第二十話 侵蝕
静寂を突き破った雷鳴で、神楽は目を覚ました。
上半身を布団から出し、まだ暗い部屋を見渡す。
「雷・・・久々に鳴った・・。大きい音だったから
この村の中におちたかもしれない」
目が慣れていないのか、細く睨みながら立ち上がって
畳の上をみしみしと歩きだした。
「お父さんもお母さんもまだ帰ってきてないし・・楓は大丈夫かな・・?」
障子を開け、楓の寝ている部屋へ向かう。
その間にも雷はおち続け、耳がおかしくなりそうだった。
起こしてしまうのは避けたいので、静かにそっと障子を開いた。
しかし、楓の姿が見当たらない。
急いで電気をつけた。
「楓・・・?どこいったの・・?ねぇ!」
家の中を探し回り、大声を出して返答を求めるもいずれ楓の声は聞こえない。
「まさか・・悪天候の中、外に・・!?」
体に悪寒が走った。震えがとまらない。
こんな夜中に楓が家を抜け出すことは一度もなかった。
だからこそ、動揺が激しく、思考が停止してしまう。
気がつけば、靴を履いて玄関をとび出していた。
暗い夜空に閃光が走るたび恐怖に怯えてしまうが、
そんなことよりも居なくなってしまった楓の安否が心配だった。
「楓が夜中に抜け出してまで行った場所・・・・・。っ霞河神社だ!!!」
そう違いないと考えると、さらに速く駆け出して
泥や雨水をはじき飛ばしながら目的地を目指した。
まさか、『記憶』の手掛かりを探しに___!?
だとしたら・・何故そこまでして思い出したいんだろう・・
分からないよ、楓。
私はあなたの気持ちが分からないの。
・・やっぱり、変わらないのね・・・あの子だから。
優しくて、可愛い、私の・・・私の・・・。
やけに胸がざわつく。全力で走っているので息が苦しい。
足が動かなくなってきた。痛い。苦しい。
神社までもう少し。
雷鳴は聞こえるが、雨は少しずつ止んできたようだ。
最後の力を振り絞り、長い階段の先にある鳥居をくぐる。
周りの林が怪しげな雰囲気を醸し出していた。
「・・・え・・・」
雷と大雨で光の差さない夜空が、赤く赤く照らされている。
その光は奥へ行くほど強くなり、熱気とともに神楽を誘う。
疲れ切った体をどうにか動かし、神楽は光のもとへ向かった。
ぱちぱち、と何かがはじけるような音、ごおごおと何かが焼かれている音。
瞳に映ったのは_____。
力が抜け、膝が崩れ落ちる。泥が服に飛び散った。
信じれらない、嘘だよ。これは夢だよ。
そうでしょ、辻君?
手で頬をつねるも、無慈悲な痛みを感じるだけだった。
「い・・や・・、やめてえええぇぇぇぇぇええ!!!!!」
長寿の桜は、赤い炎に侵蝕され、黒く染められ始めていた。
話がまたまた急展開ですみません・・・。




