第18話 箱の中だって、絶対に安全ではありません
避難者を二番へ通した。
救助班の一人が前へ出て、階段まで誘導する。
地上には、イゼルさんが受け入れの人員を置いていた。
俺は一人ずつ数えた。
五人、六人。
転びかけた人をセナが支え、足を戸口へ通す。
カランの星が、薄くなる。
俺は最後の人へ、出口を指した。
その後、扉を閉じた。
広間の壁が、また少し内側へ動いた。
棚の下から、木の軋む音がする。
底喰いが迷宮を壊している。
奥の空間を守る境界がなければ、この部屋もいずれ押しつぶされる。
古い記録にあったことが、本当に起きていた。
トーリは封域の図を広げた。
「三本の鎖が、境界の印をつないでいた。一つが切られている。残る二つが保っている間なら、つなぎ直せるかもしれない」
救助班の魔術師が、道具袋から銀線の束を出した。
古い魔法の境界を調べるための品だ。
鎖そのものの重さではなく、通っていた魔力を戻す必要がある。
「切れた端へ、この線を通す。印を読んで組み直すのは、私たちでやる」
魔術師が説明した。
トーリはうなずき、俺を見た。
「その間、人が動ける道を維持してほしい」
セナが槍を持ち直した。
「足止めは、私と剣士たち。ノア、今の札の位置は?」
俺は、地図へ指を置いた。
一番、落ちた日の第三層の通路。
二番、一層の出口。
三番、第四層の風階段。
四番、第五層の青湖。
五番、第六層の石の根。
六番、第七層の白い分岐。
七番、回収して手元。
八番、南の岩室。
八番からなら、切れた鎖の裏側へ、柱沿いに近づける。
七番を、新しい場所へ置く必要があった。
逃げ道を増やすためではない。
材料を運ぶ人と、戦う人が、別々の方向へ出られるようにするためだ。
カランが俺の袖を引いた。
箱の中へ、古い鍵が並んでいる。
その表面の光は、ほとんど残っていなかった。
「今の力で、一度に大きな扉は無理だね」
トーリが言った。
俺たちは、扉を小さく開く練習を思い出した。
人が通れない幅でも、銀線や道具なら渡せる。
道の全部を開く必要はない。
俺は顔を上げた。
「まず、六番へ二人を出す。俺たちは八番から七番を置き直す。物は小さい口で渡す」
セナは地図を読み、うなずいた。
「いける。でも、急ぎすぎないで。置き場所は、ちゃんと確かめて」
俺は七番の札を握った。
帰れる人から、帰した。
残る仕事のために、俺たちが道を使う。
カランの前足が、俺の掌へ重なった。




