第十七話 羞恥心、辻を壊す
黙々と資料を手に取り、光をかざして読み解いていく。
辻は、楓の隣りから顔を覗かせ一緒に読んでいた。
「ここら辺の資料は土地の権利や役人の体制について書いてあるな」
楓とこの部屋を探索しはじめて約二十分。
いまだに電気スイッチは見つけられていない。
とりあえず、近くの本棚から調べはじめたがこれだという手掛かりは無かった。
「この神社の歴史について詳しく掲載している資料は、奥の本棚にあるかも
しれませんね・・・。よし、奥の方から調べます」
「・・・そうだな。厄介事は奥に潜んでるって言うし」
自分で言って目を逸らしてしまう辻であった。
「奥はさらに暗くて視界が悪いですね・・・。電気があればいいんですが」
二人は更に進む。たぶん、辻が本棚を倒してしまった所はすぐ目の前だろう。
まあ暗ければそこまで分からないはず・・・と自分を落ち着かせていると
「あった!辻さん、電気のスイッチがありました!!」
と楓が嬉しそうに報告した。
・・・・。それじゃ丸わかりじゃんか。
辻は、穴を掘ってそこに埋まりたいという衝動に駆られた。
「じゃあ明りをつけますね」
周りを見渡しながら、楓はカチッと電気をつける。
彼の眼に映ったのは・・・・倒れている本棚と放り出された本や資料の海。
「ずいぶん荒れてますね。何らかの衝撃で倒れたんでしょうか・・。辻さん?」
ついさっきから辻の様子がおかしい、と楓は疑問を抱いていた。
そんな辻に同意を求めたが、返事がない。
後ろに振り向くと、赤面した辻が俯いていた。
「どうしたんですか!?具合でも悪いんですか?」
楓はあわてて詰め寄る。
辻は何かを伝えようと、小さく口を動かしてぼそぼそと喋っていた。
楓は耳を澄ましてその言葉を聞き取った。
『それ、倒したの俺なんだ。俺さ、頼りにされたのが嬉しくて、
手掛かり探しに一人でこの倉庫に入ったら、
赤い札が貼っている物しか触れられなくて・・。
仕方なくこの奥の部屋に入り、疲れたから本棚に寄りかかったんだ。
そしたら・・倒れた。ごめん。楓。俺恥ずかしい・・・』
話している途中でさらに恥ずかしくなったのか、
腕で顔を覆い最後まで羞恥心に耐えながら、
自分の無力さと体質について語りきった。
楓は、辻の体調に問題はないと分かり、ほっとしたように笑顔になる。
「そうだったんですか。
・・辻さん、謝る必要なんてないですよ。原因の主は僕なんですから。
僕はとても嬉しいですよ」
楓にお礼を言われ、辻はそのままの体勢で恥ずかしそうに笑みを浮かべた。
「うん。ありがとう、楓。話してよかった・・・」
その後、楓が一人で片づけを終えた。
辻は「俺のせいだから、自分で方法を考えるよ」と言っていたが
「大丈夫です。こう見えて僕、力持ちなんですから」と楓は聞かなかった。
小柄な体躯で大きな本棚を起こし、整理を手際よくする楓を見ていた辻は、
動いたり喋ったりすることしかできなくて、もやもやしていた。
「ごめんな、俺、結局何もしなかった」
「いえ、平気です。僕、整理や清掃は割と得意なんで」
「そっか、色々とありがとうな。面倒かけた」
元あったときよりも綺麗になった本棚にはなんと
二人の目当だった霞河神社の歴史や事件、記録が
多く残されているようであった。
「この本棚には重要な資料が結構多い。よし、ここを調べ尽くそう」
明るくなった部屋で、再び資料探しを開始した。
久々の後がきです。サブタイトルは、「好奇心、猫を殺す」ということばにかけたんですが、いまいち微妙でした。




