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隙だらけ

 それでも――。


 雷門の拳が顔面に直撃する直前、


「はぁ!?」


 わたくしは手首を掴んで宙に投げ飛ばした。


 攻撃の勢いも加わって勢いよく転がっていく。


「い、ってぇ!」


 雷門が立ち上がる。


 全然、ダメージを受けてない。


 攻撃が甘かったか。


「あなたとまたやれるなんて嬉しいです」


「ち、例のもう一人ってやつか!」


 お姉さまとの約束通りここからはわたくしが相手をする。


「は! 性格が変わったからって――」


 言い終わる前に殴りかかる。


「おわ!?」


慌てて身をかがめてさけた。


ち、外したか。


「お前、話してる最中に攻撃すんな! えっと、何の話だっけ?」


「透明人間になったら何するって話してました」


「えー、透明人間になったらって……」


 雷門がにんまりといやらしい顔になる。


「人々に笑顔を届けたい」


「いや、嘘ですよね」


「ほんとほんと。子供たちに花とか届けたい。無垢な笑顔が見た――」


「隙あり!」


 雷門の腹部に拳がめり込んだ。


「お、おま!」


 雷門が蹲った。


「話を戻しますが、毎日の日課ってあります?」


「このタイミングで!?」


 むくりと立ち上がった。


 効いてないのか。


 雷門が腕を組む。


「バストアップ体操かな」


「男が!?」


「馬鹿野郎! 大胸筋を鍛えるのに――」


「てい!」


 言い終わる前にわたくしは踵を雷門の顔面に叩き込んだ。

「ぐぎゃ!」


 無様に地面を転がった。


 全く何度も同じ手に引っかかる。


「お、お前! 卑怯だぞ!」


 雷門はすぐに立ち上がった。


 タフなやつだ。


 馬鹿力と耐久力。


 その二点だけは大したものだ。


 だけど、最大の弱点がある。


「好きな人っていますか?」


「三度め!? しかも、修学旅行の女子みたいな話の入り方!」


「わたくしはいます。その方はわたくしよりも強くて優しいんです」


「わかるぜ」


 あっさり話にのった。


「俺も好きなやつがいるんだけど全然振り向いてくれないんだよ」


「とりあえずバナナとかあげてみたらどうですか?」


「ゴリラじぇねえし!」


「人間はちょっとハードルが高いのでは?」


「でも、せめて人間とラブしたい!」


「そんなあなたに必勝法があります!」


「マジで!?」


「この必勝法のおかげでアダムとイブが結ばれました!」


「すげぇ! 人類発祥まじやべぇ!」


「それじゃあ、耳を貸してください」


「お、おう。へ、禁断の果実ってやつか」


 雷門が身をかがめた。


 完全に無防備な状態。


 本当に馬鹿だ。


「隙あり!」


 雷門の顎に掌底打ちを放った。


「うご!」


 雷門が仰け反った。


 鍛えようがない急所に全力の一撃だ。


 これならもう立てないだろう。


 まともに戦えば負けないにしてもかなり手こずったはずなのに。


「終わりました。お姉さま」


 お姉さまに向かって優雅に一礼する。


 しかし、お姉さまは真顔のままだ。


「まだよ」


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