第二十六話 懇願
苦しそうな辻の嗚咽が重く響いた。
「あぁ・・っっ・・・____」
頭を強く抑え、うなだれる。なにかを拒んでいるようにも見えた。
「辻さんっっ!!」
走る緊張感。冷や汗が湧き出る。
前に倒れようとする辻を踏ん張って押しとどめるように努めた。
すると突然、声が脳裏に木霊してきたのである。
_____楓、思い出して。
あなたに残されたその記憶を。
どうか、どうか。
哀昔という念を乗り越えて、蘇らせて。
不変の絆で繋がった未来、奇跡は起きるよ。
だから、お願い__________。
それは確かにあの子の声だった。
頭が、体が、闇に溶けていくような感覚を覚える。
もしかしたら、辻も同様の事が起きているのかもしれない。
視界が狭まり、世界がひっくり返る。
元々異質な空間なので、上下の存在があることも分からないが。
*
「・・・ぅぅ・・・・」
小さなうめき声があがる。
白くて細い華奢な手が微弱に反応した。
土のにおいを孕んだ身体は、他人から見たら酷く滑稽だろう。
ゆっくりと体制を変え、仰向けになった。
「・・火が・・消えてる」
安堵の息を漏らした神楽はそのまま身体を起こす。
「雨が降ったんだね。良かった・・・でも」
落雷がもたらした被害の爪痕は、長寿の桜に深く残されていた。
悔しい。何もできなかった。
体がぶるぶると震える。雨で体温を奪われたのだろう。
指先が青紫色に変色しているのに気がつき、温かい息を吹きかける。
それから顔や髪、服に付いた泥をなるべく落とすと、息を沢山吸い込んで
長寿の桜を見つめた。
「辻君と楓を探さなきゃ・・・・」
とっーーーても短くなってしまいました。




