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第十二話  道しるべ

  空に、少し雲が増えた。

午後の暖かい風は眠気を誘ってやってくる。

楓と別れてからしばらくの間、『記憶』について辻は考えていたが

何の手ごたえもなかった。他に方法は無いかと、桜の木から降りて近くをうろうろする。すると、普段封じられているはずの『倉庫』の入口が開いていた。

倉庫は、昔牢獄として使われていた狭い建物を改修したものらしい。

「珍しいな・・・」

入口付近まで近づくと、不穏な空気が中から流れてきているのを感じ取る。

「いつも閉鎖されてるのにおかしい・・・。役人が戸締りを忘れたか?」

不安と好奇心に戸惑いながらも足を踏み入れた。

「外は暖かいのに、中はかなり寒いし・・」

光が差さないこの部屋は、埃っぽく、湿っているようだ。明りをつけるために電気スイッチを押した。

「なんだ、全部儀式の道具じゃないか。衣装も、飾りも・・」

広い空間に大棚が整列され、「扇」や「鈴」などと言ったように巫女などが使う道具を箱に詰めて区別していた。

「なんか緊張して損したな」

そう安心したように胸をなでおろすと、さっきまで考えてた『記憶』に関する

手掛かりを探し始める。


箱を抜き出し中身を調べようとしたが、箱には触れられなかった。

「・・・。自分の体や纏っている衣装は触れることができるけど、

 この世界の物には触れられないんだったな。最近こんな機会なかったから

 すっかり忘れてた・・・。ん?電気スイッチはつけられたぞ・・」


 不思議に思ったが、たいして気にもせず、自分が見える範囲で探し続ける。

 箱や棚、はみ出た道具しか見えず、外に出されているのは大きな土台や提灯、

 使われなくなった行燈ぐらいであった。

「特になさそうだ」とあきらめ、入ってきた道を戻る。

 奥に進みすぎてしまったので、扉はまだ見えないが開いたままだったらしく

 外からカラスの鳴き声が聞こえてきた。


 探し物をしているうちに日が暮れてしまったようだ。


 倉庫を出ようと早足で進むが、なかなかつかない。

「道を間違えたかな」

 再び戻って反対の方向に曲がり、辻は不意に歩みをとめる。

「なんだこの扉・・・・、入ってきたのと違う」


 目の前には、まるで『これ以上は進むな、危険』といわんばかりの

 威圧感を放つ、分厚い黒ずんだ鉄の扉があった。

 


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