第6話 受付へ、宝箱を連れてきました
冒険者ギルドの受付へ、箱を載せた。
カランは、四本の足を引っ込めた。
普通の宝箱に見える。ひどく普通だ。
受付の人が、俺の顔と箱を交互に見た。
「回収品ですか」
「助けてくれた相棒です。ミミックです」
奥で、椅子が倒れた。
槍を構える人がいても、責められない。
俺は箱の前へ立ち、勝手に蓋を開けないよう頼んだ。
カランも、牙を見せなかった。
支部長のイゼルさんが、二階から下りてきた。
薄い傷のある頬。かつて探索をしていた人だと聞いている。
「怪我の処置と、聴取を先にする。箱は、結界のある部屋へ。一緒にいてもらえるか」
俺はうなずいた。
見張りの目が届く範囲で、何が起きたかを話した。
ロープを切られたこと。ガレスの言葉。魔物からカランが助けたこと。
途中で、イゼルさんが机へ書類を置いた。
金獅子の帰還報告。
俺は自分の名前の後を読んだ。
――命令に反し、単独で通路へ進入。所在不明。
声が出なくなった。
死んだと思われていたことより、俺が勝手に消えたことにされていたのが、つらかった。
「隊員からも、別々に聞く」
イゼルさんが書類を裏返した。
「今すぐ、一人の話だけで決めはしない。ただ、戻った君の訴えを消すこともしない」
俺は、収納の共用品を全部出した。
野営袋、薬、水樽、食糧、備品。
使った水と薬を伝えると、記録されて、ギルドの倉庫へ運ばれた。
俺の持ち物と混ぜずに済んだ。
その間、カランは机の下で待っていた。
俺の脚へ、前足だけ載せている。
次に見せたのは、箱の星の印と、俺の掌。
迷宮の中にだけ開く道について、知っている範囲を話した。
イゼルさんは、目を細めた。
「古い帰還施設の記録がある。すぐには断定できないが、調査したい。同行に、君の希望はあるか」
「カランを、勝手に討伐しないでください」
声が、思ったより強く出た。
彼女は俺を見て、静かにうなずいた。
「確認するまでは、協力中の魔物として保護する。人への危険があれば、対応は相談する」
箱の足が、一度、俺の靴へ触れた。
ギルドを出た後、母さんへ連絡した。
故郷は馬車で二日だ。帰還と無事を、急便で知らせる。
嘘の報告を読むより先に、俺の言葉が届いてほしかった。
街の宿の女主人は、箱を見て、片手を腰へ当てた。
「床をかじる?」
「かじらないと思います」
「じゃあ、そう約束してもらって」
カランは蓋を一度、閉じた。
その夜、俺たちは同じ部屋で眠った。
ベッドに俺。毛布の上に箱。
朝になっても、俺の靴は食べられていなかった。




