第六話 雨の儀式
少し、雨が強くなってきた。
「・っ・・雨か、これはまた疲れるな・・・」
ずっと考え込んでいたが、結局一つも謎を解けなかった長寿の桜の神は呻いた。
桜にとって雨は敵である。せっかく咲いた花が無残にも散ってしまうからだ。その為桜の神々は少しでも被害を防ぐように、他の儀式を行い祈りを捧げる。普段なら巫女たちが補助をするが、最期を迎える長寿の桜には一人も巫女がつかない。体力と精神力の勝負は疲労が大きく、これまた巫女もいないとなれば大変な仕事だ。
「せめてこれ以上大降りになりませんように_____」
見上げれば、灰色の雲が空を覆っている。
必死に涙を堪えていた空が、堪え切れず泣き出したかの如く。先ほどとはまた異なった雰囲気だ。鳥のせせらぐ声は消えて静寂がおとずれる。夕暮れ時の茜色は見えず、あたりは急速に闇に包まれた。
神は静かに儀式を始め、数時間かけてから静かに終えた。雨はまだ止みそうにない。
「やっと終わった・・・・・」
膝から崩れ落ち、木の根本へと座り込む。相当な疲労が溜まり、体が思うように動かない。
「もう、休もうか・・・」
そういうや否や、瞼を閉じて体を倒した。
『おやすみ』
静まり返った村に、雨の音が虚しく響く。
天の恵みである雨は、人間、獣、植物などのあらゆる生命に
かかせないものであり、特に自然豊かな咲が丘村では尊重されていた。
しかしその雨は、ときに災厄や悲劇を招いて人々を巻き込むことも多かったようだ。桜の神『辻』もまた、雨に翻弄された人間のうちの一人であった。




