第十六話 気配
何者かの気配を感じた。
はっ、と目を覚まして姿が見えない相手に問いかける。
「誰かいるのかっ・・・!」
返ってきたのは、まだ声変わりをする前の少年のようで、
聞き覚えのある声だった。
「え・・。その声は・・・辻さんですか?」
こつこつ、と次第に白い光が近づいてくる。見えてきたのは、小柄な体。
「僕・・その・・楓ですが、まさか辻さんも倉庫へ手掛かりを探しに?」
戸惑いながら辻の方へやってきたのは、楓だった。
さっき感じた人の気配は、楓のもののようである。
「楓か!驚いた・・。そうだ、俺も探しに来たんだ。
・・・・・・。それにしてもこの暗さ・・・。
今はたぶん夜中だよな・・。こんな時間に家を出てきて大丈夫なのか?」
暗闇は深くなっていて、楓のもつランプの白い光が
彼の艶やかな黒髪を美しく照らしていた。
手掛かりを探しに来るのはいつでもできるが
夜中に家を出てくることには何らかの理由があると思われる。
「お手伝いありがとうございます。
親は午後に帰ってくる予定だったんですけど、
連絡が来て明日の朝に変更したので、絶対に姉ちゃんに見つからないように
深夜に霞河神社へ来たんです。そしたら辻さんの姿は無くて、変わりに
この倉庫が開いていたので手前の方から手掛かりを探し始めて
現在に至るわけです。明日の朝までに家に帰れば大丈夫ですよ」
納得はした。だが辻は、数時間前の自分のしでかした醜態を思い出し
急に恥ずかしくなって、楓を追い出そうと説得を試みる。
「いや、でもさ。もし神楽が今にでも起きてここへ来たら
それこそ大変なじゃないか。戻った方がいいぞ」
「どうしてそんなに焦っているんですか?大丈夫ですよ。
さっそくこの扉の奥へ入ってみます」
手を伸ばし、冷たい扉をゆっくりと開く。一度決意したことは貫くらしい。
勇敢な性格はいいことだ。
でも・・・・・。
「ぁ~~。どうしたものか・・・」
自分の無様な行為を見られたくはない、しかしそのままにもできない。
迷いに迷って、決断した。
「よし、俺も一緒に行くよ。手掛かり探しに・・・・。
楓のもつそのランプが消えないうちにこの倉庫を出ないと
朝までに帰れなくなるから、そこは注意な。
現に俺、ランプの明りが消えて周りが見えなくなって道に迷ったんだ」
「ありがとうございます。では、明りを探しながら探索していきます」
恥ずかしいが仕方ないと自分に言い聞かせ、楓とともに奥へ進む。
二人には音が聞こえていないが、外の雨は前の儀式をしたときよりも
粒が大きな強い雨となっていた。




