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桜の記憶 ~二つの伝承~  作者: LEN
報復と穢れ
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断章  帰り道

  

 一進一退と白熱した勝負にやっと決着がついた。

 まだ春なのに汗をかいてしまっていた。

 「よっしゃあああああ!!」

 勝つとはいいことだなと、改めて感じながら紘斗に視線を送る。

 相手は俺の笑みを見て、自分の釣った魚をもう一度必死に数え始めた。

 「・・・・・・負けた・・・・・・」

 数が正しいこと確認すると、がっくりと肩を落として項垂れた。

 悔しがる様子を見るのは本当に久しぶりな気がする。

 普段、こいつが勝つ方がが高いからな・・・。

 そう考えると、なおさら勝ち誇った気になってしまった。


 「むっちゃ悔しい・・・・・!日を改めてまた勝負だ!」

 「今度ももしかしたら俺が勝つかもよ」

 「いーや、次は負けないからな!!」


  夕陽を浴びて橙に染まる川の橋を渡り、それぞれ家へと帰る。

 手に持つ網の中では新鮮な魚が威勢良くはねて、静まる気配を見せない。

 釣りの感想を互いに語り合いながら歩き続けていると

 別れる道が近くなってきた。

 「次はいつ遊べるか?」

 「う~ん・・。明後日かな・・・・」

 「じゃあ、また釣りすんの?」

 「敦・・そのことなんだけど・・・」


  楽しそうだった紘斗の表情が翳っていくのが一目でわかった。

  不安を覚えつつ、言葉の続きを待つ。

 「・・・久々にゆっくり話したいなと思ってさ」

  

 「なんだ、そんな事だったのかよ・・・・。緊張したじゃねぇか。

  『俺、もう遊べない・・・』とか言うんじゃないかって思ったぞ」

 「っははは。ごめん、ごめん。

  ちょうど明後日母さんが出かけるから俺の家でのんびりと過ごそうかなと」

 「ああ、いいぜ。お前に話したい事がやまほどあるからな」

 「俺もお前に話したい大事なことがある」


  ほどけつつあった緊張の糸が、また鋭く結び付いた。

  真っ直ぐに俺を見つめる二つの茶色い瞳。

  明るい印象を与える色から、神妙な光を放っている。

  魅せられていると突然、俺の口から思わない発言がでた。

 「・・・・。なんかさ、お前の眼って綺麗だよな。

   吸い込まれるような琥珀の色をしてるぜ」

  紘斗は首をかしげ、俺の顔をまじまじと眺めた。

  瞳は、犯人を疑るような揺れをしていた。

  確かに突飛な発言であったが。その目はいささかどうかと思う。


 「『琥珀色』?いきなりなんだよ・・・。

  敦、今日は幾分と機嫌がいいのか?さっきも俺を見てたよな・・・」


 「機嫌がいい、か・・・。そうかも」

 「それに随分素直だし」

 親父がいなくて機嫌がいいのはわかっているが、

 ここまで素直になれたのは自分でも驚きだった。

 なんだか気持ちがほわほわしてる。


  田圃を隔てて左右に枝分かれする砂利道にさしかかる手前。

  雑草が覆いつくすように生い茂って、歩きづらくなっていた。

 「きりが悪いが、ここでさよならだ」

 「明後日時間はたっぷりあるから今日はまたな」

 「おう、じゃーな」

  

 別れた後は、黙々と家まで進んだ。

 釣った魚をどう調理するか献立を立てながら戸を開ける。


  静まり返った部屋に響くのは畳がきしむ音のみ。

  疲れたので、今日は早く寝てしまおう。


  

 

  

あとがき久しぶりです。

断章編「報復と穢れ」に入って少し物語がぐちゃぐちゃになりつつありますが、

伏線回収や真相究明までいけるようにがんばっていきたいです。

話はそれますが、この物語はときたま内容修正をして台詞をたしたり、

内容を削って差し替えたりしています。

まれにですが挿絵の方も入れさせて頂いてます。

その報告を、「活動報告」にて随時更新していくので、

よろしければお読みください。

作者の勝手な都合で申し訳ありません。

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