第21話 八枚の扉で、地上まで
六番から出た魔術師たちは、切れた鎖の反対側へ着いていた。
白い柱の陰で、二つ残る印を押さえている。
トーリが七番から出た。
人一人分の幅を、一度だけ開く。
彼が通ったら、すぐ閉じる。
カランの力を、次の動きへ残すためだった。
「線の端を、そこへ。次は、俺が刻む」
トーリが、石の上へ膝をついた。
銀線を切れた鎖の端へ合わせ、符を一枚ずつ重ねる。
向こう側では、救助班の魔術師が同じ作業をしていた。
底喰いの頭が、こちらへ曲がった。
首の節が動くたび、地面が傾く。
セナが槍を石の間へ差し、体を低くした。
剣士二人が前へ出る。
大きな敵を一度に倒すためではなく、トーリの指が止まらない時間を作る。
俺は、必要な道具を出した。
釘。留め輪。予備の符。
重い箱の奥へ隠れてしまわないよう、使う順に分けておいた物だ。
底喰いが、石を吸い寄せた。
符の端が浮いた。
俺は濡らした布を載せ、楔の重さで押さえた。
「そのまま、押さえて!」
トーリの声へうなずいた。
振動が、指まで来ている。
セナが後ろへ退いた。
槍の穂先は折れていないが、石の節へ刃が通らない。
敵の口が、銀線の光を追って開いた。
カランが跳んだ。
今は、扉を開かない。
俺は掌の力を引き、箱の金具へ集中する光を見た。
蓋が、巨大な顎の端へかみついた。
膝ほどの箱が、石の蛇の口を、わずかな幅だけ止める。
銀の星が、ひどく明るくなった。
「カラン!」
走ろうとした俺の袖を、トーリがつかんだ。
「あと一つ! 留め輪を!」
俺は輪を出した。
腕のすぐ前へ。トーリの手が、そのまま取れる場所へ。
彼が銀線を通す。
反対側の魔術師が、最後の符を押した。
三つの印が、同じ色へ変わった。
底喰いの体が、封域の奥へ引かれ始めた。
カランの足が、石を削る。
俺は縄を投げた。セナが帯へ掛ける。
「放していい! 戻ってこい!」
箱の蓋が開いた。
俺とセナが引き、カランが足場へ落ちた。
金具の端が欠け、蓋が少し歪んでいる。
それでも、四本の足が、もう一度床へついた。
底喰いの頭が、最後にこちらへ向いた。
セナが俺の肩を引く。
俺たちは八番へ戻り、残る力で扉を開いた。
広間へ、一人ずつ。
救助班の剣士二人、トーリ、セナ、俺。最後に、カラン。
俺が六番を開き、反対側の魔術師たちも戻った。
壁の向こうで、封域が閉じる音がした。
広間の天井が、もう動かない。
星が一つ、また一つ、光を戻した。
俺は全員の名前を呼んだ。
返事を聞いてから、二番を開く。
地上へ続く階段は、そこにあった。
誰も、最後の棚へ置いていかなかった。
外へ出ると、カランは俺の腕の中で、蓋を一度だけ鳴らした。
俺は箱を抱え直した。
本物の星が見えるまで、もう少しだった。




