↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
13/24

第13話 帰還庫は、宝物より古いものを守っていました

広間の名前が、わかった。


《帰還庫》。


トーリが、入口の柱へ残る字を読み上げた。

古い迷宮では、探索者が物を預け、離れた場所から戻るために使っていたという。


「忘れ物を集めるだけじゃない。疲れた人が休み、戻る準備をする場所だったんだ」


俺は、初日に座った椅子を見た。

埃を拭いた後、セナが座面の破れへ布を当てていた。

卓には、今は三人分の杯がある。


ずっと使われていなかった部屋に、人のいる形が戻っていた。


棚へ保存された品には、最後に預けた人や確認された場所の記録があった。

全部にあるわけではなく、傷んで読めないものも多い。

セナの父の腕輪が読めたのは、運のよいことだった。


持ち主が戻らなかった品は、待つ人へ渡してよい。

その古い決まりを読み、セナは腕輪を改めて鞄へしまった。


俺が、金貨だけを取り出す人だったら、カランはどうしたのだろう。

棚の剣へ手を伸ばさずにいた理由を、この箱は覚えているのかもしれない。


奥の壁には、別の記録があった。


下層の空間を荒らす魔物。

帰還路を壊すもの。

《底喰い》。


トーリの声が、少し低くなった。


「この部屋自体も、絶対に安全ではない。迷宮の空間とつながっている。大きく壊れると、内側も狭くなると書いてある」


カランが、星のある蓋を俺へ向けた。

金具の端には、深い傷があった。

昔、何かからこの部屋を守った跡だろうか。


イゼルさんへ報告した。

第七層北回廊の調査は許可されたが、その奥の封域には入らない。

底喰いの記録を、ほかの探索者にも知らせる。

俺たちは条件を確認し、地図の奥へ赤い線を引いた。


カランの扱いも、変わった。

調査協力魔物として、ギルドの登録札が出た。

通行できる建物、休める場所。街の人が箱を勝手に開けないよう、注意書きも作る。


「使役者」の欄へ名前を書こうとした俺を、イゼルさんが止めた。


「今の関係なら、同行者の欄でいい」


俺は、そちらへノア・リードと書いた。


カランの札は、帯の横へ付けた。

箱はしばらく、それを見つめていた。

それから、俺の掌へ顔のない蓋を寄せる。


「これで、堂々と宿へ泊まれる」


こつん、と返事があった。


俺は帰還庫の卓へ、次の探索の地図を広げた。

帰る場所があるから、もう少し先へ行ってみたい。

初めて、そう思えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。