断章 左手
しゃっくりを交えた泣き声が、俺の頭に木霊する。
「・・・・悪かった。」
わかっていたはずだった。
紘斗は優しい奴だから、自分が苦しむより相手が傷つくほうが嫌なんだと。
きっと、無関係なのに責任を負ってしまうと。
小さな体躯のその中で。
わかっていた、はず・・だったのに。
「・・・謝らなくていい!!
お前は何も悪いことなんてしてないのに・・・!!
俺がっ・・・頼りになる人間なら、きっと・・・!きっと・・」
己を叱咤するこいつを見ていると、罪悪感が沸いてきて
顔をまともに直視できなくなった。
巻き込んでしまったのは俺。
謝らなければいけないのも俺。
元凶である俺を思って涙を流すやつは、紘斗だけだ。
だからこそ、申し訳ない。
「・・・紘斗、お前が泣く必要はねぇ。全部俺の中での問題なんだからよ。
気持ちだけでも助かった。ありがとな」
・・・そうだ。これは俺の問題だ。
紘斗は俯いていた顔を、瞬時にあげた。
茶色い目は赤く濡れて、頬は涙でぐしょぐょになっている。
・・・お人よしの、紘斗。
鼻が詰まった声で、か細く囁く。
「泣く必要はないと言われても・・・どうしてか、涙が止まらないんだ」
眉を下げて、残念そうに微笑んだ。
声色も元の高さに戻っている。
つい先ほど激怒していたとは思えないようだった。
「へぇ~泣き虫かよ。・・・いや、天邪鬼だな」
心配させるのはもう懲りた。
余裕をみせるように口端をあげて堂々と言い放つ。
「・・っくく。おい、敦。まったくもって理解不能だよ。
“天邪鬼”って言葉、そのままそっくり返すわ」
「返されたし。まあ、いっか。
じゃあ俺の二つ目の呼び名は“天邪鬼”ってことで」
「はははっ。天邪鬼!」
笑いがこぼれたら、もう大丈夫だろう。
また楽しい話をしようぜ。
新たに話題を振ろうとしたら、泣きやんだ紘斗が一言俺に告げた。
屈強で、繊細をもつその言葉に、胸は高まって温かさを覚えた。
絶対にこの言葉は忘れまい。忘れるものか。
やっぱこいつは親友だ。
『天邪鬼へ一言いってやる。
問題が発生したり、大変な事態になったら、この俺を呼べ。
いつだって駆けつけるぞ。
なんだって、俺は今日からお前の左手だからな』
話がなかなか進みません・・。




