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第二十一話  自虐

  神楽を眠りから覚ました原因は、長寿の桜への落雷だった。

 高台にある上に、大きくて背が高いから確率があがったのだろう。

 夜中だからか、役人も村民も神楽以外、異常事態に気付いた者はいない。

 神楽は、赤い炎を纏った桜から目が離せなかった。


 おそらく満開で綺麗であっただろうこの桜の花は、

 黒い灰になって、地面の泥へ混じっていく。

 楓を探しにここへ来たが、その前にこの大惨事に出くわした。

 神楽は姿の見えない辻を心配し、叫ぶように名前を連呼する。


 「辻君・・・っどこ・・。消えないで・・!」


 桜の神は、木を本体とするので、いかなる理由でも「再生不可能」になると

 神自身の魂も消失してしまう。

 すでに消えてしまったのだろうか、返事はない。

 しかし、まだ燃え尽きていないから、希望は残っている。


 “今度は私が助ける番だ”と気を引き締めて

 水を探しに立ち上がろうとしたが一向に立てない。

 どれだけ力をいれても、無理であった。


 疲労は、彼女が感じていたよりもだいぶ溜まっていたようである。

 「・・っ動けない・・。足が・・・」

 悲しい、悔しくてたまらない。

 こんなときに使えない体なんかいらないよ。


 動け、動けぇ・・・!!


 歯を食いしばり、全身に力をいれるとなんとか立ち上がることができた。

 よろけながらも歩き出したその途端、今度は横向きに倒れてしまう。

 顔に泥がはね、地面と接触した部分には醜く泥がへばりついた。

 体を起そうと奮闘するも、もう力は残っていない。


  雨で濡れて冷たくなった服が、神楽のかすかな体温を奪っていく。



 神楽の走りを妨げるように降り続いた雨は止んだ。

 炎を消してほしいと願うが雨は降ってこない。

 

  なんて馬鹿げた世界なんだろう。


  虚しくなって、ぽつりと口から言葉をもらす。

 「_____ほんと、私って役に立たないただの汚物だね」

 そう皮肉に嗤うと、意識が途切れたのか、瞼を閉じた。

 無様な姿を晒す悲しき少女の願いが届いたのか、再び雨が降り始めた。

  

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