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第14話 届かなかった手紙の、最後の道

第六層には、木の根に似た石が広がっていた。

五番の札を、崩れない壁へ置く。

第七層の白い柱の分岐には、六番。


どちらも、一度、帰還庫から出直して確かめた。

開くときだけでなく、戻るときにも使えること。

セナはその確認を、急がなかった。


北回廊へ入ると、空気が冷たくなった。

古い落石の跡が、通路の半分を塞いでいる。


トーリが壁へ符を当てた。

棚の記録と同じ印が、その下に残っている。

昔、帰還の通路があった場所らしい。

今は石が割れ、印の真ん中が、なくなっていた。


カランが、ゆっくり蓋を閉じた。

ここへ帰る人が、通れなくなったのだ。


回廊の手前に、七番の札を置いた。

先へ進む前に、開けて戻る。

俺たちは、そこだけは手を抜かなかった。


落石の脇に、人の骨があった。

古い金属の留め具と、丈夫な革靴。

セナは槍を置き、少し離れたところへ膝をついた。


「……父の上着と、同じ留め具」


骨のそばには、探索者の認識札があった。

泥を落とすと、ディーンという名と、登録番号が読めた。

ギルドから借りた記録の番号とも、一致していた。


俺は何も言わず、布を出した。


奥へ逃げた人の足跡が、壁の古い印へ残っていた。

トーリはその刻文を読み、回収した小さな報告板と照らした。

隊員が残した、緊急の記録だった。


ディーンが、落ちる石から仲間を先へ押した。

戻るための印は壊れた。

彼だけが、帰れなかった。


セナは報告板を受け取り、長く見た。


「生きてるって、どこかで思ってた」


俺は、少し離れて座った。

まだ、すぐ横へ寄るべきか、わからなかった。


「帰る場所がなくなっただけで、別の街にいるのかもって」


彼女は骨を見て、目を閉じた。


「違ったんだね」


俺はうなずいた。

希望に合う別の話を、ここで作ることはできなかった。


セナの手が、空中で止まった。

俺は自分の手を出した。

彼女は少しだけ、その指を握った。


帰る人へ約束された手紙は、帰らなかった人の手紙になった。

でも、宛先はなくなっていない。

待っていた娘が、ここまで来ていた。


セナが息を整えてから、遺骨と認識札を布へ包んだ。

俺が運んでいいかと尋ねると、彼女は首を振った。


「父は、私が持つ。ほかの荷を、お願い」


俺は彼女の鞄を受け取り、収納へ入れた。


帰り際、カランが暗い回廊へ顔を向けた。

壁の先で、何か大きなものが動く音がした。


俺たちは奥へ進まず、七番の札へ戻った。

今日は、帰って渡すものがあった。

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