にじゅっこめ
「え、シルク、自分を他の人に描いてもらったことない!なんか緊張する!」
「いいな。シルクか。描きがいがあると思うぞ」
「ルウはシルク先輩を描くの?どうしてか聞いてもいい?」
イリスがこちらを向いて首を傾げる。
私は胸を張って答えた。
「シルク先輩の絵が好きだから!」
「…………?理由になってなくない?」
イリスの首の角度がより90度に近づいた。
「私、シルク先輩の絵を見た時に衝撃を受けたの」
イリスの首の角度が90度を超えた。
痛そう。
「シルク先輩の絵ってさ、『白』っていう色で描かれてるじゃん?私、シルク先輩に出会う前は、『白』っていうのは何も描いてないキャンバスとか紙の色だって思ってたの。それ以外があるなんで、思わなかった」
私が見て衝撃を受けた絵は、雪原を白猫が眺めている絵である。
どこの色を見ても白なのに、雪原と白猫がちゃんと描かれていた。
すごく、綺麗だった。
私がそう言うと、シルク先輩は信じられないといった顔になった。
「わ、わわわわわわっ…………え、こんなに絵を褒めてもらったの初めて……ちょ、今、他の作品も持ってくる!」
シルク先輩が部室の隅にある棚から何枚かの絵を取り出しきてくれた。
「えっと、多分、ルウちゃんが初めて見た絵はこれ。で、こっちは白い棚に並べられた白いぬいぐるみの絵。そっちは北極の氷の上にいるホッキョクグマの絵。あっちは雲の上で眠る私の絵!」
一つ一つ説明をしてくれているシルク先輩は、本当に嬉しそうで、楽しそうだ。
体がふわふわと小刻みに揺れるたびに白髪の先がゆらりと揺れる。なんだか、風みたいだと思った。
「私、『白』っていう色がすっごい好きなの!無限の可能性があって、純粋。そんな感じがするでしょ。ほんとはただただ『白』っていう色で、その他何の意味もないんだろうけど、人は、無意味なものに意味を見出すから。見出せるから。見出したもん勝ちだよね!」
にひっと笑ったその顔は、純粋で、そして儚かった。
だから、好きなのだ。
シルク先輩の絵が。




