にじゅうさんこめ
掴んだイリスの手を引いて、言った。
「まだ完成はしてないけどね。頑張ったんだよ」
そう言って自分の絵を指差す。
「どう?机にほっぺつけて眠そうにしてるシルク先輩の絵。かわいいでしょ」
によりと悪い笑顔を浮かべる。イリスは私の絵を見て、くすっと笑った。
「ははっ。ほっぺ潰れてるじゃん。半開きの目がすっっごく眠そうでいいね」
「でしょでしょ!」
「ここにまた何を足すつもりなの?」
「そりゃ、よだれしかない!」
「あはははっっ!うん、似合うと思う」
二人でひとしきり笑った後、部室の隅っこから声が聞こえた。
「……うー。。ルウちゃん。シルクの絵、できたのぉー?」
「はい。できましたよ……って寝癖すごっ!」
「ぼんばぁだ……」
目をほよほよさせながら起きてきたシルク先輩の髪は、トイプードルも裸足で逃げ出すボンバーだった。どんなふうに寝たらこうなるのか全く想像がつかない。
「絵、みせてー」
「いやその前に髪の毛どうにかしましょうよ」
まだ完全に目が覚め切ってはいないのか、ふわふわした足取りでこっちに来るシルク先輩はとても危なっかしい。
私はシルク先輩の右手を取って、ゆっくりと誘導した。
「シルク先輩、これです。どうですかっ上手ですかっ」
「…………」
「……どうしました?」
シルク先輩が私の絵を見たまま動かない。なんだか心配になって、シルク先輩の顔を覗き込む。
すると、そこにはなんと。
「ね、寝てる……」:
寝顔があった。
「え!?なんでたったまま寝てるんですか!?すごいですねってちがう!こ、これ、どうしたら……!?」
私が慌てているうちにも、ゆっくりとシルク先輩の体が傾いていく。
あぁ、倒れる。
支えなくては。
そう思うのに、咄嗟には手が出ない。
ごめんなさい。
そう思ったときの事だった。
「おっと。あっぶねぇな、こいつ」
そのまま床に落ち着けられるはずだったシルク先輩の体は、私のものではない手に支えられた。
そう、レア先輩だ。
「ルウ後輩、こいつは私が預かる」
「あ、ありがとうございます……!」
「おうよ。それと、そろそろ帰らないとだぞ。絵の具とか色々片付けな」
「あ、はい」
「分かりました」
レア先輩がシルク先輩の首根っこを掴んで連行していくのを見送り、私とイリスは片付けに入った。
しかし私は、小さな小さな不満があった。
そこはお姫様抱っこして欲しかったなぁ……!
首根っこ掴まれてるシルク先輩も可愛いけど、レア先輩のお姫様抱っこが見たかったよぉ。
そう思ってしまう私は、根っからのお絵描き好きである。




