変らない日常と変わりゆく認識 1
窓から差し込む朝日で、静かに目を覚ます。
「……。」
眩しさに眉を潜め、頭を掻く。
身体が妙に気怠いし、気分も優れない。ゆっくりと起き上がりカーテンを閉めると、少し具合が良くなった。
昨晩はあまり眠れなかったが、眠気の類は感じない。化物になった影響だろうか。
(考えていても仕方がない、学校に行く準備をしよう。)
自分に言い聞かせて、部屋を出る。
化物になったからと言って、特別な変化があった訳でもない。顔を洗い、制服に着替える。朝食は、いつも食べていない。不健康かも知れないが、朝は食欲が無いのだ。今日の様な日差しの強い朝は特に。
顔を洗っても、まだ頭がぼんやりとしている。意識をはっきりさせる為に、珈琲を淹れることにした。
味に違和感は無い。化物になったからと言って、味覚の方に変化はない様だ。
もしくは、味覚と言うある種の認識さえも、一晩で書き換えられたのかも知れない。
歯を磨いている時に、犬歯が伸びている事に気が付いた。昨日交わした、妓詠との契約の証だろうか。まぁ伸びたと言っても、ほんの少し。隠さなければいけない程でも無い。
髪の毛を整えたら、制服に着替えて家を出る。
時刻は午前六時四十分頃。通学路はまだ静けさが漂っている。後十分もすれば騒がしくなるので、今のうちに登校しておく。
学校に付く時間も自然と早くなってしまうが、それはもう仕方のない事だと割り切っている。
「あー……。」
情けない声が、口から洩れる。
朝の日差しが、文字通り肌に刺さる。ピリピリとした日焼けの様な痛みと倦怠感。
吸血鬼と言うのは、想像以上に不便な生き物かも知れない。人気のない通学路を進みながら、僕は昨晩話した事を思い出していた。




