第4話 宝箱の向こうには、星空がありました
迷宮の地下に、星があった。
ただし、本物の夜空ではない。
高い天井へ、青白い光が点々と浮かんでいる。
壁には棚が並び、小さな荷物が、いくつも置かれていた。
欠けた茶碗。
赤い紐の腕輪。
片方の手袋。
古い剣。その隣には、子供の玩具。
宝物の山だと思って入ってきた俺は、入口で止まった。
ここは、誰かが物をしまっている場所だった。
カランを下ろした。
箱は棚の間を進み、一つだけ空いた小さな台の前へ座った。
俺が拾った靴を出すと、前足が台をたたいた。
そこへ置いてほしいらしい。
靴を載せる。
台の表面へ、薄い文字が浮かんだ。
俺には読めない、古い文字だった。
カランは、ほっとしたように蓋を閉じた。
「ずっと、返す場所へ運んでいたのか」
箱が、俺の袖へ足を載せた。
その動きだけでは、返事の全部はわからない。
でも、ここへある品を、無造作に持ち出す気にはなれなかった。
奥に、平たい金属札が八枚あった。
番号のような刻みと、二重の星。
俺が一枚へ触れると、掌の一つの印が光った。
カランが壁へ近づく。
そこには、さっき入った扉のほか、印のない石が並んでいた。
箱が口へ札をくわえ、俺の手へ渡す。
「……外に、貼るもの?」
俺は入口へ戻った。
外の壁は平らだ。持っていた釘で、札を固定する。
触れると、石が光った。
さっきまであった通路が、扉の形に開く。
中では、カランが金具を光らせていた。
蓋の星と、壁の星がつながっている。
俺は一歩、中へ戻った。
また外を見る。
同じ通路へ出られる。
収納とは違う。
俺の物を八枠へ入れるのではなく、この部屋と外との間に、道ができている。
生き物である俺も、普通に歩いて出入りしていた。
「おまえも、力を通してるのか」
カランが蓋を開き、すぐ閉じた。
光が消え、扉も閉まる。
俺が札へ手を当てても、今度は開かなかった。
箱がもう一度支えると、道が戻った。
二人ともいなくては、できないらしい。
棚の下に、埃の積もった椅子が一つあった。
その前には、誰も座っていない卓。
俺は灯り石を置いた。
収納から水と、自分用の毛布を出す。
今夜は、ここを借りようと思った。
カランは椅子の横へ寄り、俺が座るのを待った。
宝箱に入っていたのは、金貨ではなかった。
帰る前に、一度、休める場所だった。




