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第9話 荷物持ちの手には、古い星がありました

文字を読んでくれたのは、探査魔術師のトーリだった。

細い体へ大きな紙筒を背負い、会うなり俺の板へ顔を寄せた。


「これは、通路の形を写したの?」

「そう。あと、棚の文字」

「いいね。飾りだけを写す人が多いけど、場所もわかる」


彼は二十五歳。古い迷宮へ入るため、魔力の跡を読む術を覚えたという。

長く石へ触れる必要があり、動く敵の記憶を読むような力ではない。


広間へ入ると、トーリは歓声を上げかけ、口を閉じた。


「ここ、誰かの部屋だね」


カランへ許可を求めてから、棚の端へ白い符を貼った。

文字の形を写し、何度も別の頁を確かめる。


俺たちは、その間に食事を取った。

急げば、正しい文字になるわけではない。

セナは手紙を読み返さず、丁寧に包んで鞄へ入れていた。


一時間ほどで、トーリが声をかけた。


「これ、場所と人の名前だ。腕輪があった台には、ディーン。最後の確認場所は、第七層の北回廊」


セナが、静かに顔を上げた。

第七層は、白銀級でも軽く行ける場所ではない。


「危険な区域への道もある。すぐ向かうのはやめよう」


トーリが先に言い、彼女はうなずいた。


次に調べたのは、金属札だった。

一から八。帰還の印。つなぐ人。


トーリが俺の手を見た。


「掌、見せてくれる?」


八つの刻印を開くと、彼は息を吸った。

札へ刻まれた、小さな形と似ている。


「預かり手、って古語がある。物を安全な場所へ通す人のこと。今なら収納の適性者に近い」


俺は手を閉じ、また開いた。

ガレスには、物を出すだけの力だと言われた。

その形が、昔の誰かの帰り道を開くのに使われていた。


「俺の収納、別の力だったのか」

「今の収納が急に変わったわけじゃない。八枠、八十キロはそのまま。ここは別の施設で、君の力を鍵として使っているみたいだ」


トーリは、書いてあることと、まだ推測のことを分けて話した。


カランは、俺の掌へ蓋の角を寄せた。

二つの星が、淡く光る。


「おまえ、一人じゃ外へ出る道を作れなかったのか」


箱は、埃の積もった椅子を見た。

次に、俺を。


どれくらいの時間、ここで待っていたのだろう。

箱の傷は、剣や爪だけでできたものではなかった。

金具の内側へ、小さな字が幾重にも刻まれている。


トーリが、一つを読んだ。


「戻る人と、待つ人へ」


カランが、ゆっくり蓋を閉じた。


俺は卓へ、自分の新しい記録帳を置いた。

この部屋から返す物を書くために、街で買ったものだ。

一番上に、赤い紐の腕輪、と書いた。


二行目は、保留にした。

片方の靴の持ち主は、まだわからない。

それでも、名前を書く場所は残しておこうと思った。

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