じゅっこめ
帰りの準備。
それは、学校に関する準備の中で一番やる気の出る準備だと私は思っている。
だって、この作業が終われば部活に行けるのだ!そう、自分のやりたいことができる時間なのである!
それだけで人の心とは浮き立つものだと私は思う。
「ふんっ、ふふんっ、ふふぅぅぅぅうううんっ!」
そう、無意識で鼻歌を歌ってしまうくらいには!浮き立つものだと!思うのである!!
「え、ルウ何やってんの……?」
「え、何のこと?」
だから、隣の席のティアちゃんが若干引き気味で話しかけてきてもしょうがないと思うのである!!!
「さっきから変な鼻歌歌ってるけど、大丈夫そ?」
「へ、変な鼻歌って何?心配になるくらいおかしかった!?」
「え、うん。まぁ」
「おぉぅ…………」
私は頭を抱えた。帰りの準備はもう終わったのでそのまま席に着く。
ちなみに、ティアちゃんもライアと同じく今年からの仲良しさんだ。
「すっごいご機嫌だね、ルウ」
ティアちゃんにそう言われ、私はご機嫌だった理由を思い出した。
「ふんっ、ふふんっ、ふふふぅぅぅうぅうううぅうん!」
「いや、思い出すだけで鼻歌出るんかい!」
急にトンっと胸に当たった手は少しも荒れておらず綺麗だ。
「ナイスツッコミぃ!」
「ふぁあ……やっちゃったぁ……」
ティアちゃんはとてもノリが良く、いわゆる「ツッコミ」がとても得意だ。でも本人はこの特技をあまり好きになれないらしく、普段は意図的に抑えるようにしているのだとか。
しかぁし!ティアちゃんは、いいボケにはツッコミたくなってしまうのである!ティアちゃんのお気に召すボケを模索することが最近の私の密かな楽しみだったりする。
「と、ところで!ルウはどうしてそんなにご機嫌なの!?」
あからさまに話を逸らされたが、真っ赤になったティアの可愛い耳に免じて話題逸らしに協力した。
「ふっふっふっ…………それは!」
「それは?」
「それは!」
「それは?」
「それは!」
「いや溜め過ぎやろっっっ!」
そう言い切ってしまってから我に返って両手で顔を埋めるティアちゃんは首まで真っ赤である。
…………ふっふっふ!やってやったぜ!
罪悪感が湧いてこないでもない。
話を逸らした先でも罠にかかったティアちゃんは、涙目で言った。
「…………それは?何なの?早く教えてよ。も、もう揶揄わないでよね!」
「うんうん。分かってるって。流石にこれ以上いじめる気はないから」
「いじめてたの!?」
「ははっ、うそうそ。ほら、耳貸して」
「う、うん……」
おずおずと近づけられた耳に、私はささやく。
ちなみに、ささやいた言葉自体に耳打ちなどする必要は全くない。秘匿する必要性は皆無である。
ではなぜ耳打ちするのか。
それはまぁ、気分である。




