第19話 助けても、もう仲間には戻りません
七番を置く壁へ、俺たちはまだ届かなかった。
南の岩室から出ると、通路の外側が割れていた。
石の節が、下を滑っていく。
俺は縄を肩へかけ、足の置ける場所を探した。
そのとき、人の声がした。
「ノア! こっちだ!」
ガレスだった。
バントと一緒に、折れた柱の上へ取り残されている。
救助班が見つけた隊員とは、別の場所だ。
ガレスの脚へ、重い石が載っていた。
俺は、その顔を見た。
たった少しの間、動きたくないと思った。
彼の足が落ちても、俺が押したことにはならない。
その考えが浮かんだことを、自分でわかった。
カランが、俺の前へ立った。
箱も、すぐには進まなかった。
セナが、俺の横へ来た。
「ノア。私たちで引く。縄は出せる?」
彼女は、俺へ全部任せなかった。
俺は息を吸い、収納を開いた。
「出す。カラン、道をお願いできるか」
箱が俺の手を見て、蓋を閉じた。
星が光った。
助けるための返事だった。
セナが縄を投げた。
バントが自分の盾を石の隙間へ入れ、脚を抜く余地を作る。
ガレスは痛みに叫んだが、引く合図には従った。
俺は重い装備を、先に受け取った。
柱の端へ触れられるところまで近づき、剣の残りと鞄を収納へ入れる。
生きている人は入れられない。
体を軽くする物だけ、俺が預かった。
二人が足場へ戻ったとき、カランが通路の崩れる石へ飛びついた。
体を低くして、石を押し留める。
短い隙間で、人が岩室へ逃げた。
ガレスが俺の上着をつかんだ。
「おまえが戻れば、金獅子は――」
俺は、その手を外した。
「戻らない。今は、黙って案内に従ってくれ」
彼は何か言いかけた。
セナが後ろから、槍の柄を床へ置いた。
「次に足を置く場所を見て。話は地上で」
八番の扉へ入る前に、バントが床を指した。
ガレスの鞄から、古い鎖の留め具が落ちている。
「隊長が、これを切った。奥の魔石を取るために」
彼は、俺の目を見て言った。
「七番の札も、隊長が剥がした。ノアの道に頼るのは癪だって」
ガレスは否定しなかった。
壁の向こうで、また石が砕ける音がした。
今、追及を続ける時間はなかった。
俺は留め具を布へ包んで預かり、二人を中へ通した。
バントが、最後に頭を下げた。
「助かった」
俺は短くうなずいた。
それと、もう一度同じ隊へ戻ることは、別だった。




