第十九話 仮説と仮説の先に
少し、ランプの灯が弱くなってきている。
そんなことをぼんやりと考えていたら、突飛な話が辻からとんできた。
「・・前世の記憶・・ですか・・・」
なるほど、と楓はゆっくり頷いて考え込む。
「ありえないことはないですね・・」
「だろ。そう仮定すれば、だいたいの辻褄が合うしな」
得意げに笑う辻を見つめながら、楓は『前世の記憶』という言葉を
頭の中で繰り返し唱えていた。
辻さんの笑顔に重なったもう一人の少年。
知らないはずなのに見えてきたおじいさんの姿。
もしかしたら、本当に前世の記憶なのかもしれない。
何故覚えているのか、何故完全に思い出せないのかと不明な点も多いが、
さっきの資料だけでは推測が困難だ。
気がつけば、いつのまにか辻が向こうの本棚のそばを歩いている。
「他にも、この村や神社の歴史に触れた資料があるかもしれない・・・」
特に何も考えず、目の前にある古ぼけた記録簿を手に取った。
今は考えるよりも資料探しの方が大切だ。残りの時間も短いし、
いつこの倉庫が閉められるか分からない。
「これは・・・事件や事故をまとめた表だな・・・・。
伝承に似た事件は・・載ってない・・」
かぶっていた埃を払い、元の位置に戻す。
それからしばらく、資料探しを繰り返していた。
*
一方その頃、楓から離れた辻は一人で本棚を眺めていた。
「赤い札が貼ってる資料ないかなー。・・あるわけないか、って
ここにあるじゃないか!!!」
なんと、運よく一冊だけ赤い札が貼ってあり、おもむろに手を伸ばす。
そんなに厚い本ではなかったが、読み応えのありそうな文章が並んでいた。
すべてを読み解くのは気が遠くなる作業だと思い、太い文字や図表に
軽く目を通す。
読んでいくと、その中に何か引っかかる一文を見つけた。
「『霞河神社に祭ってある桜の木の下に、隠れた真実が必ずある』
綴られた日付を指でたどる。
「・・・ああ、結構前のだな。百四十年か百五十年前だ。
そうだ。・・確か、伝承もそんくらいだった・・・」
辻はふと閃き、それなら、この仮説はどうなんだろうかと
口に出して言ってみる。
「___あの事件の内容が、伝承となって今も語り継がれていて、
隠された真実というのは・・・消えた女性の末路か無実の証拠?」
いまいち筋は通らないが、この説もありだと思われる。
楓に説明してみようと振り返ったその瞬間、
爆音に近い雷鳴が響き、倉庫が大きく揺れたのだった。
話が急展開ですかね、自分でも整理が・・・・つきません・・・。




