第11話 帰り道は、八枚までです
深い層へ行く許可を取る前に、俺たちは練習をした。
扉を開く。荷物を運ぶ。傷を負った人を通す。
カランが外へいても、内側へいても、開けられること。
一度にいくつも開くと、光が急に薄くなること。
トーリは、記録を取るたびに頬を緩めた。
「すごい。ちゃんと、苦手なこともある」
「それでうれしそうなの、少し怖い」
「苦手がわかれば、死なずに使えるから」
正しい理由だった。
三番の札を、第四層の風階段へ置いた。
四番は第五層、青い湖の岸。
どちらも壁を確かめ、釘を二本使った。
途中で岩蝙蝠の群れが来た。
カランはセナの槍を避けて跳び、一匹へかみついた。
俺は三番の札へ触れ、扉を開こうとした。
光が、途中で切れた。
箱の金具へ力が集まりすぎている。
「カラン、今は扉! セナ、頼む!」
セナが槍を回した。
箱が後ろへ戻り、歯を隠す。
銀の星が揃うと、道が開いた。
戦いと、扉を全力で支えることは、一緒にはできない。
強い相棒がいるからといって、残りの仲間が不要になるわけではなかった。
俺たちは広間へ入り、壁を閉じた。
外の蝙蝠は通れない。
カランが認めた相手だけ、通れる道らしい。
その仕組みも、いつか詳しく調べる必要がある。
今は、箱の星が暗くなっていた。
長く道を開けた日にも、同じことが起きていた。
俺は次の扉を急がず、椅子へ座った。
カランは毛布の上へ横になる。
周囲の淡い光が、ゆっくり金具へ集まった。
「休むと、戻るんだ」
セナが言った。
トーリは、古い鍵の束を見た。
魔力を残したものを渡せば、少しだけ早く光る。
でも、鍵を何本当てても、限界より多くたまることはなかった。
「強い貯魔晶なら、一時的に補えるかもしれない。でも、無理に流すと傷むね。量は調べておく」
八枚の札を使う道でも、休む時間はいる。
俺は、それを地図の余白へ書いた。
その後、セナが帰還の合図を出した。
予定の時刻より早かった。
「まだ、進めると思うけど」
俺が言うと、彼女は頭を振った。
「今日は、調べたら帰る日。次に使える余力を、残したい」
その判断で、俺たちは夕食の前に地上へ戻った。
宿の卓へ、次の計画を広げた。
第五層までの道と、その先の空白。
セナは父の回廊の記号へ指を置き、今度はここまで、と言った。
俺は、残った四枚の札を並べた。
全部を勢いで使えば、帰る場所を残せなくなる。
地図の空白を、三人で少しずつ埋めていった。




