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三神合身スサノオン  作者: キサガキ


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荒ぶる神の王(9)

 *

「やっかいね」

 イザナミの口からつい愚痴がでてしまう。

 響樹の攻撃は予想がつかない。遠距離から攻撃してくるのかと身構えれば、その逆から攻めてくる。使えるものは全てを使い、攻撃を仕掛けてきた。まるで本能で動く野生の獣だ。

 のまれるな。このままではいけない。

 イザナミは首を振る。

 自分もそうでなければならないのに。正直怖いのだ。神殺しヒノカクズチが。近づくのさえ嫌だ。

 それが素の彼女の本音。

 負ければ虚無に喰われてしまう。転生を許さないこの世界。敗北すれば二度と眷族と会うことが出来なくなってしまう。

 先ほどまでの勢いは、今や風前の灯火。

 眷族の為に戦うと、決めたではないか。

 ズキリと背中が痛む。ヒノカクズチの刃を防御した時のダメージだ。それはまるで眷族達からしっかりしろと、叱咤激励されているみたいで。

 負けられない。眷族達のために。そして自分が一人の女性ではなく、呪いの女王として地球に君臨するためにも。

 この距離ならば、刃は届かない。

 イザナミは斧を掲げた。

 雷鳴轟き、鱗が創り出したのは虎を凶暴にデザインした四つ脚の獣。象サイズの巨体で口から牙が大きく前に突き出していた。

「ぐるるる」

 産まれたばかりの子は、母を護るために唸り声をあげた。

「行け。我が分身よ」


 鱗の鎧を纏う虎は走りだした。地面ではなく、空間そのものを足場にして。

 背面の鱗が逆立ち大小形様々な雷の針が、アラガミオンの四方を覆う。

「ボルトン・サンダァァァッッ!」

 大人しく攻撃を受ける響樹ではない。

 雷を雷で弾き飛ばす。爆風で視界不良となる中を、影は動く。

 アラガミオンだ。

 一気に距離が近づき邂逅する二人。

 アラガミオンの両手は、大きな鉤爪に変形していた。

「タケミカヅチッッ!」

 風を切り裂く刃が、イザナミの首を狙った。

 どう回避すればいいかイザナミは理解している。

 そのため一時だが四方に空間を固め、虎を走らせたのだから。

 空間が歪む。タケミカヅチの刃の軌道が手に取るようにわかる。

 この歪みの先に十の刃がある。

 それは命がけの波打ち際での砂浜遊び。波が近づく瞬間、イザナミは足を濡らさない様逃げた。

「逃がすかよッッ!」

 双眸に光が集まる。アラガミオンビームを放つ気だ。

「行きなさい!」

 イザナミの分身である虎が、機体の真横から飛びかかる。

 攻撃は当たらなくてもいい。牽制さえできれば。

「ちいぃぃ!」

「言ったでしょ。坊や。貴方は夢中になると視野が狭くなると」

 イザナミは再び距離を取る。しかしそれも長くは続かない。

 額から一筋の流れ星が落ちる。イザナミの体力は限界に近づいていた。

 最強故に短時間で毎回決着がつく。そのためスタミナのレベル値は最低限しかない。

「まだわたくしは戦える!」

 空間が再び機体を囲む。体力は最低クラスでも魔力は最強。

 虎のいる檻の中へ、アラガミオンを封じる。


 *

「上等だぁ狩ってやるよッ!」

 雷の針を飛ばしながら向かってくる虎に、アラガミオンは鉤爪を突き刺す。

「!?」

 腕の先端が消えた。かじられたわけじゃない。見えないだけで手の感触はあった。

「げふっ」

 機体の口からオイルが溢れた。

 胸部内部から鉤爪が飛び出し、自らの機体を貫いている。

 爪の先端は、黒いオイルで汚れていた。

 これは空間転移能力か。

 地獄門の結界は越えられなくても、その中なら使えるという事か。

「本来この能力は宇宙空間を移動する時に使うもの。それを応用したのよ。攻撃で使わせてもらったわ」

「そうやって他の惑星を侵略してきたのか」

「そうよ。全ての住人を死の世界に連れて行くまで、戦いは終わらない」

「傲慢だな」

「いけないかしら?」

「いいや。最強だから言える特権だぜ」

「……最強ね」

 その表情は暗く硬い。

 無理してやがるなと脳筋の響樹すらも感じてしまう程に、イザナミは疲弊している。


 ここからは想像だが、あらゆる他の惑星を侵略し死の世界へ創りなおす。

 それこそ神話として伝承として記録に残るぐらいに、気が遠くなる年月を自らの行いが正しいものとして、行動で証明してきた。

 今その強い信念に、揺らぎがでてきているのではないか。

 響樹はイザナミを見て、そう感じてしまった。

 惑星を侵略し一族が繁栄すればするほどに、彼女の精神は鑢で削られていく。

 地球に辿り着きオロチという理解者に出会い眷族にしたのも、女王として君臨するのに疲れてしまったから。

 イザナミが本当に欲しかったのは、大義に同調し共に戦う対等の戦士ではなく、一緒に笑い同じものを見て楽しみ合う同士。

 イザナミはオロチを信頼し心の拠り所にしていたのは、流石の響樹でもわかる。

 そのオロチに裏切られたのだ。それがどれだけ心に大きなダメージを負ったか。

 演技だったとはいえ兄がヨモツ側についた時のあの衝撃を、響樹は生涯忘れない。

「強いっていうのはよぉ。大変だよな。色々とよ。責任ってのがのしかかる。強者は弱者を護るもの。その拳は暴力に使うものじゃないってよ。今世で親父に言われたぜ。ガキの頃から同世代に比べて体格差があったからなぁ」

「素敵なお父様ね」

「おうよ。今は自分よりも強い奴と戦いてぇと言って、全国を旅してるぜ! 家庭をかえりみずな。わっはっは」

「それはどうかと思うけど……。ぼうやはそんなお父様が大好きなのね。羨ましいわ」

「アンタにだっているだろうが」

「そうね。かわいい眷族達が」

「違う。そういう意味じゃねぇよ」

「わかってる。でもそれは空気を読んでちょうだい。今のわたくしは呪いの女王なの。ムー国の勇者ラーヴァンの魂を継ぐ者、響樹よ」



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