくれるのだから、なんだか軽い罪悪感でも湧いてきそうだ。
「イリス。私ね、小さなことが当たり前にできる人になりたいの」
小さなこと。
足元のゴミを拾うとか
机を綺麗に並べるとか
プリントの端を揃えるとか
そういう、誰に見つかるわけでもなく、たくさんの感謝が貰えるわけでもないような小さなことをできる人になりたい。
だって、
きっと、
そういうことができる人は
綺麗だ。
私はまだそんな人になれたと胸を張って言えない。
でも、焦がれ、目指し続けていれば、いつかなれるような気がするのだ。
そう言った私に向けてくすっと笑ったイリスは、カバンから荷物を取り出そうと自分の席に着きに行く。
私の隣の席は、空席だった。
最近、おててをデッサンするのにハマってる子麦です。どうも。
全然上達しなくて凹んでます。ちなみに、ルウは私よりも遥かに上手なおててを描けます。すごいなぁと、語彙を失った感想を抱いてます。そしてイリスはとっても速く正確に描きます。二人とも個性があって良し。
なんか全然関係ないこと書きましたが、次話もよろしくお願いします。




