第十四話 その奥に
ごつ、と足で何かを蹴ってしまったようだ。明りを照らすと、そこには分厚く古びた本が開いたまま転がっていた。
「これは、なんかありそうだな・・・」
座り込み、ランプを床に置いてから開かれていたページを読み始めるが、ところどころ破けていたり文字が褪せていたりしていてすべてを理解することは難かった。当然、ページをめくることは不可能なので、しかたなく立ち上がりまた探索を続ける。
さっきの古びたランプを辻が持つことができたのは『赤い札』が貼ってあったためである。その赤い札は、貼ってあれば神でも触れられるものらしい。
赤い札がある場所を探しながら、奥へ奥へと進んでいく。見た限りでは小さく見えたこの倉庫も、入ってみれば巨大な迷路のようだ。ランプの灯がいつ消えてしまうか心配な辻は、足早になる。戻れなくなるのを恐れたのか、曲がらずに直進で探した。
重要そうな書類が整えられた本棚がつらつらと並んでいるが、赤い札は見当たらなく、書類や本自体が掴めずにいた。やきもきしているうちに、とうとう奥の壁に到達してしまった。
「部屋の隅まで来たけど・・・。調べられなきゃ意味がない」
がっくりと肩を落とす。気疲れからなのか体が異様に重かった。力を抜いて壁にすとんともたれかかると、ガタガタと不吉な音が暗い空間にこだまして響き渡る。
「えっ・・・」
まさか、と振り返るともたれかかった場所はなんと古びて脆そうな本棚だった。
たとえ赤い札が無くても、自分の厄介につながる物や不意打ちなどで建物、設備に触れることはできるらしい。なんとも不便な体質である。
本棚と一緒にそこに置かれた資料や本が自分のほうへ倒れてくる。思わず目を瞑って手を伸ばすも、支えることはやはり無理だった。大きな残響とともに響くのは、辻の叫びである。
「しまったぁ・・・っ!やらかした!!」
生身の体ではないので、怪我はなかったが、今はそれどころではない。一刻も早く、もとに戻さなければ、と慌てふためいた。
「どうしよう・・っ・・。外も暗くなるし、光もさっきより弱くなっている」
持っていたランプは、本棚が倒れる前に近くの机に乗せていたので無事だったが、どうやら長くはもたなさそうである。
「明日の朝にまた来て、方法を考えることもできるけど・・・・。そうだ!楓が来た時にここを紹介して一緒に手掛かりを探す手もあるな」
しかし、う~っ、と辻は唸った。
「だけど、俺は楓に『任せろ』って胸張って言ったしな・・・・」
どうしたものか、こんなに焦っている神を見ることは珍しい。
「あ~。今日は一旦戻ろう、そして明日にでも自分でどうにかしよう。
よし、それでいいや」
そう決めるや否や踵を返して入ってきた扉を目指す。
その頃、外では少しずつ、異変が起きていた。




