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桜の記憶 ~二つの伝承~  作者: LEN
報復と穢れ
53/73

断章  左手

 

 しゃっくりを交えた泣き声が、俺の頭に木霊する。

 「・・・・悪かった。」

 わかっていたはずだった。

 紘斗は優しい奴だから、自分が苦しむより相手が傷つくほうが嫌なんだと。

 きっと、無関係なのに責任を負ってしまうと。

 小さな体躯のその中で。


 わかっていた、はず・・だったのに。


 「・・・謝らなくていい!!

  お前は何も悪いことなんてしてないのに・・・!!

  俺がっ・・・頼りになる人間なら、きっと・・・!きっと・・」

 己を叱咤するこいつを見ていると、罪悪感が沸いてきて

 顔をまともに直視できなくなった。


 巻き込んでしまったのは俺。

 謝らなければいけないのも俺。

 元凶である俺を思って涙を流すやつは、紘斗だけだ。

 だからこそ、申し訳ない。

 「・・・紘斗、お前が泣く必要はねぇ。全部俺の中での問題なんだからよ。

  気持ちだけでも助かった。ありがとな」

 

 ・・・そうだ。これは俺の問題だ。

 紘斗は俯いていた顔を、瞬時にあげた。

 茶色い目は赤く濡れて、頬は涙でぐしょぐょになっている。

 ・・・お人よしの、紘斗。

 

 鼻が詰まった声で、か細く囁く。

 「泣く必要はないと言われても・・・どうしてか、涙が止まらないんだ」

 眉を下げて、残念そうに微笑んだ。

 声色も元の高さに戻っている。

 つい先ほど激怒していたとは思えないようだった。

 「へぇ~泣き虫かよ。・・・いや、天邪鬼だな」


 心配させるのはもう懲りた。

 余裕をみせるように口端をあげて堂々と言い放つ。

 「・・っくく。おい、敦。まったくもって理解不能だよ。

  “天邪鬼”って言葉、そのままそっくり返すわ」

 「返されたし。まあ、いっか。

  じゃあ俺の二つ目の呼び名は“天邪鬼”ってことで」

 「はははっ。天邪鬼!」

 笑いがこぼれたら、もう大丈夫だろう。

 また楽しい話をしようぜ。


  新たに話題を振ろうとしたら、泣きやんだ紘斗が一言俺に告げた。

 屈強で、繊細をもつその言葉に、胸は高まって温かさを覚えた。

 絶対にこの言葉は忘れまい。忘れるものか。

  やっぱこいつは親友だ。

  


 『天邪鬼へ一言いってやる。

  問題が発生したり、大変な事態になったら、この俺を呼べ。

  いつだって駆けつけるぞ。

  なんだって、俺は今日からお前の左手だからな』

 

 


話がなかなか進みません・・。

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