↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
3/24

第3話 拾った相棒は、収納できません

朝かどうかは、わからなかった。

灯り石が、少し暗くなった頃に目を覚ました。


カランは、俺の上着の裾を蓋で挟んでいた。

食べるつもりかと思ったが、俺が起きると放した。

眠っている間、離れないようにしていたのかもしれない。


「おまえ、帰る場所はあるのか」


箱は、奥の通路へ向き直った。

それから俺のほうへ戻る。

行きたい場所がある。でも、俺も連れていきたい。

そういう動きに見えた。


「俺は、地上へ帰りたい」


カランの蓋が、少し閉まった。


「一緒に行けるなら、連れていく。まず、持てるか試していいか」


箱は動かなかった。

俺は両腕で抱え、持ち上げた。

膝ほどの高さの木箱は、ずっしり重かった。二十キロ近くはありそうだ。


歩けなくはないが、戦うことはできない。


収納へ入れてみようと、片手を金具へ当てた。

掌の八つの刻印が、光った。


そして、何も起きなかった。


「そうか。おまえ、生き物だ」


カランが俺を見て、蓋を大きく開いた。

当然だ、と言っている気がした。


「悪い。宝箱の形だと、物だと思ってしまった」


一度置くと、箱は俺の靴を軽く蹴った。

痛くない程度に。

間違ったことへの返事として、十分だった。


収納の残りを確かめた。

六枠、四十六キロ。

野営袋、薬、水、食糧、備品。そして、俺の私物。

空きは二枠だ。鍵や蜘蛛の爪を雑に入れれば、すぐ埋まる。

俺は一つの布袋へまとめて、七枠目に預けた。


残る一枠は、予備にする。

深い場所で、使える手を全部塞ぐのは、よくない。

前世でも、配達の荷を積むとき、降ろす順番を考えていた。

荷物が多いだけでは、仕事にならない。


備品から太い革帯を出した。

カランの下へ通し、肩から背負う形へ結ぶ。

蓋が開けられるよう、上は塞がない。


箱は、背中で一度、小さく跳ねた。


「暴れるな。俺の腰が先に終わる」


カランは動きを止めた。

かわりに、俺の右肩へ前足を載せる。


右の道。


ゆっくり歩いた。

途中で、床に落ちた古い靴を見つけた。

片方しかない。紐が切れて、砂が入っている。


俺が通り過ぎようとすると、カランが帯を引いた。

靴へ、短い足を伸ばす。


「それも拾うのか」


こつん、と背中へ足が当たった。

俺は空いた枠を使わず、外の袋へ靴を入れた。

汚れている物を、薬や食糧と一緒にしたくなかったからだ。


その先の壁に、箱の蓋と同じ印があった。

二つ重なった、銀の星。


カランが、背中で軽く体を揺らした。

俺は壁へ近づき、印へ触れた。


掌の刻印が、いつもとは違う形へ並んだ。

石の向こうから、温かな風が吹いた。


開いた扉の先に、夜空が見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。