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雷門再び

 わたくしの提案にお姉さまは少しだけ黙考した。


 無理な提案ではない。


 どういう意味か測りかねているのだろう。


「いいわ。でも、それは正直、予想外だったわ」


「ありがとうございます! お姉さま!」


「こちらこそありがとう。つばめ」


 お姉さまがわたくしの頭に手を置いた。


「お、お姉さま!?」


 こんなに優しいお姉さまは初めて見た。


「あなたのおかげで退屈しないですんだわ」


「そ、そんなわたくしこそお姉さまに会えて幸運でした」


「私って正直、何をやっても上手くいくの。勉強だって格闘技だって何もしてないのに他の人よりも数段上」


 天才というやつか。


 わたくしや翼もどちらかといえば天才肌だが、お姉さまは群を抜いている。


 さすがお姉さまだ。


「正直、退屈だった。何もかも予想通り。だから、私にないものを探すために理解できないものに首をつっこんでた」


 初めてお姉さまの本当の気持ちに触れた気がした。


 お姉さまがそんな風に思っていたなんて。


 わたくしは知らなかった。


「……姉妹っていうのもそう。最初はちょっとした気まぐれだったのにね」


 お姉さまが優しい目でわたくしを見た。


「予想以上に面白いものが見れそうね」


「必ずご期待に沿えた結果になります」


「期待してるわ」


「はい! では、早速、翼とコンタクトをとってみます」


 わたくしは携帯のLIMEにメモを残す。


 これで翼が意識を取り戻したとき、気が付くはずだ。



 約束の時間がきた。


 すでに日は暮れ始めており、どこか不安を感じるほど薄暗い。


 やがて、テレビクルーのようなカメラと舞台道具で使うようなスポットライトを持ったサリユリが現れた。


 その後ろからは自信満々な雷門。


「んだよ。来たのか」


「当たり前だろ」


 とは言いものの不安しかない。


 目が覚めたらお姉さまがいて、大丈夫だと太鼓判を押してくれた。


 大丈夫って言われてもなぁ。


「撮影準備終わったよ。照明も本格的なものだからばっちり。これ一台でかなり明るくなるから絶対に壊さないでね」


「あら、あなたにしてはきびきび動くのね」


「ランカー同士の戦いなんて滅多にみられるもんじゃないからね。計算ではこの売り上げで数年は遊んで暮らせるよ」


「……もうちょっと女の子らしいことで動けないの?」


「それたんぽぽにも言えるじゃん」


「あなたとは違って最近は百合にも手を出してるわ」


「私には手を出さないでね」


「あなた臭いから絶対手を出さないわ」


「臭くないから! ……え、臭く、ないよね?」


 コントみたいなやり取りだ。


「あの二人は放っておいてやろうぜぇ」


 雷門が拳を突き出す。


 ち、どうなってもしらねぇからな!


「いくぜ!」


 雷門が拳を振り上げて襲い掛かってきた。


「おらぁ!」


 オレに向かってハンマーのように拳を叩きつけた。


「ぐ!」


 かろうじて受け止める。


 先手を打たれた。


「おらおら! どうした!」


 矢継早に拳がたたきつけられる。


 ち、馬鹿力め。


 攻撃を受けるたびに手が痺れてきた。


 受けが間に合わない。


 こんな相手、初めてだ!


 攻撃を受けていた両手が弾き飛ばされる。


「おらぁ!」


 渾身の一撃が放たれた。


「ち!」


 間に合わない。


 一瞬、目を閉じた。


 本当なら絶対嫌だけど――。


 オレもごめんだ。


 翼の声が聞こえた。


 普段意識がないはずの翼が嫌がるのだ。よほど嫌だったのだろう。


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